最終話 「私が私でいられる居場所」
■マイハウス改め、『森の薬屋さん』 自室
「んー、今日もいい天気ね」
朝日を浴びて、私は目を覚ましてベッドでぐぐっと伸びをした。
ベッドから起きると、薄手のネグリジェからスロットにある薬師の服へと着替える。
一張羅だけど、一度アイテムスロットに戻せば綺麗になるので不思議だ。
洗濯が必要ないのは正直嬉しいけれど……。
私は自室からダイニングに出て、フェン達に挨拶をする。
「おはよー、フェン、サスケ、ガイウス」
「「「おはよう」」」
ラヴィル村の騒動から、半年ほどたっている。
春に異世界へ来た私だったが、この森で薬屋を営業できるようにもなった。
「まさか、市場で売っていたお薬が領主様に気に入られて、領民としてちゃんと認められたのは嬉しい誤算だったね」
フェンが用意してもらった朝食を今日もいただく。
野菜類はガイウスが畑で作ってくれたもので、肉類はフェンが狩りでとってきたものを食べていた。
私のスローライフの土台はこの半年の間で構築できていると思う。
「お嬢の薬のお陰で作物の育ちがいいぜ。畑の範囲を広げれば売ってもいけるんじゃねぇか?」
「畑の範囲を広げるなら、木を切ったりして広げないとね」
コーヒーを飲みながら私はこれからの計画についても楽しくなってきていた。
薬屋としても有名になったので、リヴィル村以外のところからも私の薬を求めて人がやってくる。
そのために街道もガイウスに整備してもらって、私の薬屋に来やすくもしていた。
私のいる森の周辺は牙狼一族が見張っているので盗賊などもいない。
あれ? 意外と私の住まいの周りすごい状態になってる?
「主様、周辺諸国にも主様に薬を作ってもらいたいというものが出てきているそうです。文もありますので、ご覧ください」
サスケは私のメッセンジャーを今では務めていて、地方領主さんのところに行ったりして折衝を務めてもらっていた。
分身体が今、どれだけいるのか私にもわからない。
一度、どれだけいるのか聞いたけれど、秘密だと言われてしまった。
「サスケ、ありがとう。お返事はサスケに渡せばいいのね?」
「左様です」
私が好きなことをやっている間にも、ガイウス、フェン、サスケが自主的に動いてくれているので自由に過ごせている。
薬を作らず昼寝をする日もあるけど、収入は増えていっていた。
平和なスローライフ。
理想的な「私が私でいられる場所」を手に入れられた。
「みんなと一緒にこの世界へ来られてよかったよ。ありがとう」
ご飯を食べ終えた私は3人に向けて、頭を下げる。
「俺こそありがとう、お嬢」
「もちろんです。主様」
「マスター、オレも一緒で嬉しい」
3人の笑顔を受けて私もうれしくなった。
この誰も知れない異世界にこの3人で来られて本当に良かったと思う。
ただの従魔でなく、話せる獣人になってくれて良かった。
寂しくなく、話せるようになってくれたことで、私の心は助かっている。
いろんな苦労があったけど、3人がいてくれたおかげで今は、平和な時間を過ごせていた。
「さぁて、今日もお店を開けようか」
住居と工房の方を拡張して作った薬屋に向かう。
薬の在庫の確認や、清掃もしていって開店の準備を整えた。
「素材さえ大量に入れば、行商とかも今後始めるのもありかもしれないわね」
売り上げがだいぶたっているので、人を雇いだす機会でもあるかもしれない。
リヴィル村への巡回回数も減ってしまっているので、薬を作って持って行ってもらったり、作れるように育てることも視野にいれたかった。
半年も過ごしているからか、やるべきことが安定して、やりたいことが増えてきている。
「この先が楽しいと思えるなんて、前世からは考えられなかったなぁ」
5年間続けていたゲームが終わってショックを受けてあの日から半年。
異世界で私は居場所を見つけていた。
カランカランとドアが開き、ベルが鳴る。
「いらっしゃいませ、森の薬屋へようこそ」
私は笑顔で来客を出迎えた。
ゲームキャラで異世界転移したら、元従魔のスパダリ獣人達に溺愛されて困ってます 第一部 完
【完結】ゲームキャラで異世界転移したら、元従魔のスパダリ獣人達に溺愛されて困ってます。 橘まさと @masato_tachibana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます