実体験

@Nantouka

マジで死にかけた話、※実録

今迄一番ヤバかった経験は、そうだな、車に轢かれかけた事だな

それは5月の梅雨入り始めの頃で、俺は小雨の降る中レインコートを羽織って、ランニングしていた。

その時の俺は実家暮らしで会社員をしていて、海辺の田舎だったから、堤防を走っていた

大体10キロの道のりを一時間ぐらいで走っていた。すると目の前から軽トラがこっちに向かって来た

お互いに堤防の上、狭いが人一人と一台の車が交差するぐらいには余裕があった。目測幅5メートルぐらいはあった。俺は走りながら、右隅に寄る。反対側にはガードレースがあって、その下は舗装された川があった。何処にでもある人工物の川だ。それを放流する水門もあった。

俺は左側のガードレースに寄る事はせず、反対側の、遮る物が何も無い堤防の右側の縁に寄った。

そして車が通り過ぎるスペースを開けた。通り抜けるのには充分な広さがあった。

雨が滴り、俺は被った合羽のフードを片手で上げて走る。すると軽トラは俺が避けたのにも関わらず俺に向かって前進してくる。俺は「はあ?」と思った。

わざわざ道を開けているのに何で崖側に進むのか

何かの意図があると考えた。そして彼の運転手は川の様子を見たいのかなと思った。

連日の雨で川は土色に濁っていた。海辺の漁師なら、気に懸ける事だと,、俺は納得した

そして、俺は速度を落とす、しかし軽トラは速度を落とさずこちらに近づいてくる

堤防の断崖を進む俺に向かって、一切速度を落とさず直進してきた

俺は運転手の意図が分からず、「えっ」と思った。そしてこのままじゃ 轢かれる

軽トラが俺と10mぐらいまで正面を俺に向けた時、俺は堤防の断崖の下を見た。

そこには禍々しい枝葉を網目の様に伸ばした中程度の樹々があった。

俺は正面を見る。軽トラの真正面が映る。その進行は明らかに俺を轢く道筋だった

その時の俺は速度の一気に緩め歩いているぐらいになっていた、脳内は白紙になっていた。

そして俺は「轢かれる」と思った瞬間、再び崖下を見ると、その身を崖下に投じた。幸いにも枝葉が下にある。クッション代わりにと思って・・・、なるだろうと思って。

俺の身体はコンクリート製の堤防で擦り切れる。そして一瞬の衝撃の後、

俺は視界は曲がりくねった露滴る枝葉に覆われた。痛みは不思議と無かった。が腕や、脚からは

赤い血が流れていた。でもそれよりも助かったという想いの方が強かった。

「あんちゃん!!大丈夫か!!」

俺は見上げる、そこにはさっきの軽トラの運転手が縁際からこっちを覗いていた

俺は声を聞いて、

「大丈夫ですよ」と言うと、即座にこんがらがった枝葉から出て、そして。この絡みつく枝葉から抜けようか考えて、そして抜け出すと四つん這いの姿で堤防を登った

そして俺は彼の軽トラの運転手の正面に立った

軽トラの運転手は何度も頭を下げ、そしてレシートに自分の住所を書いて俺に手渡した。

「どんな賠償もするから、ごめんな、兄ちゃん」

そう言って運転手は再び車に戻ると俺の元から去っていった。その運転は背後ながらも丁寧だった

慎重な運転をしていると思えた。俺は手渡されたレシートを雨で濡れたポケットに押し込んだ

俺はそのまま、ランニングを続けた。そして家に還ると母親が俺の姿を見て、驚いた表情をした

「何があったの?」

俺は淡々と答える

「車に引かれそうになって、雑木林にツッコんだ」

そう言う俺に対し、母親は何も言わず、俺の姿を見る

「お尻の方、破れているよ」

その時、俺は気づいた、合羽が合羽の性能をしていない事に

「これじゃ、縫い合わせるのは出来ないから、新しい物を買った方がいい」

俺は頷く

「五千円ぐらい払えば、同じものが買える」

すると父親が現れた

父親は母親から事の一部始終を聞くと俺に寄って来た

「合羽をこんなにして、損害賠償出来るな、・・・誰がしたんだ」

俺はポケットにしまった、レシートを取り出す。しかしそれはボールペンの為、雨か汗で滲んでおり、誰がしたのか、分からない、しわくちゃな紙くずになっていた。父親がいう

「勿体ない事したな・・・」

俺は答える

「めんどくさい事だよ・・・・」

父親が言う

「この合羽ぐらいは払ってもいいんじゃないか」

俺はそんな事、もうどうでもよくなったので言う

「たかが五千円ぐらい、払えるよ」

そんな俺を手当して父親が言う

「勿体ない事したな」

俺は何が、勿体ない事したのか分からなかった。ただ事実を述べる

「まぁ、5千円ぐらい、払えるし」

「・・・それが勿体ない、相手に請求しろ」

そう言われも、もうこのレシートは滲んで相手が誰かすら分からない

そして、俺は「面倒事はキライだと言った

すると父親は俺の手に包帯を巻いた。俺の血がそれで止血される

「貧乏くじを引いたな」

「・・・たかが5千円程度、払えば問題はない」

俺がそう言うと親父は治療を終え、去っていった

「今度、こんな事になるのなら、相手の名前ぐらいは覚えておけ」

俺はどうでも良かった、でも父親が言っている事はある意味正しい事だと思った

「・・・レシートにボールペンは止めておくよ、次は油性マーカーでコピー用紙にでも書かせた方がいいかな・・・」

そう言うと、父親は仕事に戻った

「・・・お前の好きにしろ」

その言葉に、俺は滲んだレシートを握った

そして、俺なりの独自の解釈で全てを握り潰した

こんな物はゴミだと、そして、そのまま、ごみ箱に捨てた

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