第3話

 恐る恐る瞼を開くと目に入ったのは草臥れたスニーカー。踵はだいぶすり減っている。


「占っちゃったから来てみたけどー。君、大丈夫?」


横たわる瑛晴の上から軽快な声が降り注ぐ。

この人は誰なのだろうか。いやそれよりもまずはあの見えない何かがどうなったのか。聞きたいことはあるのに声が出ない。


「おーい返事なしかい。ま、いっか」


スニーカーの男は踵を返すとなにかぶつぶつ唱え始めた。

途端にスニーカーの奥になにか禍々しいものが浮かび上がる。


「なん…だ、あれ」


「んー?なーんだ喋れるんじゃーん!」


男はケラケラ笑いながら瑛晴の身体を叩く。痛い。


「巻き込まれただけっぽいし、説明してあげたいのは山々なんだけどー……」


とりあえずここを離れないとね、と言うやいなや瑛晴の身体が地面から離れる。フワフワした

毛布に寝転がっている感触。


「は!?」


「じゃあ白。その子のことよろしくー」


男はひらひらと手を振ると瑛晴の眉間に指で軽く触れる。


 次の瞬間、瑛晴は意識が遠のいた。

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陰陽末末 中条芎 @nakajo_0408

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