ブラックベリーシンドローム

ろくろわ

ブラックベリーとシンドローム

 あるサイトの中で『ブラックベリーシンドローム』という言葉流行っていた。その言葉が何を意味するのか、発信源も流行経緯も目的も全てが不明であった。ただ一つ『ブラックベリーシンドローム』と呼ばれるそれが、そのサイト内で起きている何かの現象の事を差す言葉であると言うことだけは分かっていた。


 石橋いしばしは何故『ブラックベリーシンドローム』と呼ばれているのか。その理由を知りたいと言う欲求に抗うことができなかった。

 まず『ブラックベリーシンドローム』を調べるにあたり、それぞれの意味を確認した。おそらく、この『ブラックベリーシンドローム』は『ブラックベリー』と『シンドローム』に分けれるのだろう。或いはそのサイト内でおきている現象によっては『ブラック』と『ベリー』と『シンドローム』に分けることが出来るかもしれないが。兎にも角も石橋は『シンドローム』から調べてみた。

『シンドローム』日本語では症候群と呼ばれ、同時に起きる一連の症候のことを指す。その大きな特徴が原因不明と言うところだ。そして『ブラックベリー』これは一般的な系統の一つである事が推測される。ありきたりではあるが、ネット情報を引用するのであれば(ブラックベリー は、バラ科キイチゴ属の一群の種または1種の低木およびその果実)とある。またその生命力は強く、下手に栽培するとあっという間に侵食されてしまうともある。

 石橋はこの事から、ブラックベリーが指すところの意味は、木苺のように小さな粒の集合体である形がサイト内の何かの現象に似ているか、或いはその生命力の強さのように何かを侵食する様をブラックベリーに例えているのか、と言う仮説をたてた。しかしまだ試していない事もある。

 ブラックベリーその物の味だ。ラズベリーやブルーベリーなら記憶にあるのだが、ブラックベリーはどうも思い出す事が出来ない。試そうにも残念なことに石橋の近くの店では、そんなお洒落な果物は売っていなかったので必然とネットで頼んだ。ブラックベリーはそこそこの値段がしたが、謎解きのため仕方ない。と自分に言い聞かし、石橋は今までの経緯をそのサイトにまとめて書き記した。


 タイトルは『ブラックベリーシンドローム』


 と、そこでふと思った。


 石橋は何故、皆がブラックベリーシンドロームと書き記すのか不思議だったはずなのに、気がつけば自分も同じようにブラックベリーシンドロームとタイトルを付け、話を書いている。

 此こそ、まさに知らぬ間にブラックベリーのことを書いてしまう症候群シンドロームではないか。普段購入する事すら無いブラックベリーをわざわざネットで購入までして。

 石橋はここ最近のネットの検索歴上位を調べてみた。そこには案の定、ブラックベリーの言葉とネット通販のサイトが出てきた。


 つまり、あるサイト内で急に流行ったブラックベリーと言う言葉は、を売りたい興味を引く為に種を巻き、それに釣られた人達が次々にブラックベリーの話を書き記していった現象の事だったのだ。

 さしずめ、幾つもの話が集まり形をなし、そしてその強い生命力のごとくサイト内で埋もれることの無い姿がブラックベリーに似ていて都合もよかったのだろう。


 と勝手にお題ができた経緯を妄想し、私はブラックベリーを食べながら『ブラックベリーシンドローム』の話を書き上げたのだった。



 了


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ブラックベリーシンドローム ろくろわ @sakiyomiroku

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