最終話:一種誕生
元格闘家、二十歳青年の素性。
北国出身で最軽量とは思えないほどの筋肉質と獲物を捕らえるまなざしは付き合う人間を選ぶこともあった。
名前は
日本でオーロラが見られる地方に住むことが嫌で何度か上京や他の地方で暮らしながら格闘技を続けていた。
そんな時、他競技である相撲を辞めた同年代・
「楽しいなあ!副業とはいえ治安維持のために力を使えるのは」
やり過ぎだ。
久しぶりだ。
こんな
だから辞めたのだろう。
悪くない一日を過ごしている時、大嫌いなオーロラに関する情報がまいおりた。
『人間を超えられる副業』
二人でこんな怪しい内容ねえよと笑っていたが金に困っているわけでもなくなり、仕事の内容に飽きてきたから
多くは言えないが『新たな姿』になれるらしい。
さきほど
授業じゃ天使やら何やら教えられることもある倫理観。
いつの時代も天使は
くだらない。
『オーロラ・アンジュレーション』も
嫌いなこともしなければ好きな姿にもならないのは生々しくて分かりやすい。
* * *
北国か。
南極や北極には趣味で言ったことがあるがそれと比べれば日本の北国の
「寒い。ええ?まだこんな寒いの?」
ファイリンは日本人の友人でハンドルネーム・ノエレスに
「場所が場所だからね」
やっぱ北海道ではなく沖縄に台風覚悟で行った方がいいんじゃないかとファイリンが言いかけたがそもそも台風で飛行機が
「冬祭り……の季節じゃないか。いくらアスリートだからっていつも身体が
「いちばん北海道の
オーバーリアクションは
いくら夏が酷暑だからってその差もあって余計。
それとも異常気象が原因か?
夏の北国でこんなに寒いのは。
レンタカーを借りて北海道をめぐり、海産物を食いまくって楽しむ二人。
そしてなるべくヒグマが出なさそうな山を見に行こうとレンタカーを走らせていた。
「いやあクマはどこの国でも怖いから対策しないとな」
「ホッキョクグマ、グリズリー……さすがに戦いたいとは俺でも思わないよ」
それなのに北国の山に来たのには今までが人気が多い場所ばかりだったから少しだけ
「さすがにクマが多い山に来てまで自然を楽しもうとするやつはよっぽど自然に強いやつしかこないか」
ノエレスの
あれ?そんなデータあったか?
ノエレスも変な情報にかたよっていたりしないか心配だ。
こんな北国の山でそんなトランス恐怖以外の何物でもないから。
うおおおおおおおおおお
何?
今のは人間の声?
「クマかと思えば人間か。怖すぎるだろ」
しかもだんだん声はこちらへ近づいてくる!
「ジャパニーズホラーかよ!いや、体格がデカいなあの日本人」
「こっちをねらってる。ここは
「なに冷静に分析、してくれてありがとう。じゃあクマよりやばいな」
あの姿から見るに日本の国技である相撲をやっていた可能性があるのはファイリンならわかる。
しかも敵意を感じる。
相手は誰だろうと関係ない
「外国人に日本人か。見たところわけえなお前ら。気がすむまでなぐらせろ!ここは安全な
ああそうかい。
クマじゃなくて良かったと言いたいがこれでも念入りに調べて迷ってやっと見つけた
祭りにチンピラに会ったと思えば今度は北国で八つ当たり。
「ノエレスがなんの特技があるのかは今は聞かない。でもこの状況なら分かるよな?」
「言われずとも」
しかたがない。
山の中で力士らしき体格の人間と英国ファイター、小さな体に宿るファイター
ノエレスが思ったよりも優位に相手の
前はムエタイらしき戦闘方法だったがこっちは今の
ノエレスはこんなときでも自分が何者かさとられないように戦闘技術も
ファイリンもこちらへの攻撃はさばいて流し、あとはノエレスに
相手のねばり強さは他の英国ファイターも見習ってほしいとリンクで対日本人と試合をする時は
まあこれはノールールの喧嘩だから結局どの国でも気をつけなければいけないけど。
二対一でおたがいプロかプロ並みの技術があるからか相手がじょじょに
「てめえら一体何者だ?なぜ…なぜ大人しく倒れてくれない!」
死にたくないからに決まっているだろう!
まだ戦いを続けられる体力があるのか。
このままでは帰れる体力を
ノエレスが冷静に体格で相手の方が
ファイリンも友の
困った人間だ。
戦いがまだ長引く時に大きな光がファイリン達をつつみはじめた。
「今度はなんだ?」
限定的なオーロラ?
こ、これは一体。
そこには翼が生え、フクロウの毛並みにフィクションでよく見る
「お、お前なのか?その姿は!」
「余計な暴れ方は必要ない。さあ、帰るぞ」
また光とオーロラが発生し二人は消え去った。
「な、何が起こったんだ。」
はあ。
幸い帰れる体力は残っていたので日が暮れる前に帰る。
二人は北国のコンビニで適当な飯を食べて
「なんか放置しちゃいけなさそうなもんみたな」
ノエレスはカプチーノをちびちび飲んで返事が遅い。
「あの人間にたいして何らかの情報が出たら俺たちで対処するよ」
一体何者なんだよ。
ノエレスもあの
今は考えてもしかたないか。
◇ ◇ ◇
無事観光を終えて母国へ帰ることができた。
ノエレスとは長続きしたい良き友だ。
しかしあの異形が気になる。
自分たちにたいして特に何もしなかったのはありがたかった。
こんなご
不安はますがファイリンはいつも通りの日常を過ごすことにした。
* * *
ついに人間の身体は捨てられた。
あの特異体質は嫌いではなかったからそこだけは残してもらえた。
それなら人間と変わらないって?
この気持ちは誰にも理解されないし共感されないか。
研究室で過ごす。
「お、お前は本当に
答えはしない。
もう、関係ないことだから。
彼には失礼だが人間じゃなくなったのだから。
この先の不安は人間を捨てても変わらない。
逆にまだ捨てきれていないということか。
人間だった頃を。
完結
オーロラ・アンジュレーション 釣ール @pixixy1O
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