学徒のテロリズム

ななま

学校へ行こう

薄灰色うすはいいろの陽の光が私の網膜を焼く。


耐え切れず起こした体は鉛のように重く、メランコリックな気配がベッドの周りに霧散した。

その霧を払うように、手近にある遮光カーテンをシャッと開け

見慣れた… いや 見飽きた2階からの景色、そこに映るうつろな私 今日も今日とて学校が始まる。


2階から1階へと階段を下り、誰もいないリビングで面白くも無いニュースを垂れ流す。

私達の世界は腐っているようで、朝のニュースは政治家汚職事件のトピックばかり


 なんの面白みも無い。


時刻は8時を過ぎた、そろそろ家を出よう。


綺麗にアイロンがけされた制服を皆纏い、黒く長い髪の毛を一つにまとめ、荷物を入れたスクールバッグは異様に軽い。


【行ってきます】


私の声はテレビの音に掻き消された。


最寄りのバス停までの道、街路樹の下に漏れる木漏れ日に制服を濡らしながら、履き慣れないローファーの靴擦れを気にする。


 バス停についた。


私がバス停に着くと同時に、バスも到着した様で


(待っていました)


と言わんばかりに私に膝を着く。

ピッと定期を機械にかざしバスの中をぐるっと見渡す、どうやら私が座る場所はないらしい。


仕方が無いので優先座席付近の吊り革に手をかける

バスは乗客が乗り終えたのを確認しエンジンを吹かし、目の前の景色はゆったりと動き始めた。

朝暾ちょうとんは建物の影に隠れながら、時折その顔をチラチラと覗かせ車内に入り込む。

その1つが私のバッグに飛びる、チャックを閉め忘れていた。


バックに入った光は、中で鈍く不透明な輝きを放ち チャックを閉めるに準じてそれは息を潜める。


それから15分程揺られ、バスは学校に程近いバス停に着こうとする。

降車ボタンを押し、バスが完全に停車すると 最前やったように機械に定期を翳す、時間が時間なせいか私以外に降りる人は居ないらしい。


バスを降り歩き始めようと前を見る、眼前には金属加工店の陳列窓ちんれつまどに置かれた包丁が、その光を受けて鈍く光っている。

自宅近隣の道とは違い、通学路には落葉樹らくようじゅが青々と茂っていた。おかげか暑さは幾分か和らいで、頬を掠める青嵐あおあらしが汗を蒸発させる。


学校の校門前に着いた。



カバンの中を漁って、鈍く不透明な輝きを放つそれを手に取る



時期を外した蝉の声が五月蝿い。



ジリジリと照りつける陽の光が私の肌を焼く。






さぁ、学校に行こう。




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