第3話

−遊馬家屋敷−

「ただいま。」

「志希、おかえり〜!お菓子食べる?」

「おじ様、もう少し危機感持ってくださいよ…(笑)

今はボスですし、伝令を出したのはあなたでしょう?それで、ナビゲーター班はもういるのですか?」

「ああ。さっき到着したばかりだ。リビングに待機させている。」

(すぐにスイッチを切り替えられるおじ様は、やっぱり尊敬するなぁ…!)

「リビングですか…。ありがとうございます。では、愛珠麻と拓也を連れて向かいますね。」

「うむ、よろしく頼む。」

(それにしてもリビングね…。ここには客室がちゃんと設けられているけど…、やっぱりおじ様も考えてるんだ。

…客室、か。だめだめ!今は殺人命令に集中しなきゃ!)


「アズ、タク。リビングにナビゲーター班を待機させているそうだよ。」

「リビング…?志希様、この屋敷には客室がありましたよね?なぜわざわざリビングにしたのですか?」

「あ、ちょっとアズ!余計なこと聞くな!!」

「いいんだ、タク。そうだな、アズにはまだ話していなかった。…客室は、私のお母様とお父様とおば様が殺された場所なんだ。だから、3人の仏壇がある。そこには身内以外は入れないようにしてあるから、おじ様は待機場所をリビングにしたのだと思うぞ。」

「え…!ごめんなさい、志希様!!!!わ、私の不注意でつらいことを思い出させてしまって…!!」

「大丈夫だ、アズ。私が君に言っていなかったのも悪い。だから、どうか自分を責めないでくれないか?」

「は、はい…。ありがとうございます。」

「じゃあ気を取り直して、リビングに待機しているナビゲーター班の所へ行こうか。」

「はい。そうですね!…アズ、大丈夫?」

「うん、大丈夫!よし、行きましょうか!!」


-リビング-

“コンコン”

「失礼します、実行班代表·遊馬志希です。」

「「「どうぞ。」」」

“ガチャ”

「…!なんですか、この状況。明らかに宴会じゃないですか。殺人命令が出てもこの調子…。相変わらずですね香苗さん。」

「あははっ、君たちもどうだい?一緒にパーt…」

「遠慮しておきます。私の家を勝手に荒らす人は嫌いですよ。((圧」

「おっと…、毒舌だなぁ。」

「はぁ。黙ってないで何か言ったらどうですか、清羅さん。香苗さんと何年もナビゲーター班をやっているあなたなら、彼の対処法をご存知でしょう?」

「対処法って…。虫みたいな言い方してんの面白いね。」

「は?それだけですか?次はヘッドホン取り上げに行きますね…💢」

(って、もう聞いてないし。)

「ふわぁ、志希ちゃんも大変だね~。香苗はチャラいし、清羅は無口だけど、なんだかんだ志希ちゃんのこと気に入ってるみたいだよ?僕も君のことは結構気に入ってるよ。それじゃあ、おやすみ~。」

「この状況で呑気に寝てられるのはあんただけですよっ、彪雅さん!!」

「あー、志希様?その…、これはいったいどういうことなのでしょうか?俺らだけまだ、状況が把握できていないのですが。」

「(*°-°)*。_。)*°-°)*。_。)ウンウン」

「すまなかった。とりあえず、紹介からしておこう。彼らがナビゲーター班だ。代表を、坂爪香苗さかづめかなえ。班員は香苗さん以外に、日向清羅ひなたきらさん、甘乃彪雅かんのひゅうがさんがいる、のだが!」

「「だが…?」」

「見ての通り、彼らは仕事以外の時は超ポンコツ野郎になってしまうのだ。」

「ポンコツだなんてひd…」

「うるさいです( ^∇^)」

「Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン」

「私はそんなポンコツな彼らの世話係に任命されてしまった、おじ様から…!しかも笑顔でよろしく、と。そんなの断れるわけないだろうっ!」

「え!志希ちゃんってボスから俺らの世話係に任命されてたの!?今までそんな人いなかったよ?」

「それはあなたたちが問題児だからでしょう?なんで私があなたたちの面倒なんか見なきゃいけないんですか。昔と逆になってますよ!」

「昔…?」

「ああ。彼らは私の両親が仕事で忙しい時、代わりに私の面倒を見てくれていたのだ。家も近所でな。しかも彼らの母親と私のお母様が昔からの友人で、生まれてからずっと一緒だったんだ。私の兄のような存在だったんだよ、昔は。今じゃ完全に幼稚園児を見ているようなもの…。」

「…志希様、1つよろしいでしょうか?少し気にくわないことがありまして。」

「ど、どうした?顔が少し怖いぞ…?」

「ナビゲーター班の皆さんが志希様と親しいご関係だということはしっかり伝わりました。ですが、志希様のような素晴らしい方をどうして馴れ馴れしくちゃん付けするのでしょうかっ!志希様のご希望なら私が口出しすることはできませんがね。」

「今まで気にしなかったな、そんなこと。だが…、アズには悪いが、私は今のこの呼び方でとても満足している。彼らがポンコツなのは変わりないが、一緒にいると楽しいこともあるからな。今の関係を私は維持したいと思っているよ。」

「「「(´;ω;`)ブワッ」」」

「なんで皆号泣してるんですか。というか、清羅さん珍しく話聞いてくれたんですね。それに、彪雅さんも起きてたんですか。」

「いや、だってどんどん毒舌になっていく志希ちゃんがこんな嬉しいこと言ってくれるなんて…!!」

「毒舌は余計です香苗さん。」

「志希、俺らに厳しいじゃん。いつもそう言ってくれればいいのに。」

「私が厳しいのはあなたたちがポンコツだからです。てか清羅さんはなに拗ねてるんですか、幼稚園児扱いしますよ。」

「清羅は不器用だからね~。無口くんは嫌われんぞ?でも、清羅が言ってること僕も少しわかるかもな~。もしかして、志希ちゃんも不器用だったりする?また昔みたいに僕が甘やかしてあげようか?おいで、志希ちゃん。」

「やめてください。私、清羅さんほど子供じゃないんで。」

「というか、なんで敬語なの?いつもタメ口で話してくれてるでしょ?それに、呼び方も違うじゃん。いつも可愛い呼び方してくれんのに。」

「そんなの決まってますよ。今は任務中。おじ様からの殺人命令が出てるんですよ!長話なんかしてる暇はなかったんです!!わかってますか!?」

「志希様のおっしゃる通りです。早く会議を行いましょう。」

「さっさと始めないと、そろそろおじ様が怒りますよ。それでもいいんですか?」

「えっ、そ、そうだね~。ちょっと、清羅!音楽聴いてんじゃないの!会議やるんだよ~!!ボスが怒るとヤバいから!ね!?覚えてるでしょ!?」

「えっ、あ、ごめん、彪雅。」

(やっぱり覚えてるんだ。ヤバかったよなぁ、おじ様がガチギレしちゃって。何でだっけな・・・、確か私が気に入ってた人形の手を彪兄と清兄が喧嘩して引き千切っちゃったんだっけ?それで、かな兄がおじ様のことなだめてたなぁ・・・。ふふっ、懐かしい。おじ様って、ちょっと過保護な所あるから。)

「なぁにニヤけてんの、志希ちゃん。思い出すのはやめてよね、ほんと怖かったんだから。さっさと始めないと、ね?」

「別に、思い出してませんし。コホン、ではこれより作戦会議を始めましょう。」

“ピリッ”

((…!すごい、一瞬で空気が変わった…!!この人たち、本気出すとヤバいかも。))

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茨に解毒を 琥珀ツキ @Kohaku_Tuki

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