影を覚える
椿生宗大
C’est la vie.
踊り始めのワンステップ 体が強張ってしまう
軽快さはもう自分の手には無くなって
泣いたように笑うしかないんだ
どうやって取り繕おう?
考えるも間もなく
友達がダンスしているのが飛び込んできて
ああ眩しいなって
綺麗なシャンデリアの光に負けない
陰りが見えないよ
酔いつぶれすら羨ましい ここでは空気に身を任せたいのに
キラキラに圧倒されるだけで
全てから逃れられない
若くない自分を思い出したんだ
あの人からの電話も無視して
光から逃げる生活の一場面にも
自分の影は見当たらない
不良品のスマホが 画面に美人を映しては
私の熱を奪い取るだけなんだ
羨むばかりの人生で
自分にあるものさえ見失って
愛すべきものの存在も
蔑ろにしてしまって
勝手が許されたのは 若いうちだけなんだって
気付くんだ
親の元に行くために
電車に揺られていたら照らされた
雲間から顔出す太陽が影を付けてくれたんだ
ただ止まっても仕方ないのさ
誰かの声が聞こえていた頃は
気にも留めずに生きれていた
影が過去を隠してくれるから 迷うくらいなら
実行してちゃえ
その都度 見せ方を変えたらいい
不貞腐れて引きこもるから酔えなくなる
笑って下手なステップを見せても
気持ちを忘れずに過ごしていく
全部を塗り替える
それが若さなんだと都合の良い定義をしておこう
そうしたらいつの間にか輝きが戻るんだって信じよう
影を覚える 椿生宗大 @sotaAKITA1014
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