一人遊びでお留守番
色街アゲハ
一人遊びでお留守番
お母さんは出かけてて、
僕はこの家で一人で帰りを待っている。
外は雨。
外を見て、窓ガラスに水滴が一杯伝ってて、
その様子をじっと見つめている内に、
自分の顔が写っている事に気付いて、
「あー」だの「うー」だの、口を開けたり閉じたりして、
やがて始まる百面相。
仕舞いに手足をヒョコヒョコ動かして、
まるで僕は糸の付いた操り人形。
……つまらないや。
一頻り遊んでみて、
もういいやと手足を下ろそうとして、
それなのに、手も足も自分を無視して、
てんで勝手にヒョコヒョコ動き続けて、
ちっともおかしくなんかないのに、
窓ガラスに映る自分の顔は、
気味の悪いニタニタ笑いを浮かべて、
そうしてる内にも、
僕の手足はバタバタと激しく動き続けて、
止めて、止めて!
僕の手足はそんな風に曲がらないよ!
痛い! 痛いよ!
助けて! 助けて! お母さん!
窓ガラスに写るのは、
不意に真顔になった僕の顔。
喉から洩れる、
僕の物じゃない声が語り掛ける。
「分かっているんだろう」
「もう、お母さんは帰って来ないんだよ」
終
一人遊びでお留守番 色街アゲハ @iromatiageha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます