自業自得とは

アゴラット

1

 その日男は駅のホームにて命尽きようとしていた。

 原因は至って単純な不注意の末の事故。

 不注意な歩きスマホによって人と衝突し線路内に転落、停車寸前の車両によって右半身を潰され失血死。

 正直言って自業自得だった。

 その時男の前に現れたのは一帯の死神だった。


「お前と取引をしてやろう、今から目の前に現れる男を殺せばお前を助けてやる。」


 最後の力を振り絞り頷くと男は何事も無かったかのように先ほどの駅のホームに立っていた。

 だがしかし、背後には死神。首筋には大きな鎌の刃が突きつけられている。

 男は誰か殺せそうな男がいないかと血走った目で必死にホームを探す。

 すると目の前を大勢の人の列が通り過ぎてゆく。


 男はその中から自分のように歩きスマホをしている男に故意にぶつかりホームに落とした。


 人は至って簡単に呆気なく死ぬ。

 その男も電車に轢かれ遂に絶命してしまった。


 そして、突き落とした側の男も…


 男は絶命する直前何かに向かって小さく頷いたという。

 

「まさか自分自身を落とすなんて、とことんついてない男だ。」


 死神は男に少しの同情の目を向け、地獄に魂を連れ去ってしまった。

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