第22話 決意

「勇斗!」


 愛…………美。


「勇斗!」


 声……愛美だ。愛美が呼んで……る。


「勇斗!」


 灰色の世界だ。さっきまで父さんが……義母さんがいたのに。


 ただただ灰色だ。どこまでも。


 色は父さんたちが持ってったようだ。


「勇斗ぉー!」


 愛美。父さんと義母さん行っちゃった。


「私を見てよぉ!」


 愛美? うん。聞こえるけど灰色の世界しか見えないよ。


「勇斗ー! 目を開けろー!」


 目は開いてるよ。


 涙が溢れてるし。


「あんたまで私を置いてくの! 勇斗!」


 置いてく?


 俺……死ぬのか? 父さん、義母さんと同じように。


 愛美を残して?


 ――嫌だ……嫌だ。そんなの駄目だ。駄目に決まってる。


「勇斗おー!」


 灰色の世界に光が射し込んできた。


 いる。


 にじみ、キラキラと輝くその先に――愛美だ。


 涙を拭わなきゃ。泣いてる顔なんて見せたくない。


「動いた! 目が開いてる! 勇斗!」


 やっぱり愛美だ。愛美が泣いてる。


 そっか……さっき訳が分からなくなって暴れて。


 また泣かしてしまった。


 二人で迷子になった時に決めたのに。


 もう絶対泣かせないと決めたのに。


 笑ってる愛美でいて欲しいのに。


「愛美。ごめん。また泣かしちゃったな」


「そうよ! 約束破るんじゃないわよ! 馬鹿っ!」


 手を伸ばし頬に触れる。親指ですっと涙を拭った。


 背中は熱を持ち、激痛が襲ってくるけど関係ない。


 ベッドに手をつき、のし掛かっている愛美ごと起き上がる。


 目の前に泣き崩れた顔。


 手を伸ばしていると皮膚がつっぱるけど問題ない。


 笑え俺。笑って安心させなきゃ。だって俺は愛美の――


「うん。馬鹿だな。兄失格だよ」


 兄らしく笑えているだろうか。


「ううっ」


 また見つめあった瞳から、ポロリ、ポロリと流れ出る涙。


 落ち着け。愛美も俺と一緒なんだ。


 先にパニックになってしまったけど、今度は俺が愛美を支えなきゃ。


「おいで」


「…………」


 頬に触れてた手を肩に乗せて引き寄せた。


 何も言わず、動きに任せてくれる。


 トスッ――


 肩に頭を乗せて、首に手を回して抱き締めてくれた。


「今度こそ約束する」


 抱き締め返す。


 もう泣かすもんか。


「……ぅん」


 撫で続けた。


 先生の指示で看護師さんが、暴れて外れてしまったのか、点滴を付け替える。


 それが終わると――


『何かあればナースコールのスイッチを押してください。すぐに駆けつけますから』


 ――と。


 出ていく前に病室の明かりを調整して出ていった。


 暗くなりすぎない程度だ。


 うずめる愛美の頭から、汗の匂いがした。


 煙の匂いと、焦げ臭い髪の毛が焼けたものと一緒に。


「ゅうと……一緒に寝よ」


「うん」


 今は少しも離れていたくない。


 座っていたベッドに向かい合い、抱き合ったまま寝ころんだ。


「お義父さんとお母さん死んじゃった」


「うん」


 父さん義母さん。


 心のどこかで、まだ生きてるんじゃないかと。


 さっき見たのはただの夢なんじゃないかなと。


 先生たちが出ていった扉から、前みたいに心配そうな声を出して入って来るんじゃないかと。


「勇斗を天井の下から引っ張り出したの」


 そうだったのか。愛美が。


「そうしたらお母さんとお義父さんがぁ――」


「ぅん……」


「でもまだ生きてたの……。二人を家から助け出してくれた人がいたの」


「えっ? じゃあ」


「でもぉぉー! 間に合わなかったのぉ!」


 抱き締められる腕の強さが増す。


「『愛美、勇斗を頼むな』『ゆうくんをお願いね』って」


「うん」


「『愛美ごめんな。勇斗はアレだから苦労かけるが支えてやって欲しい』『ゆうくんと仲良くね愛美。それとごめんなさい』って」


「ゔん゙」


 止まれよ涙……泣くなよ俺。


「助け出してくれた人がポーション使ってくれたのに間に合わなかったの。目の前で死んじゃった……『ごめんなさい』って言って」


 愛美は見たんだ。


 それがどれだけツラいのか。


 気を失ってたから分からない。


 さっきの夢に出てきただけであんなに苦しくて、張り裂けそうで、潰されそうになった。


 どっちが、なんて無いのかも知れないけど……現実の方が俺には無理だと思う。


「ごめんな愛美。一緒にいてやれなくて」


「これで勇斗までって思ったら……ずっと好きだった勇斗まで――」


「――もう大丈夫だ。俺は愛美を残して絶対死なないから。それと……愛美。俺もずっと前から好きだ」


「うん。うん」


「本当に死ななくて良かったよ、死んでたら好きってこともちゃんと言えなかったし」


「でも生きてるのは、助けてくれた人がポーションくれたからだよ」


 命が繋がったのはポーションのお陰らしい。


 父さん立ちに使ったものと同じポーションをだ。


 それのお陰で生き残れた。


「……私たちこれからどうなっちゃうのかな」


「そうだな」


 高校は中退してプロの探索者に……今のままだと厳しいけどやるしかない。


「家も全部燃えちゃった」


「うん。俺がなんとかする」


 そう言ったけど、あてなんかひとつも無い。


 明日退院したあと行ける所は燃えた家があった所だけだ。


 すっぽりと腕の中で見上げる愛美。


 手で頭を引き寄せ、胸に押し付ける。


 ぐずっと鼻をすする音が胸に響く。


 あたたかい。こんなに細くて今にも壊れそうなほどなのに。


 無くせない。いや。無くさない。


 壊れてしまわないように守っていく。


 半分になってしまった家族。


 もう……一片たりとも欠けさせたりしない。


 震えが少しずつ小さくなって、強張こわばってた体が少し緊張が取れてきた。


 ゆっくりと頭と背中を撫で続けよう。


 愛美が寝息を立ててくれるまで。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 急ですが、このレベ0ですが、思っていた方向から激しくそれてしまっていて、書き直し、リメイクをしよう思います。


 読んでいただいた読者の皆様、本当に申し訳ありません。


 一応再投稿として、別作品になると思いますが勇斗くんの活躍は書きたいと思ってますのでよろしくお願いいたします。


 作者のわがままをどうかお許しください

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レベル0の無能だったが世界最強になってやる!~クズ野郎に殺されかけた最低辺ダンジョン探索者は固有スキルで『ざまぁ』するため無双する~ いな@ @iiinnnaaa

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