思旬寸

椿生宗大

帰りたくなったよ

望まぬ朝の光で目を覚ます

窓を隔てていても干渉してくる憎らしい光

僕は昨日の夜から抜け出せていないというのに


寝汗がしみ込んだパジャマが身体に

うっとうしく貼り付く不愉快さ



ああ帰りたい


幸せな包み方をしてくれる夢の元に


時を忘れたい

暗さの中でまどろんでいたい

後ろに歩きたい


戻ったらもっと酷い歩き方をしちゃうのかな


僕にも泣き喚いた時代があったはずだ

あの周りを気にせず泣けた日々を思い出して

追体験してやりたい

外が見えずに本能的に叫ぶ初々しい行動を

無邪気に繰り返したい

誰よりも真っ赤で青い歌声で

真っ白な空間を埋め尽くそう


産まれたままの愛され方を味わえない

中途半端な恋愛ごっこで卑しく堕ちて

汚しちまった咎人を

もう一度 この身で 幻想に閉じ込めて


目を開けないで 迷うくらいなら

目を鎖ざして 明るさを知らず

一人を過ごそう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

思旬寸 椿生宗大 @sotaAKITA1014

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ