人生という冒険は続く

 大邪の襲撃後、特に居る理由の無くなったドコ村から行商人の幌馬車に乗り、剣鬼たちは次の地へ向かう。

 スパスたち輝光騎士は重傷の負傷もあり、まだ移動の準備に時間がかかるようだった。

 そしてユースタスの日々は変わりなかった。大邪により被害を受けた村人のために嫌嫌ながら屋敷の空き部屋を貸している。

 部屋を引き払うときに剣鬼たちが見たユースタスの表情は見るからに不機嫌そうであった。

 徹甲大邪の封印の地からイサカの死体は影も形も無く消え、杖も消えている。しばらく時間は掛かるだろうが、イサカは当然のように宮廷で本来の職務に戻るだろう。


「次は誰を狩りましょうかね」

「行商人殿の行き先から近い相手で良いだろうよ」

「着いたら、近くで誰が封じられているかその辺の一般市民に聞いてみましょう」


 二人は大邪の心臓を干し肉ジャーキーにしたものをかじっている。

 というのも大邪のように強大な生き物の心臓を食べることで、その力を得ることができる。そういう法則になっている。

 スカーレッドは神になる使命を果たすため、かつて同胞であった大邪たちを食らうのだ。


「行商人殿も食べますかジャーキー?」

「良いんですか?うちは性病と借金以外貰うのが家訓なので喜んでもらいますよ!」


 幌馬車の馬を走らせるために御者をしている行商人にも干し肉ジャーキーが分け与えられる。


「スカーレッド、いい加減行商人殿の名前覚えろ」

「グラースも覚えてないじゃないですか」


 スカーレッドは大邪であり、新しい神となる使命を与えられている。

 グラースは転移者であり、全てを切り捨てる剣である。ただスカーレッドに雇われた故にその剣をしていた。スカーレッドが新しく神となったとき、雇用契約が終わった瞬間やはり切り捨てるだろう。

 だが、今だけは。

 スピードワゴンが井戸田と小沢のコンビであったように、今の二人はコンビなのだ。

 グラースがハンバーグ師匠のようにソロになる必要はまだ無い。


「あと勘違いしているようだが、ハンバーグ師匠は俺の師匠ではない。ハンバーグ師匠は井戸田だ」

「そうなんですか!?」


 

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大邪について 筆開紙閉 @zx3dxxx

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