その先に入りたい
大将
その先に入りたい
目の前には腰程の鉄柵。
登れば簡単に飛び越えられる。
でも向こう側に行けない。
行きたいのに、行けない。
準備が足りない。覚悟が足りない。
じゃあ今やってるものは? 目指しているものは?
それすら捨てて、そっちに行ける確証はあるの?
四の五の言わずにやってみろ――。
そんな事は分かってる。でもそこへ行くには、あまりにも何もかもが足りない。
だからただ、今は柵の外で眺めてる。
楽しそうな景色、楽しそうな人達。
中の人みんなで助け合い、一丸となって作り上げた楽園。
数千数百と立ち尽くす柵の外の人達から、たった一人が選ばれ中に入っていく。
ほら、また楽しそうに混ざっていく。
そっちは楽しいのかな。それとも努力の賜物なのか。
「見えるものが全てじゃない」何てよく言ったものだ。
頑張ってれば、いつかは行けるのか。
あの輪の中に入れるのかな。
あの輪の中に、好きな人がいる。
最初はただの気になる人。
でも知れば知るほど惹かれていった。
あなたの隣に立ちたいと。
でも実際にはわからない。
柵の外ではそこまで見えない。
もしかしたらもう、誰かが立ってるのかもしれない。
どうして人生は一度しかないのか。
今更になって後悔が押し寄せる。
もっと早く何かが出来ていれば――。
考えれば考えるほど、後悔と怒りが押し寄せる。
無いものではなく、有るもので進め。
例えそれが、小さな一つの砂粒でも。
進み、止まり、また進み、また柵の先を眺める。
今日が終わる。当たり前に明日が来る。
いつ終わるかわからない、眺め続ける日々が。
いつかあなたの近くに行けるかな。
カッコよくて可愛いあなた。
どうか隣には、誰もいないでほしい。
そこは自分の場所にしたいから。
どうか柵の向こうに行けるまで、その楽園も消えないで。
あなたが好きでたまらないから。
その先に入りたい 大将 @suruku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます