第3話「海水浴」




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「それではツナの服装のセンスについて総括したいと思います」

「え、何この会議」


 打ち上げの翌日、ユキに呼び出されて会館に来てみたら変な打ち合わせが始まった。

 メンツは俺とユキ。それとマネージャーのククルの三人だ。あんた仕事中じゃないの?


「ちょうど休憩時間中です。どこかで取らないといけないので」


 あ、はい、そうですか。

 わざわざ会議室を借りての会議だから真面目な話だと思ったのに。吊し上げだったでござる。そんなに俺を虐めたいのか。そうですか……。


「記念すべき第一回である今回は、とりあえず服装のセンスについて話し合いたいと思います」

「わー」


 わー、じゃねーよ。なんでそんなに楽しそうなんだよ。というか、あと何回やるつもりなんだよ。まさか俺、服装以外もアレな感じなの?


「ちょっと待て。昨日の件で俺がダサいというのは分かった。それは理解した。……だが、そこまでか?」

「うん」

「はい」


 即答である。

 あっれー。おかしいな。マジで分かんないんだけど。

 安さに比重を置き過ぎて、デザインを二の次にしてたのは確かだ。それは間違いない。でも、その中では比較的マシな物を選んでたと思ったんだが。もっと根本的な部分で、断言されてしまうほど俺のセンスは世の中と隔絶しているというのか。


「いくらなんでもそこまでは……他の奴……ほら、たとえばサージェスはどうなんだ?」


 ほら、自他共に認める変態さんだよ。絶対普通のセンスと違うよね。

 俺のセンスではあのスーツは普通に見えてしまうのだが、実は違うのかもしれない。


「変態性を抜いてって事だよね。昨日着けてきたサングラスはともかく、スーツのセンスは悪くないんじゃない? 本人が選んだのかどうかは分からないけど、少なくともダサいって言われる事はないと思うよ」


 違わなかった。奴のセンスは悪くないらしい。そういえば、あいつ雑誌の取材とかモデルもしてるらしいしな。……内容考えるとスーツが必要なモデルかどうかは分からんが、そういう情報に触れる機会も多いだろうし。いつも着ているスーツも、案外コーディネーター的な人が選んでるのかもしれない。

 じゃあ何か? 俺は自分の着る物のセンスだけが駄目という話なのか?


「ユキさんの服は男性の服として見たらどうかと思いますけど、似合ってますし可愛いですからね」

「えへへ」


 えへへ、じゃねーよ。……まあ、確かに似合ってはいるよ。女と見間違うくらいに。

 というか、お前の場合はメイド服でも、お姫様が着るようなドレスでも似合いそうだよ。それが正しい事なのかは置いておいて。


「フィロスやゴーウェンはどうなんだ。獣人だからガウルは置いとくとして、男じゃなくても……ティリアとか摩耶とか」

「ゴーウェンは慣れてない感じがあるけどそれでも問題はないし、他のみんなも普通だよ。……ガウル含めても」


 なんてこった……俺のセンスは仲間内でも最低ランクだというのか。みんな内心では『うわダッセぇこいつ』とか思ってたりしたんだろうか。やばい、疑心暗鬼になりそう。

 ワースト二位扱いっぽいゴーウェンと一緒に泣いたほうがいいんだろうか。……まさか奴にまでダサいって思われてたりしないよね。


「ツナがどんな風な印象を持たれているか、いろんな人に聞いてみようか? ……メール送ったよ」

「え、やめ……ってもう送ったのか!?」


 いきなり何しやがりますか、この兎さん。行動早すぎじゃね? それ絶対前もって準備してただろ。三分クッキング的な感じで。


「来週実施される中級ランク昇格の授与式には、ちゃんとした服を用意しましょうか。いくつか私が見立てておきますよ」

「はい……スーツでいいかな」


 スーツならそんなに違いはないだろ。よほど奇抜な物でない限り、どれだって比較的無難だ。なんなら、そこら辺の一万円くらいのやつでも分からないだろ。


「スーツでも、安いと分かる人には分かるからね。それに靴やネクタイもちゃんとしないと。……あ、もう返信来た」


 レスポンス早いな、おい。


「……なんだって?」

「まずテラワロスから……『同ランクwwww』」


 クソうぜえ。ユキさん、いちいちホワイトボードに書かなくていいから。テラワロスの絵とかいらないから。

 くそ、何で自分と同ランクって言って笑うんだよ。というか、そもそも論として、なんでテラワロスにまで送ってるんだよ。


「あの人分かってやってるんじゃないかな……。あとはチッタさんだね……『あえて言わなかったけど、クッソださいと思ってたニャ』だって」

「あんの猫耳……」


 ニャとか言ってる人に言われたくないんですけど。

 今度あの猫耳齧ってやろうかしら。泣いても漏らしても許してあげないんだから。


「やっぱり共通認識なんだよ。諦めたほうがいいね」

「……分かったよ。俺はダサい。オーケーオーケー」


 返信してきた人間に偏りがある気がするが、それは認めよう。悪いところは認めてこそ進歩がある。これが大人だからね。

 そして、俺は大人なんです。


「でも、これからはちゃんと治しましょうね。決して治療不可能な病気ではないので」


 おい、マネージャー。何故に病気扱いなの? そんなに深刻な事態だと言うの? さすがに病気扱いは看過できないよ。

 こないだ会ったばかりなのに、あんたわりと毒舌だよね。


「で、でもさ、俺くらいの奴はいるんじゃねえ? 迷宮都市広いんだからさ」

「えーと、さっきは同ランクという話でしたが、テラワロスさんはもっとひどいです」


 フォローのつもりかもしれんが、それはあんまり嬉しくない。

 何回か普段着の奴を見かけた事はあるが、あいつ俺が分かるくらいにひどいんだぞ。いくら俺でも『プゲラッチョwwwww』とか書いたTシャツは着ないからな。


「そ、それ以外にはないのか? いくらなんでも比較対象がアレだけって事はないだろう」

「え……と…………」


 あれー。そこで悩んじゃうの? 俺、思ってた以上に深刻なの? 比較対象がいないレベル?


「あ、< レスラーズ >の人たちとか……、あ、あと< マッスル・ブラザーズ >も」

「ごめん、もうちょっと他にないかな?」


 悩んで出てくるのがそれかよ。あの人たち、服装以前に服着てないから。あれでいいなら、ブリーフさんやパンダでもいい事になってしまう。


「そりゃいるんだろうけど、ツナはもう有名人だからね。どうしようもなかった最初のぞうきんはともかく、人目に合わせてちゃんとしないと。別にお金ないわけでもないでしょ」

「……そうだよな。確かにこの街に来た時に比べたら、比べ物にならない金額を稼いでるし」


 今の収入なら、わざわざ貧乏臭い安Tシャツとジーパンだけ買う必要もない。当初の目標だった日替わり定食だって、毎日どころか毎食食ったって問題ないくらいには稼いでるのだ。田舎や王都での生活を比較対象にするのはアレだが、多分、前世の大学時代よりいい生活してる。部屋広いし。

 ……関係ないが、そういえば俺、大学行ってたな……ああ、思い出した。記憶にあった東京の一人暮らしは大学時代だ。


「これから秋冬に向けて服装も変わっていくしね。ファンだってツナが格好いい方が喜ぶんじゃない?」

「ファン倶楽部の会員も増えたしな。……あいかわらず男ばっかだから、喜ぶかは分からんが」


 でも、ホモは勘弁な。実際、ファン倶楽部会員はびっくりするくらい増えたんだけど、男の割合が多過ぎる。新人戦の後で一気に増えたりしたから、純粋に冒険者としての姿を見てくれているのだと思うのだが、割合が極端だ。

 掲示板で見る限り、女のファンがいないのは怖がられてるんだと思っていたんだが、服装も原因の一つだったのだろうか。


「渡辺さん、元はいいんですから、身だしなみさえちゃんとすれば、女の子のファンだって増えますよ」


 え、元はいいって評価なの? そこは自信持っていいのかな。社交辞令とか、お世辞とかじゃないよね?


「よーし、頑張っちゃうぞ!」

「ツナ……」


 なんだよ、いいじゃん。女の子のファン増やすのが原動力でもさ。

 ひょっとして色々期待しちゃったりしてもいいんだろうか。女性ファンとか増えちゃうのかしら。




-2-




 それは唐突な提案だった。


「海行こうか」


 打ち上げが終わって二日、あの謎の会議の更に翌日の事だ。

 いつもの食堂で、ユキのリハビリを兼ねた次のダンジョンアタックはどうしようかと話し合っていると、突然現れたクロが言い出した。


「唐突だな。クロさんのマイクロビキニが拝めるなら、そりゃ行くが」

「ビキ……え、と、マイクロはともかく、ビキニは考えておくね」


 あれ、冗談だったんだけど、言ってみるもんだな。やはり、こういう事は口に出すべきだな。むっつりは損するだけだよ。


「なんで海水浴? 興味はあるけど、ボク泳げないんだよね」

「えっとね……友達がバイトしてた関係で、チケットもらってさ。そろそろシーズン終了だから、お客も少ないみたいだし、どうかなって。タダ券だよ」


 タダか。なんとも心動かされる響きだ。忙しかったからそういう娯楽的な事から遠ざかってたけど、せっかく中級ランクに昇格したんだから一日くらい羽目外してもいいよな。水着のお姉さんたちの姿を拝みに行くだけでも価値はありそうだ。クロさんもビキニ着てくれる事だし。


「というかね、この前の打ち上げでお酒飲んじゃったでしょ」

「飲んだな」


 一昨日、剣刃さんの家で打ち上げを行ったのだが、その手前まで一緒にいたクロを誘ってみたのだ。

 クロは今回のイベントとはまったくの無関係だが、剣刃さんに話してみたら面白そうだという事で許可が降りた。いや、誰がいようが構わないんだが、アーシャさんがちょっとおかしかったので、妹を連れて行っていいか悩んだのだ。

 結果としては極普通に楽しんで、試練の内容話して、クローシェにドン引きされて、剣刃さんが用意した高級酒も飲んだ。酒が駄目な奴も多かったので、一人あたりの分量は結構多く、クローシェももらったのだ。


「ボクは飲んでないけど、美味しかったんだよね?」

「うん。すごかったね。……あれはちょっとハンパじゃない」


 用意された酒はべらぼうに美味かった。一口で桃源郷に至る美味さだったので経口摂取する類の薬物じゃねーかと疑いもしたが、ヤバイ成分はないらしい。

 ありゃ確かに高いわ。ビンテージ価格とかじゃなくて、純粋に味だけでとんでもない金額になる。欠点は、他の酒が不味く感じてしまう事だな。後続で出てきた酒も高い物らしいが、あきらかに違ったもの。


「あたしさ、あまりに美味しかったから、あのお酒の事調べたんだよ。なんとか買えないかなーって」

「お前十四歳だから買えないだろ」

「いやそこはね、お姉ちゃんに買ってもらうとかね……」


 罰の悪そうな顔しているが、それはそこまで非難されるような事でもない。今回の件もそうだし、迷宮都市では厳格な法律によって売買は禁止されているが、飲んだからといってお咎めはない。

 酔っ払って問題起こしたりしたら、通常以上にキツイ罰則が待っているらしいが、身内内で飲む分には大した事でもないだろう。


「アーシャさん、やたら食いついてたから、あれって普通には買えないもんなんじゃないのか?」

「そう! ……そうなんだよ。調べたら年に数本しか出ないような貴重品でさ、まず売りに出る事が事件みたいな扱いなの」

「そりゃ貴重だな」


 誰が作ってるんだか知らないが、それは商売としてやってるんじゃないだろうな。完全に道楽だ。


「値段見て顎外れるかと思ったよ。最低落札価格百万だよ」

「…………え?」


 耳がおかしくなったのかと思った。……桁間違えてない?


「ちょっと待って、ツナたちががぶ飲みしてたあの日本酒、そんなにするのっ!?」

「……いや、それどころじゃなくて、履歴追ったら剣刃さん、五百万の即決価格で落札してた」

「ご……ひゃく」


 やべ、俺三分の一くらい飲んでるんだけど。……百六十六万えん……。

 ま、まあ、剣刃さん金持ちだしね。金の使い道とか無さそうだから。……俺たちのお祝いなわけだし、いいよね? しかし、そんな値段の酒が存在するとは……。迷宮都市の物価が分からなくなってきた。


「どんだけだよ。……ユキ、お前地球での酒の最高価格って知ってたりするか?」

「いや飲んでたわけでもないし詳しくもないけど、ビンテージワインでも数十万で高いほうでしょ。極端なのだと、数百万いくのかな……」


 俺はビールとか安酒ばっかり飲んでたから詳しくないが、そのレベルだよな。

 ワインのギネス記録とかだと有りそうだけど、日本酒ならそこまでいかないはずだ。少なくとも俺は聞いた事がない。


「でも、アーシャさんの収入だったら普通に買える値段だろ」


 上級の肩書は伊達じゃない。年収からして、普通に買える値段だろう。あんなに食いつく理由が分からない。


「買えるだろうけど、多分、希少性が問題なんだろうね。過去の履歴追っても、出たらまず即落札されてるんだよ。しかも、出品時期がバラバラだし」


 オークションなのに全部即決でござるか。そりゃやべえ酒だわ。買えさえすれば、値段争う気ないって事じゃねーか。


「タイミングが合わないと、金があっても買えないって事か。……それなら分かるが、そんなんだともっと高くなりそうだけどな」


 毎回即決されるなら、出す度に値段が釣り上がっててもおかしくない。


「それ、ダンマスが出品してるんじゃない? 名前も『団増』だし」

「……ああ」


 それならありえそうだな。……"だんます"って読むのか。……あいかわらず、適当な名前だな。実はゴブタロウとかテラワロスもあの人が命名したんじゃねーか。

 となるとあれか、自分で作ったのか? でも、日本酒の製造技術なんてないだろうし、そんなはずないよな。……何か特殊な力を使ってるんだろうな。まさか、ボーナスでもらったりする奴とかいたりして。


「ともかく、無関係のあたしが飲んじゃったからさ、何かお詫びでもできないかなって思ったんだけど、こんなのくらいしかなくてさ。お金払うのも何か違うしね。……そもそも払えないし」


 それでタダ券引っ張り出してきたと。気にする必要ないんじゃないかって思うけど、色々考えた結果なんだろうな。


「気にしなくていいと思うんだけど」

「気にするよー。ヘタしたら今の年収飛ぶ値段だよ。ユキちゃんたちは中級に上がったから全然違うだろうけど」


 下級の稼ぎは安いからな。< アーク・セイバー >とかは下級でも給料制で結構もらってるらしいけど、そんなの極わずかだし。中級でもそんな酒買うほどはもらえないけどな。


「でも、それならまず剣刃さんに言うべきじゃないか?」

「剣刃さんは『じゃあ、あの酒飲んだ事をアーシャに言って煽っておいてくれ』って言ってた。……どうしよう。やらないわけにいかないんだけど。……すごく怖い」


 ご愁傷さまです。

 アーシャさん眼の色変わってたからな。クローシェ対アーシェリアの裏新人戦が始まりかねない。きっと何も言わなければ剣刃さんも気にしなかったのに。


「ユキだったら、そういう煽り得意だろ。何か教示してやれよ」

「ツナはボクの事をなんだと思っているんだ……。まあいいけど」


 ええんか。


「お、お手本をお願いします。できれば、あ、あたしの立場と口調で。あまり怒られないような感じで……」


 難易度高いな。煽っておいて怒られないようにとか。


「そんなにヘイト溜めない感じだよね。えーとね。じゃあ、マイルドな感じで……『この前お姉ちゃんの代わりにツナ君たちの打ち上げにお呼ばれしちゃったんだけどさー、そこで出たお酒がすっごく美味しかったんだけど、お姉ちゃん知ってる? 多分お姉ちゃんだったらああいうのたくさん飲んでるんだーって思うと、頑張らないとなーって思ったよ。思わず半分くらい飲んじゃった。てへっ』……っていうのはどうだろう」


 本当は全然違うのに、お姉ちゃんの代わりにお呼ばれしたっていうのがミソだな。

 まさかこんな事くらいで怒らないよねって予防線を張りつつ、実はお前分かって言ってるんじゃねーかって感じになっている。……だって、酒の名前言ってないって事は知ってるって前提だもんな。そして、最後のてへってのがまたムカつく。


「それじゃ、お姉ちゃんに殺されるよ! ……そもそもあたし、そんなに飲んでないし。……あんまり覚えてないけど、飲んでないよね?」

「量はそこまででもないな」


 俺はちゃんと覚えているが、クロは日本酒用の小さい器で四杯だ。結構飲んでるが、少なくとも三分の一は飲んでない。


「半分っていうのは煽るためのジョークとしてさ」

「これに関してはそんなジョーク通用しないと思うんだけど……。あー、< 流星騎士団 >の人にこっそり聞いたら、あれお姉ちゃんに持っていったら倍額で買ってくれるとか言ってたんだよ。それくらい好きだって事だよね」

「最悪、次に出品された時にお前が即決して持っていくんだな。いい小遣い稼ぎじゃないか」

「五百万も貯金ないよ……」


 家が金持ちでも小遣いはさほどでもないのかな。そこはまあ、……頑張れ。


「話戻すけど、このチケット、明日だけなんだね」

「明日から明後日までの泊まりだよ。最終日のしかもらえなかったんだけど、最終日の次の日もいていいって。ほとんど貸し切り。今日の今日っていうのもアレだから、お願いしたらOKもらえた」


 そりゃすごい。ビーチ貸し切りなんてなかなかできないぞ。


「他に行く人って決まってるの?」

「打ち上げにいた人たちには、ここにいる三人以外声かけたけど、サージェス以外はみんな用事あるみたい。ガウル君以外は興味ありそうだったけど。ウチのパーティメンバーは私以外に三人来るし、女の子率高いよ」


 女子率云々はユキにはあまり関係なさそうだが、それは素晴らしい。


「フィロスも行かないとなると、ゴーウェンもパスか?」

「…………」


 全然喋ってないが、実はこの場にはもう一人いる。寡黙な力持ちのゴーウェンさんだ。

 さっきから何か無言で耐えるような表情だが、どうしたんだろうか。……腹痛いのかな?


「……ぜ、是非、行かせてもらう」

「え……しゃべ……」


 案の定、クロはゴーウェンが喋った事に目を丸くしていた。

 そりゃびっくりするよね。……つーか、なんでこの場面よ。何がお前をそこまで駆り立てたんだ。海にロッテ戦に匹敵する何かがあるというのか。




-3-




[ 海水浴場 サンライト・アクアビーチ ]


 さて、海水浴場と言う名のダンジョンまでやって来たわけだが、中身はまるっきり海水浴場だ。

 普通の海水浴場との違いといえば、入口の巨大施設がワープゲートに繋がっているくらいである。

 この建物は海水浴に必要な道具の販売、レンタル、イベントホールやホテルなどが組み込まれた総合施設らしい。転送施設からすぐなのに何故ホテルがあるのかというと、ダンジョン区画以外だと単純にゲートの距離が離れている事、リゾート地から現実に戻りたくない人のためだろう。

 俺たちが今日泊まるのもここのホテルだ。スイートルームとかではないが、わりといい個室である。すぐ帰れるけど、そりゃ泊まるよね。

 前世なら車で何時間もかけて移動したり、電車を乗り継いだりする必要があるのに、ここは移動時間も一瞬だ。素晴らしい。クランハウスのウチからなんて、屋根続きで徒歩数分である。なんなら、忘れ物を取りに戻る事だって可能だ。

 周りを見ると親子連れが多いが、ここなら家族サービスをしなければいけないお父さんもかなり楽ができる事だろう。ホテルなら家事する必要もないし。


 さて、まずやらなければいけない事は水着の準備だ。買っても良かったし、ここにも売っているが、今回はレンタル品で済ませてしまおうと思う。女性陣とユキは自前の物があるという事で、すでに着替えに行ってしまった。ここにいるのは俺とサージェス、ゴーウェンという暑苦しい男三人だけだ。


「さて、どれするかな……っていっても、男はそんな選択肢ないよな」


 目の前にはたくさんのレンタル水着が飾られているが、どれでも値段は一緒だ。

 男性用なんて違いは柄くらいで形状に大した違いはないと思うんだが、種類はたくさんある。つい先日センスについて突っ込みを受けてしまったばっかりなので、今日は店員さんに似合いそうなのを選んでもらう事にしよう。


「リーダーはトランクス派ですか?」

「そうだな。迷宮都市来てからは下着もずっとそうだ。前世でもトランクスだった」


 ゴーウェンはレンタル品でサイズが合うパンツがないため、倉庫から引っ張りだしてもらう必要があるそうだ。先ほど店員さんに連れられてサイズを測りに行ってしまった。


「突っ立ったままだけど、サージェスはどんな水着を着るんだ?」

「え?」


 あれ、俺何か変な事聞いたかな? なんでこいつ、何言ってるんだろうって目で俺を見るの?


「お前、まさか……着ないつもりなのか?」

「ええ、まあ」


 ええ、まあ、じゃねーよっ!!


「何言ってんだよっ!! ここはダンジョンだが、一般施設扱いだから捕まるぞっ!!」

「ほら、ヌーディストビーチというものもあるそうじゃないですか」

「ここは違うっ!! さっさと選べっ! なんなら俺が選んでやるから。……お前はブーメラン派だよな」


 《 パージ 》した時、大体ブーメランパンツだし。


「ちょっと思ったんですが」

「……なんだよ」


 また、ろくでもない事じゃないだろうな。……ろくでもない事なんだろうな。


「顔隠せば大丈夫じゃないですかね? それに、より興奮しそうな気が……フルフェイスのヘルメットとか」

「何を言っているんだ、お前は」


 どえらい不審者じゃないか。誰だか分からないから大丈夫ってレベルじゃない。危険人物過ぎて、そのまま逮捕コースだ。やっぱり、こいつ元に戻らないほうが良かったんじゃないかな……。


「では……」

「では、じゃない! お前は普通の水着を着ていけ。ほら、あの一番布地の少ない奴でいいから」

「くっ……仕方ありません。ここはリーダーに免じて引いておきましょう」


 仕方なくねーよ。極当たり前の事だ。嫌だぞ、逮捕されたお前引取りにいくとか。

 ほとんど股間部分しか隠れてないこれで我慢しなさい。ほら、無駄にシースルーでオシャレだぞ。少なくとも俺は恥ずかしくて履けないレベル。


「何かの拍子に《 パージ 》してしまうかも」

「お前、ほんとに止めろよ! 迷宮都市から追放されかねないからな」


 勘弁してくれ。ビーチバレーで球受けた拍子に《 パージ 》とか洒落にならんからな。

 いつか動画で見たボクシングじゃないんだから、やるんじゃないぞ。いいか、フリじゃないからな。



 そんなこんなで俺たちは水着に着替えて、海へと繰り出した。水着選ぶだけでも一苦労である。

 焼けつくような日差しがジリジリと肌を焼く。同じ夏なのに、これまで迷宮都市で浴びていたものよりも強い日差しだ。おそらく、リゾートの環境として最適化されたものなのだろう。日本の海水浴場のようなジメジメした感じはしない。そう、これはまるで[ 灼熱の間 ]……って、たとえですげえ嫌な思い出が蘇ってしまった。ガウルと二人であの地獄を彷徨ったのはほとんどトラウマだぞ。


 しかし、ここはあの地獄と違って景色がいいな。たゆんたゆんなお姉さんたちがキャッキャしてる。素晴らしい。なんていい場所なんだ。あの上下運動なら、一日中眺めてても飽きなそう。

 これで、隣に立っているのがサージェスじゃなければナンパしに行ったのに。……いや駄目か。他に女の子いっぱいいる状況で何しようとしてるんだ、俺。よし、来年は餌としてフィロスつれてナンパしに来よう。そうしよう。夢とかいろんなところが膨らむよね。


「他の方はなかなか来ませんね」

「女の着替えは長いからな。……ユキはどうだか知らんが」


 俺たちの方が遅く着替え始めたのに、女性陣はまだ来ない。待ちぼうけだ。ついでにユキもいない。ゴーウェンもパンツが見つからなくて遅れてる。

 何故、この炎天下で変態と二人きりで立ち尽くさねばならないのか。


「しかし、こんな時はサングラスはいいですよね。持ってきて正解でした」


 サージェスは最近兎耳からもらったグラサンにハマっている。複数もらったらしく、何故か俺もかける事になってしまった。


「グラサンはいいんだが、これかけづらくないか? 耳に掛ける部分がないんだが」

「頭に耳がある獣人用の特注品ですからね。そこはしょうがないでしょう」


 あんまり人間と見た目変わらないのに、実際は結構違うもんだ。似ててもちゃんと違う生物なんだな。



「おまたせしましたー」


 声をかけられたのは、女性陣が来るはずの方向とは逆の背後からだ。ゴーウェンではない。どこか聞き覚えのある声だが、女の声である。


「むふふ、この私を置いてけぼりにしようとしても、そうはいきません。トマトちゃんはどこにでも現れるのです!」


 振り返るとトマトさんが仁王立ちしていらっしゃった。 ……なんでいるの?


「あ、ごめん」

「あれ、素直に謝られるとは……」

「存在を忘れてた」

「ひどいですねっ!?」


 いや、マジで忘れてたから対策もしていなかった。呼ぶ呼ばない以前に頭になかったわ。

 元々はこないだのイベントの打ち上げの打ち上げだから、こいつまったく関係ないし。


「つーか、なんだお前その格好」

「むふふ、センパイもあたしのこの愛らしさに気づいてしまいましたか。センパイの好みど真ん中のスクール水着です」


 美弓の着ているのは、どちらかというと創作の世界のほうが多く見かける機会の多いスクール水着だ。……なんでスク水よ。お前、学生ですらないだろ。

 胸部に書かれた『みゆみ』という名札がまたあざとさを際立たさせている。狙って着てますよと言わんばかりだ。そして、その名前の文字が一切歪んでいないのが悲劇だ。まっ平らである。いくらなんでもお前……十四歳なのに。


「え、なんでそんな哀れんだ表情なんですかっ!?」

「だってお前……」


 そんな悲しい事を俺の口から言わせるのかよ。


「布地が多いですね。同志としてはもうちょっとこう……九割五分ほど面積を減らしたほうが」

「一緒にしないで下さいっ!! これの5%って、ほとんど何も残らないじゃないですかっ!! というかなんですかその水着! 股間部分以外スケスケだし、ほとんど履いてる意味ないじゃないですか」


 これでも妥協したんだよ。こいつにとっては大譲歩なんだ。


「そうですよね。やっぱり脱いだほうが……」

「ギャーッッッ!!」


 何コントやってんだ。サージェスも脱ぐんじゃない。


「それで、なんだよその浮き輪は。狙い過ぎだろ」

「なんとここで衝撃の事実がっ! トマトちゃんは泳げないのですっ!!」

「威張る事じゃない」


 実用かよ。そういやこいつ、前世でもカナヅチだった。浮く脂肪がないんですとか、いつも自虐ネタ言ってたな。


「というかだな、何を勘違いしてるか知らんが、俺はスク水フェチじゃないぞ」

「えー、そんなー。前に部室でスク水の女の子が出てたエロ漫画ニヤニヤしながら読んでたじゃないですか」

「あれは俺のじゃなくて、ハムが持ってきた本だ」


 読んでたのは否定しない。

 ……あれ、ハム? 口に出すまで存在を忘れてたが、サラダ倶楽部にはそんな奴もいたな。

 確か、ネタのために体を張るヨゴレ芸人のような奴だった。アグレッシブなデブで外見はいかにもオタさんだが、ネタのためだけに体を鍛えていたのだ。この分だと他にも忘れてる奴いそうだ。

 二次元への造詣も深く、よくマヨネーズとエロゲー談義をしていたのを覚えている。こいつが言ってるのは、あいつが持ってきたエロ漫画の事だろう。中にはスク水ものもあったはずだ。

 ちなみにキャベツも色々本を持っていたが、あいつのは特殊過ぎて俺にはついていけなかった。そこはいくら俺でもストライクゾーン外なんだ。むしろビーンボールや。


「あれは確かにスク水ではあったが、たゆんたゆんな子が着ていたから何も問題ないのだ」


 むしろ、それが良い。はち切れんばかりの肉体をスク水に押し込める、そのアンバランスなシチュエーションが燃えるのだ。


「くー、あいかわらず巨乳好きですかっ!」

「いや、そうでもないよ」


 あればあったでいいけど、なければないでもOKよ。可愛いければいい。あたし巨乳なのーって言うおデブさんよりは胸なくてもスレンダーな子のほうがいいし。


「じゃあほら、ミユミちゃんでーす」

「変なポーズを取るな。乳の有無はともかく、そこまでの幼児体型は不可能だ。小学生じゃねーか。しかも低学年」


「しょ、小学生じゃないですー。十四歳だもん!」


 あ、それに似た台詞、前世でも聞いた。懐かしいな。十六歳の時だっけ?


『しょ、小学生じゃないですー。十六歳だもん!』


 確か初めて会った時の台詞だ。台詞の内容は大して変わっていないのに、言ってる人の体はより貧相になっているでござる。


「何大声で頭悪い会話してるのさ」

「あ、ユキちゃんさんだ」

「ミユミさんも来てたんだね。偶然?」

「情報を手に入れたので追いかけてきました!」


 ストーカー自白ですか。ここまで堂々としてるのをストーカーと呼ぶかどうか分からんけど。


「その格好だと、お前泳がないの?」


 ユキが着ているのは水着ではない。ホットパンツとシャツの上にパーカーだ。


「泳げないしね。それに何着ればいいかも分からないし。……一応下には水着着てるよ」


 ユキの身体的な謎は膨らむばかりだな。鉄壁だ。YMKの人たちとか妄想が捗ってしょうがないんじゃないだろうか。あの人たち、実はここに来てたりするのかな。普通の格好だと見分けつかないんだよね。


「あれ……ユキちゃんさん、ブラしてる」

「あ、バレた?」


 え、マジで。 どういう事なの?

 見たら、分かりづらいがシャツの下に下着……いや水着が透けて見える。


「あ、あんまジロジロ見ないでよ」

「いやだってお前……」

「私もグラビア撮影の時に着ける事がありますよ」

「サージェスと一緒にしないでもらえるかなっ!?」


 この際、この変態さんが何着けてようがどうでもいいんだ。ここで問題なのはユキさんである。

 ……そんなところまで変わっているというのか。20%とはそこまでの違いだったのか。


「ちょいと失礼」

「ギャーーーーっ!! な、何いきなり触ってるのっ!?」


 おいこら、トマトさん何してんの。けしからん。お兄さんとちょっと代わりなさい!


「馬鹿な……あたしよりある」

「へ? ……ああ、うん、そうかもね」

「ガッデムっ!」


 つまりトマトさんはユキ20%より格下という事か。……これが格差社会というやつか。

 しかし恐るべしユキ20%……これでまだあと四回も変身を残しているというのか……。100%になったらどうなってしまうというんだ。




-4-




 それからゴーウェンも到着し、クロやその友人たちと合流。各々バラバラに行動を始めた。

 模擬戦をやっているような仲なので自己紹介も今更だ。ほとんど顔なじみである。顔なじみだからサージェスの格好を見ても、今更という感じで大した反応はない。

 みんな冷たい目を送っていた。サージェスはそれで余計に盛り上がっていたが。


 クロは律儀に結構際どいビキニを着てきたので、周りに囃し立てられながら恥ずかしがっていた。

 俺はもちろんガン見だ。照れても容赦はしない。射抜くような視線で、意外……でもないが、スタイルのいい肉体を堪能させてもらった。どこかの赤い野菜とはえらい違いである。

 その野菜は終始俺の周りをウロチョロしていたので、みんなに紹介する羽目になってしまった。

 そこら辺の客の子供という事で強引に押し切ろうとしたのだが、騒ぎ立ててうるさかったのだ。ギャーギャー喚くな。


「クロはもうちょっとこう、激しい動きのある事をやらないか。ビーチバレーとか一緒にやろうぜ」

「やめてよっ! 勢いで着てみたはいいけど超恥ずかしいんだからっ!」


 いいじゃん。世の中にはなくて嘆いてる奴もいるんだぞ。そこにいる野菜さんとか。


「何か色々やってるよね。バレー大会とか出てみようか」

「今日最終日だからね。いろんなイベントやるみたい。夕方までずっとだよ」


 ビーチでは今日が最終日という事で記念イベントが多く、ビーチバレー大会や、水泳大会などにも参加して夏の海を堪能する。スポーツ競技は何やら空気の読めないプロっぽい人たちが大活躍していたのでほとんどが一回戦負けだったが、そんなイベントがなくても楽しめた。

 ユキと海の家で微妙に美味くないラーメンを食ったり……。


「あんまり美味しくないね。なんかちょっと伸びてるし……」

「いや、これがいいんだ」


 模擬戦にはあまり出てこないゴーウェンが、女性陣にその巨体を珍しそうに触られて彫像になったり……。


「ねえねえ、腕ぶら下がってみてもいいかな」

「すごー、ビクともしない」


 サージェスが危ない競技に参加して死にかけたりと、充実したバカンスだった。


 日が落ちるのが早く感じる。楽しい時間はすぐに過ぎ去っていく。

 苦しい訓練や試練はあんなにも長く感じたのに、こんなキャッキャウフフなイベントはあっという間だ。ほとんどダイジェストである。楽しい時間だったから過ぎるのが早いというだけで、大した描写がないのにそれ以上の理由はない。これは大事な事だ。


 あと、どうでもいい事だが、ローブを着た謎の不審者が警備員に連れて行かれるという事件があった。

 多分Yから始まる秘密組織の人だろう。……もうちょっと気をつけたほうがいいよ。



 夕方になり、ビーチの人影もまばらになってくる。そんな中で美弓が一人帰り支度を始めているのを見かけた。


「そういえば、お前のパーティメンバーは今日は来なかったのか? あのエルフさんたち」


 聞いた話によると美弓のパーティはエルフばっかりらしい。しかも女の子ばっかりだから、参加してたらさぞかし女子率が上がった事だろう。


「あたしもハーフエルフなんですけど。それについては、すごい今更ですが今日は内緒で来たので。……受付嬢さんにバレるとまた首輪付けられてしまう」


 首輪ってなんだ。まさか、仕事抜け出して来たのか。怒られそうなのに、なんでこんなところに来てるんだよ。


「まあ、気をつけて帰れよ。地球と違ってゲート抜ければすぐだけどさ」

「そうですね、クランメンバーや受付嬢さんに見つからないように気をつけないと……」


 交通事故や暴漢よりもそっちのほうが脅威なのか。参加していないのに第四関門って事だな。


「ってあれ、のんびりしてますけどもう閉園時間ですよ。センパイたちはまだ帰らないんですか?」

「俺たちは明日までだ。特別待遇で明日は貸し切りでござる。結構いい部屋に泊まるんだぞ」

「何それっ! ズっこいっ! クランハウスの話もそうだし、なんか色々もーアレな感じです。プンスカっ!」


 何言ってるのか分からん。ちゃんとチケットもらったわけだし、ズルくもない。


「クランハウスは正当な報酬だ。羨ましかろう」

「ぐぬぬぬぬ……。一体何をどうすればそんな事になるのか……。私は年単位で必死にGP稼いでいるというのに」

「クランハウスって、中級冒険者複数人で年単位稼がないとGP足りんの?」

「そりゃ丸々貯めればそんなにかかりませんけど、GPの用途って多いんで」


 ああ、確かにな。ギルド関連で何か購入するなら大抵はGPだ。スキルオーブだけでも際限がない。


「それに、いざ購入するとなると色々拡張したくなるし」

「クランハウスってあとから拡張できるだろ」

「初期費用と拡張費用だと全然違うんですよ……そんな事も知らないのに所有者なんて……」

「まあ、経緯についてはあとで説明してやるよ」


 あの血塗れの試練を見たらズルいとか言えないと思うぞ。


「そういえばちょうどいい。お前に聞きたい事があったんだ」

「前世の事は言いませんよ」

「それはいい」


 こういう時のこいつは、頑なだから絶対に喋らないだろう。いつもは迂闊なのに、肝心なところはボロだって出さない。聞きたいのは別の事だ。


「じゃあなんですか、スリーサイズですか」

「いや、それはもっと興味がない」

「なんでですかっ!?」


 だってぺったんこだし。前世の時より更に。……ユキ20%に負けてるんだぜ。それでバストサイズ告白とか自爆にしかならんがな。


「お前の《 看破 》は俺たちより上位の情報まで見えるよな?」

「はあ、確かに《 鑑定 》自体のレベルも高いですし、関連スキルもそれなりには覚えてますが」


 ならオーケー。前提はクリアだ。


「それで俺のギフトを見てみろ」

「スキルじゃなくてギフトですか? 構いませんが、他のスキルも見えちゃいますけどいいんですか?」

「別に隠してないし構わん。ちょっと重要な事なんだ」

「分かりましたけど、ギフトって早々変わるものでもないですよ?」


――――《 看破 》――


「とんでもない数のスキルですね。前より増えてませんか」

「そっちはいい。ギフトはいくつだ?」

「そりゃ……二つですけど」


 やはりこいつにも見えていないか。


「ならいい」

「?」


 打ち上げで剣刃さんにも見てもらったが、《 偽装 》がかかっているのか、あの謎ギフトは見えないままのようだった。よりダンマスに近い位置にいるこいつならあるいはとも思ったんだが、やっぱり駄目か。

 あとはダンマスだが……もしダンマスで見れないとなると、相当上位の権限で《 偽装 》がかけられている事になるよな。


「俺のギフトって三つあるみたいなんだ。今は見えないんだけど、読めないのがあってさ……」

「三つギ……」


――――System Alert《 ■■■■■■■■■■ 》――


 一瞬だけ、視界にノイズが発生した。


「な……んだ?」

「なんでですかっ!? 確かにぺったんこですけど、それはそれでまた需要がですね……」


 何……? 認識阻害か……いや違う、何か変だ。何か別の干渉が……あれ、俺今何を言おうとしたんだ?

 ……まあいい、とにかくこいつのスリーサイズなんか興味はないし。なんだかモヤモヤしたものが残ったままだが、こいつは今日で帰るわけだし、明日はのんびりできそうだ。


 ギャーギャー喚く美弓を適当になだめ、俺はホテルの部屋に戻った。




-5-




 二日目。海辺には他の客も海の家もない。静かなものだ。昨日最終日という事であれだけあったイベントももちろんない。

 誰もいないのをいいことに、浜辺ではクロたちが巨大な砂の城を造っているのが見える。

 転送施設の売店もここで働く職員向けの最低限しかないので、閉店後のデパートみたいな雰囲気だ。

 今日は、夕方になる前には集合して帰ろうという事になっている。


 昨日は散々泳いだので、今日は別のアプローチに挑戦してみようと思う。……釣りだ。

 前世でも今世でも一切やった事がないが、何故か釣り竿もある事だし、釣り専用のスポットもあるって事で挑戦してみようと思ったのだ。

 使うのはいつか無限回廊で手に入れたまま放置していた釣り竿。忘れた頃にやって来た伏線回収というやつである。ちゃんと持って来てたんだぜ。

 ちなみに、餌と浮きは釣りスポットで釣りをしていたおっちゃんに売ってもらった。なんか、この施設のお偉いさんらしい。ついでに簡単にイロハも教えてくれた。



「……静かだな」


 そして、始めて一時間ほどで眠くなってきた。最初の内はジーっと見つめていたのだが、引いているのか、波で揺れているのか区別が付かなくなってくる。水の透明度が高いので泳ぐ魚の姿が大量に見えるのだが、一向に食いついて来る様子がない。頭がいいのかもしれない。


「…………」


 ひたすら無為な時間が流れていく。でっかい欠伸が出そうだ。

 ……ここまで忙しい日々だったから、偶にはこういうのも悪くないのかもしれない。思い返してみれば、たった三ヶ月で激動の日々だ。変わり過ぎである。

 ここに来るまでの時間が、迷宮都市の外では同じ様に流れていると思うと変な感じだ。あまりに違い過ぎてピンとこない。いつか言ったが、別の世界にいるみたいだ。

 酒場のマスターやレベッカさんは元気だろうか。クリフさん、兄貴を買っていったオカマ貴族、兄貴は……どうでもいいや。

 もっと遡って故郷の村の連中は……そろそろ滅びただろうか。外の情報が手に入るなら調べてみてもいいかもしれない。もしも滅亡してたら、遠征とやらで一度遊びに帰ってみよう。


 ……普通の回想ならここで終わりだが、俺は更に遡る事ができる。

 地球の連中は元気でやってるんだろうか。両親や友人たち、もう名前も思い出せないけど、トマト以外のサラダ倶楽部の連中。

 俺が死んだ時の事はまだ思い出せないが、年はいってても二十代前半だ。それなら、まだ連中が生きててもおかしくないだろう。ダンマスが地球に帰りたいと思うほどではないだろうが、会えるのなら会ってみたい。少なくとも今世の故郷の連中よりは。

 ……いや、そういえばダンジョンマスターが以前、転生してくる奴等は時間は関係ないって言っていたか。江戸時代の人間がいるのなら、そんな考えは無意味だ。無限回廊の中と外と同じだ。

 それに、ダンマスと違って俺や美弓は見た目も別人だ。今更地球に行って誰かに会っても混乱するだけだろう。

 俺が生きる世界はここだ。記憶は同じでも、あの世界の渡辺綱とこの渡辺綱とは別の存在なのだ。ダンマスとは事情が違う。


「どう、釣れる? 何が釣れるのかとか全然分からないけど」


 しばらく海を見つめているとユキがやって来た。

 あいかわらずの格好だ。色気は……ない事もないが、水着に比べるとちょっと……。でも、胸が大きくなっていると聞いてしまうと、どうしてもそこに目が行ってしまう。見ただけじゃ膨らみなんて分からないけど。


「な、何? どこ見てるのさ」

「おっぱい」

「はっきり言わないでよ。恥ずかしいからやめてよっ!!」


 俺は聞かれたから答えただけだ。

 80%……いや、60%くらいになったら試しに揉ませてもらえないかしら。きっとたゆんたゆんになるよね。


「大して大きくなってないよ。まだ変化し始めだろうし、本当にちょっとなんだからさ」

「でも、トマトさんよりはあるんだよな」

「0と比べたら……そりゃ」


 0とか超ひどい。さすがに0って事はないだろうが、だいたい事実なのがまたひどい。


「トマトさんの胸じゃないが、俺の釣果も0だ」

「そっか、やっぱり素人だと難しいのかな? さっき通りすがったおじさん、フグ持ってたよ」

「フグってこんな海辺で釣れるもんなのか?」

「さあ?」


 そういえば、毒あっても食えるのか。ちょっと怖いが、チャレンジしてみたいかも。


「フグ以外だとどんなのがいるの?」

「良く分からんが、水は綺麗だから泳いでるのが見えるぞ」

「おー、ビーチとは全然違うんだね。ここだったら、潜水とかも楽しそう」


 あっちは魚が全然いないからな。

 だが、見えても魚の種類は分からない。地球にいる種類と違うかもしれないしな。こうして見てもフグなんていないんだが……。


「まさか、泳ぐ長靴とかいないよね」

「まさか……」


 ……いないよな。でも、絶対と言えないのが迷宮都市の怖いところだ。

 鉄板で焼かれるのが嫌になっちゃったたい焼きとか、出てきてもおかしくない。


「これってどれくらい待てば釣れるものなの?」

「どれくらい待てば釣れるのかも分からんし、何をどうすれば釣れるのかも分からん。あまりに退屈だったから、ボーっとして色々考えてたよ。ここ三ヶ月の事とか、王都の事とか、故郷の事とか、前世の事とか」

「そういえば、体感時間はともかく実時間は迷宮都市に来てまだ三ヶ月ちょっとなんだよね。……色々あったよね」


 こいつだけが最初からここまで一緒なんだよな。……< コブラ >さんももういないし。

 運命……って言葉は絶対に使いたくないが、それでもここまでユキに何度も助けられたのは確かだ。

 今現在のこの立ち位置に至るには、間違いなくユキが大きく影響しているはずで、こいつがいなければもっと無難な生活を送っていただろう。


「ユキ、これからもよろしくな」

「え……うん、よろしく」


 無難な生活も悪くはないが、この立ち位置だって悪くない。もしあの謎ギフトがそれに関わっているとしたら、それだけは感謝してもいい。……自分の意思がどこまで影響しているかが分からないのが一番きついな。


 あれ……そういえば美弓にギフト見てもらうの忘れてた。剣刃さんは見えなかったみたいだけど、あいつダンマスに近い関係だから見えるかもしれないんだよな。


「そういえば、これだけ一緒にいても、お前の事ってあんまり聞いた事ないよな。王都でどんな事してたとか」

「ツナの波乱の人生に比べたら語るような内容もないからね。別に現代知識無双の話とか聞きたいわけじゃないでしょ」


 お前、無双できてないじゃん。


「たとえば、トライアルで言ってたお前の婚約者ってどんな子だったんだ?」

「うーん、可愛くて綺麗な子だったよ。名前はレーネ・ローゼスタ。男爵家の三子で、ボクと同い年。……大人しくて口数も少なくて、ザ・お嬢様って感じだった。喋る時も"ですわ"とか言っちゃう感じ」


 あら、もったいない。……俺だったら間違いなく結婚しちゃうね。身分差くらい気合で乗り越えてやろう。


「何故か、最初の台詞が『結婚しましょう』だったね。自己紹介もしてないのに。……ひょっとして、結婚決まらなくて焦ってたりしたのかな」


 あれ、実はちょっと変な子なんじゃない?


「その子、お前が女になりたい事は知らないんだろ? もしも追いかけてきたりしたら、ショック受けるんじゃねえ?」

「貴族のお嬢様は追いかけてきたりはしないんじゃないかな。深窓のご令嬢って感じだから、冒険者になるような子じゃないし。……もう別の人とお見合いとかしてると思うよ。この年頃の貴族って適齢期のど真ん中だしさ」


 そりゃそうだ。途中で逃げられたとはいえ、一庶民の事は覚えてられないか。ましてや追いかけて来る事なんて……。もしも追いかけて来るにしても、迷宮都市は冒険者志望以外は入れないしな。王国貴族の権力も通用しないだろうし。


「じゃあ、一時的にでも王都に戻る気はないのか? 遠征とか」

「あー、パス。知り合いと会う可能性のあるところだったら、ボクは不参加でお願いします、クランマスター。王都に行く事があっても、ボクの事は言わないでね」

「はいはい」


 遠征はC-ランクからだから、依頼は受けられないけどな。それにまだクランマスターでもない。

 リーダーとしてもまだまだ半人前だ。……この前の試練でそれは嫌ってほど痛感したよ。



「あれ……引いてない?」

「え」


 見ると確かにウキが沈んでいる。……それどころじゃない。竿が極端にしなって、持って行かれそうだ!


「やば、すげえ大物じゃねーか!」

「そ、そうなの? 頑張って」


 ビギナーズラックってやつか!?


「重っ……! なんだこれっ!」


 ちょっと待て、これやたら重い。洒落になってない! 一般人の腕力じゃないんだぞ。冒険者の腕力でこれってどういう事だよ。ダンジョン産の特殊な竿だからなのかまだ無事だが、普通の既成品なら折れてもおかしくない。


「まず、い、引っ張られる……重過ぎる……っ!!」


 徐々に脚が引き摺られていく。このままだと海へダイブコースだ。


「ちょ、ちょっと待って、後ろから支えるからっ!!」


 ユキじゃ軽過ぎるから意味がないと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

 俺の体にしがみつき、後ろから引っ張る事で、わずかながらでもこちらが優勢になった。体重がなかろうが、冒険者パワーである。さすが。

 ついでに何か当たる感触がないか背中に神経を集中させるが、微妙過ぎて良く分からない。くそっ、なんてこった。

 魚も黙ってはいない。負けじと力をかけてくる。海面を見ても、何故か魚影がはっきり見えない。ただの黒い影だ。なんなんだよこの魚。鮫とか鯱かよっ! まさか鯨じゃないだろうなっ!! くそ、腕はともかく、足場がヤバイ。体重が足りない!


「ツナ! 腕、腕っ! 塔のてっぺんでっ!!」


 何言ってるのかと思ったが、そうか、[ 尖塔の間 ]の……。


「くぉのおおおっ!!」

――――Action Skill《 瞬装:童子の右腕 》――


 《 瞬装 》で< 童子の右腕 >を展開し、重量を加算する事で引き摺られるのが止まった。

 これなら体重差によるハンデはない。腕力だけの勝負だっ!! < 童子の右腕 >の重量と《 怪力 》があれば、鮫だろうが鯨だろうが釣り上げてやるっ!!


「うぅらああっっ!!」


 竿を通して強引に力をかけ、獲物を引っ張り上げる。間違いなく大物だ。

 巨大な飛沫を上げ、獲物が宙に舞い上がる。逆光で見えないが、でかい。俺よりもデカイ。

 獲物は俺たちの立つ岩場を飛び越えて、そのまま後方へと落ちた。


「な、何あれ……」


 釣れたのはパンダだった。


「なんでだよっ!!」

「く、クマ?」


 クマじゃねーよ。いや、熊だけどさ。なんでお前までそんなに混乱してんだよ。一体全体どういう事になれば海でパンダが釣れるんだよっ!!


「おいこらパンダ。海で何してやがった」

「く、クマ?」

「は、話通じないんじゃないかな」


 くそ、思わず話が通じるものとして接してしまった。マイケルは話せないまでも通じてたが、こいつはどうなんだ。


「何があったの? ものすごい水飛沫上がったけど」


 ビーチからこちらのただ事でない状況が見えたのか、ギャラリーが集まってくる。その中にクロが混ざっていた。通訳確保だ。


「お前、パンダと意思疎通できたよな。こいつが何者か聞けるか?」

「パンダと意思疎通とか……あれ、この子ミカエルじゃないかな」

「クマっ!」


 その通りと言わんばかりに声を上げるパンダ。誰だよミカエルって。どこの天使様だよ。というか、やっぱり意思疎通できてるじゃねーか。


「ふむふむ、訓練してたらいきなり針にかかってここに来たと。……どうしよう、意味分かんないんだけど」


 俺も意味分かんねーよ。訓練って会館の訓練場の事か? この釣り竿は空間を越えてしまうというのか。


「で、そのパンダ何者なんだよ」

「この子、マイケルのパーティメンバーなんだ。一昨日、紹介してもらったの」


 あいつの仲間なのか。全然見分けが付かねえ。あえて言うならマイケルより声が高いが、グラサンとかワンポイントアピールが必要じゃないかな。


「大丈夫? ここから帰れる?」

「クマー」

「ゲートまで送れば大丈夫っぽいから、連れて行くよ」

「お、おう」


 そろそろクロさんのコミュ能力が理解できないレベルに達しつつある。あいつ、身振り手振りもなしに、『クマ』としか言ってないぞ。


「何が起きたんだろうね」

「全然分からん」


 クロはパンダを連れてゲートのある建物に向かっていった。

 パンダ三匹で組んでるとか言ってたし、まさか、もう一匹も出てくるんじゃないだろうな。

 ……出てくるのはいいが、普通に出てこいよ。心臓に悪い。マジでびっくりした。




――――● 今日の成果:海水浴場でパンダが釣れた。




< ステータス報告 >

 冒険者登録No.44421

 冒険者登録名:サージェス

 性別:男性

 年齢:22歳

 冒険者ランク:D-

 ベースLv:34

 クラス:

 < 格闘家:T.Lv65 >

  ├< 武闘家:Lv33 >

  └< 蹴撃士:Lv32 >

 二つ名:< 歩く猥褻物 >

 保有ギフト:《 ドMの星 》《 被虐体質 》《 中度露出狂 》《 ドSの目覚め 》New!

 保有スキル:

 《 肉体補正:T.Lv5 》

  ├《 生命力強化:Lv2 》

  ├《 生命力増幅:Lv1 》

  └《 柔軟性強化:Lv2 》

 《 感覚補正:T.Lv1 》

  └《 平衡感覚強化:Lv1 》

 《 跳躍:T.Lv3 》

  ├《 ハイ・ジャンプ:Lv2 》

  └《 ブースト・ジャンプ:Lv1 》

 《 跳躍技:T.Lv5 》

  ├《 フライング・ボディプレス:Lv1 》

  ├《 飛竜翔:Lv2 》

  └《 ドラゴン・スタンプ:Lv2 》

 《 格闘技:T.Lv1 》

  └《 マッスル・ガード:Lv1 》New!

 《 射撃技:T.Lv1 》

  └《 ホーミング・シュート:Lv1 》New!

 《 打撃技:T.Lv3 》

  ├《 ダイナマイト・インパクト:Lv3 》

  └《 ジャスト・インパクト 》New!

 《 拳撃技:T.Lv9 》

  ├《 ハンド・スピード:Lv1 》New!

  ├《 マッハ・ジャブ:Lv2 》

  ├《 ワン・ツー・コンビネーション:Lv2 》

  ├《 ライトニング・ナックル:Lv2 》

  └《 マグナム・ストレート:Lv2 》

 《 蹴撃技:T.Lv15 》

  ├《 フット・スピード:Lv2 》New!

  ├《 追襲撃:Lv2 》

  ├《 ドロップキック:Lv2 》

  ├《 ローリング・ソバット:Lv2 》

  ├《 サイクロン・ソバット:Lv1 》

  ├《 トルネード・キック:Lv4 》

  ├《 トルネード・ターン 》New!

  ├《 弾丸の如く 》New!

  └《 パリィイング・キック:Lv2 》

 《 変換:T.Lv1 》

  └《 HPダメージ変換(快楽):Lv1 》New!

 《 鑑定:T.Lv1 》

  └《 看破:Lv1 》New!

 《 ポージング:T.Lv3 》

  ├《 マッスル・コントロール:Lv1 》New!

  └《 魅惑のサイドチェスト:Lv1 》New!

  └《 優雅なダブルバイセップス・フロント:Lv1 》New!

 《 筋肉魔術:T.Lv1 》

  └《 ブライト・マッスル:Lv1 》New!

 《 特殊性癖 》

  ├《 拷問車輪大好き 》

  ├《 串刺し大好き 》

  ├《 暗闇大好き 》New!

  ├《 引き裂き大好き 》New!

  ├《 拘束大好き 》New!

  ├《 緊縛大好き 》New!

  ├《 鼻フック大好き 》New!

  ├《 消化大好き 》New!

  ├《 火炙り大好き 》New!

  ├《 水責め大好き 》New!

  ├《 鞭叩き大好き 》New!

  ├《 私を見て! 》New!

  └《 大賢者 》New!

 《 戦闘術:T.Lv1 》

  └《 キャスリング:Lv1 》

 《 趣味 》

  └《 被虐の探求 》New!

 《 変態戦闘術:T.Lv5 》

  ├《 インモラル・ブースト:Lv4 》

  ├《 インモラル・バースト:Lv1 》New!

  ├《 パージ 》

  ├《 フル・パージ 》

  ├《 ナチュラル・パージ 》New!

  └《 パージのオートナレーション 》→《 アブノーマル・ナレーション 》スキル昇華!

 《 交渉術:T.Lv1 》

  └《 条件交渉:Lv1 》New!

 《 称号 》

  ├《 悲劇の英雄 》

  └《 誇り高きマゾヒスト 》New!

 《 虚空倉庫:T.Lv1 》

  └《 アイテム・ボックス:Lv1 》New!




 冒険者登録No.45112

 冒険者登録名:ミカエル

 性別:男性

 年齢:2歳

 冒険者ランク:G

 ベースLv:7

 クラス:< パンダマジシャン:Lv1 >

 二つ名:なし

 保有ギフト:《 パンダ・キャスト 》

 保有スキル:《 熊爪 》《 パンダ・パンチ 》《 パンダ・キック 》《 パンダ・ヒール 》《 パンダ・ファイア 》



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