最終話 辺境生まれの大魔導士
王都襲撃から一ヵ月が経った。
ジノン・バークハートは監獄送りとなったが、自らが犯した罪に関しては今のところ素直に自供を続けている。
その過程で次から次へと新たな不正の証拠が明るみとなり、王国内は騒然となっていた。
まあ、想像はできていたけど、やっぱりあの水晶以外にもあったんだな。
ともかく、これで魔法兵団幹部の悪だくみはすべて暴露される形となった。
当然、連中は見苦しく最後まで抵抗を続けていたが、グラムスキー兵団長が一蹴。国王陛下にも知られ、学園関係者も含め総勢で三十人近くが処罰を受けるという前代未聞の事態へと発展した。
国民の多くは国の運営にかかわる組織の幹部が悪事を働いていたことに不信感を募らせていたが、評判の良いグラムスキー兵団長を中心に新体制が誕生すると聞き、そちらに期待を寄せているようだ。
ちなみに、俺はその新体制の中で若手の育成担当における最高責任者へ任命された。
魔法兵団に入ってから一年も経っていない俺がそういうポジションにつくのは異例の人事らしいが、周囲から特に不満などは出なかったという。
――というわけで、俺は今日も未来の偉大な魔法使いたちを育てるため、鍛錬場へと足を運んでいた。
そこは入団から三年未満の若手魔法使いたちが集まり、切磋琢磨してより高みを目指そうと頑張っている。
その中には俺が入団試験で戦ったギルバートの姿もあった。
「あっ! おはようございます、ゼルク先生!」
「ああ、おはよう、ギルバート」
「早速で申し訳ないのですが……実戦形式の鍛錬をお願いしてもよろしいでしょうか」
「もちろんだよ」
ギルバートは俺に敗れてから人が変わったように真面目で他者への思いやりができる人物へと変わっていた。
この件についてはアマンダさんからも深くお礼を言われたなぁ。
まあ、もともと実力はあるんだし、ストイックに上を目指して頑張るようになれば魔法兵団始まって以来の大物に成長する可能性だって十分にある。
それほどギルバートの才能は突出しているのだ。
――とはいえ、まだまだ学園を卒業したばかりの新米魔法使い。
実戦形式の鍛錬では課題が浮き彫りとなっていく。
「うぅ……さすがはゼルク先生だ……」
「いやいや、確実によくなってきているぞ。この調子で鍛錬を続ければ俺なんてすぐに追い抜かれてしまうさ」
「あ、ありがとうございます! では、今回の鍛錬で浮き彫りとなった課題を整理してさらなる特訓に励みます!」
「うむ。頑張れよ」
鼻息も荒く、ギルバートは復習をしようと駆け出していった。
その後は自主的に魔法鍛錬に取り組む若者たちを見守りながら、ふと新たな遠征に任務に就いたシャーリーたちを思い出した。
「みんなも今頃頑張っているかな」
ジノンの一件があってからすぐに国境周辺の再調査任務へ当たることになった四人。
俺はウィンタース分団から離れ、若手育成という独立した任務をこなすために王都へ残ることとなったため、彼らの活躍を遠くから祈ることしかできない。
今はこっちの方が何かと大変だからなぁ。
グラムスキー兵団長のフォローもあるし、何かあった際は真っ先に王都防衛に就く必要がある。
こっちはこっちでやることがあって大変だよ。
「ゼルク先生ぇ! ちょっと教えてもらいたいことがあるのですがぁ!」
「おう。今行く」
またしても若手魔法使いからアドバイスを求められ、彼らの方へと歩いていく。
コリン村を出てからいろいろあったけど……今の仕事は俺にとても合っていると思う。
大魔導士と呼ばれるのは未だに慣れないが、みんなにとって頼もしい存在として受け入れられているなら、その呼び名を変える必要もないな。
辺境の地で生まれ育った俺はこれからもここで生きていく。
今度は村の人たちだけじゃなく、この国の人たちを守りたいから。
だから――俺は今日も大魔導士であり続ける。
これからもずっと!
※10万文字到達ということで一旦終了します!
いつかまた機会があれば続きをやりたいです!
辺境育ちの大魔導士~農家のおっさん、知らぬ間に英雄となる~ 鈴木竜一 @ddd777
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