第二話 不思議ナ関係

 1節 一人の朝



「ん〜、おはよ、あ、起きてないか」



 イブキは、他の人よりかなり早く起きた。



「めっちゃ早く起きたな俺」



 時間帯は夜明けの少し前。あまりこの時間に起きることはないので、イブキにとっては少し新鮮だ。



 外を見ると、少し明るくなってきた夜空が広い道路の先に見える。



 今日からはいつもの二人レイトとリノに加えて、少女ハルカがいる。



 まずは自分たちの荷物になくなっているものがないか確認する。



 水、食料、燃料、その他の必需品に、ナイフが2本。水と食料以外は特に問題はない。



 だが、水と食料の残りが案外少ない。



 もちろんいいことではない。



 この世界では、生存者が別の生存者のものを奪うことはよくある。特に、全ての建物同士が通路で渡されているこの都市なら尚更だ。



 そんな奴らに盗まれでもしたらたまったものじゃない。



 じゃないにしても、もし殺人鬼が侵入してきて寝てる間に全員殺されたりしたら笑う口も泣く目も無くなる。イブキは、三人に寝る時の警戒と今後の食料をどうするか話そうと決めた。



 ——————



 イブキが考え事をしていると、いつの間にか空がだいぶ明るくなっていた。太陽のある方向の窓から、明るい光が差し込んでくる。



 いつの間にか、他の四人も起きたようだ。



「おーおはよう3人とも」


「なんだイブキ……早いな……」


「…………おはようございます」


「んぁ〜あと10分……」



 一人だけおかしな人がいるが、他三人はあまり気にしてないようだ。



「なあ、このねぼすけが起きたら相談したいことがあるんだがいいか?」


「なんだ珍しいな。明日は槍でも降ってくるのか?」


「お前はっ倒すぞ」


「悪い悪い」


「イブキさんが相談するのって、そんなに珍しいのですか?」


「あぁ。こいつはな——」



 しばらくそんな会話が続いた後、リノが10分どころじゃない時間をかけてやっと起きてきた。



 すでに起きて身なりをどうにかした3人と比べ、非常にだらしない格好をしている。



 ボロボロな寝袋でロクなケアもしないならある程度は汚れたりするものではあるが、それにしたってなかなかな様子だ。



 正直レイトとイブキは見慣れているが、ハルカは少し驚いた。



 昨日出会った時は割と整っていたから。



 その後イブキは今さっき起きたばかりのリノに事情説明をし、3人に話をした。



 水と食料があまり十分ではないこと。



 それなのにもし盗まれたら全員餓死がしすること。



 だから寝る時は交代で監視をした方がいいだろうということ。



 そして、ハルカの親を探すのならこの都市から出た方がいいということ。



 3人は真剣に話を聞いていた。



「じゃあまず、街の外に行く前にハルカがどこから来たかから聞かないとだな」



 そう口を開いたのはレイトだった。



「えっと、確か来たのはあっちだったような気がします」



 ハルカは割れた窓の方へ向かう。



 そして、ハルカが最初に街へ入ってきた方を指さす。



 先は、明るい。



 作戦会議が終わり、ある程度の計画が決まった。



 まずは、都市から脱出するところから。



 次に、大まかな位置を決め、少しずつ探していく。



 荷物はイブキとレイトの2人が持つことになったが、ナイフだけはリノが持っていた。



 理由としては、1番小回りが利くから。ナイフでの戦闘は慣れているらしい。



 いつ何が出るかわからないのが、この世界の怖い所だ。



「じゃあ、行こっか」



 4人は歩き出した。



 3節 これから。



 今いるのは、地上80階の小さな部屋の中。



 がむしゃらに登ったハルカは寝ているうちに3人が生活していたここまで連れてこられた。



 扉があったであろう所から外へ出ると、もうコンクリートが剥き出しになってしまった階段へ繋がる廊下が姿を現した。ガラス片や無数のゴミも落ちているがここ以外で降りるルートはない。



 この街から脱出するためには、まず複雑な構造のビルを降りなければならない。



 その構造たるや、前述の通り何年も生活している人でないと覚えられないほどだ。



 ただ、あのビルのここに行きたい、というものではなくただ降りたり登ったりするだけなら簡単なのは幸いである。



 他の多くの建物と同じく、一部が崩壊しており連絡通路を使わないと通れなかったり瓦礫の山で塞がれていたりと、1階降りるだけでもひと苦労だ。



 比較的崩壊が進んでないとはいえ、それはあくまで都市全体での話。部分的に壊れているところなど存在しない方が無理なのだ。



 仲を深めるべく談笑を交わしながら80階分の階段を降りる頃、鋼鉄の橋の隙間から見える太陽はちょうど真上を過ぎたところにあった。



 日光を取り入れるためビルの間は空間があるので、よく見える。



 屋外なので当然ではあるが、こんな立体都市でも雨は入るので昨日の雨で濡れている。だがハルカがここへ来た時のように雨は降っていなかった。



 灰色の都市の中に茂る鮮やかな緑色の植物たちは、水滴を持ち輝いている。



 しかしその幻想的な様子とは反対に、4人は困った状況となった。



 いつの間にか最初にハルカが来た所とは違う所へ来てしまっていたのだ。



 無理のないことではあるが、これでは親探しなどできるはずもない。



 考えた4人は、安全に寝泊まりできるかつ探索に便利な場所を探すべく街の外周へ進み始めた。

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終焉ノ世界ノ最終紀行 ロクボシ @yuatan

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