第5話 まるで異世界人の人物紹介を聞いているようだよ
コンコンとドアをノックする音で目を覚ました。そっか僕、部屋に入ってすぐに寝ちゃったんだね。
「誰ですか?」
「俺だ。リーダーくんだ」
なんの用かな?と思いながら、ドアを開ける。 リーダーくんは少し苦い顔をして廊下に立っていた。
「どうしたの?」
「いや、今後についてアキラくんと話したくてな」
俯きながら話す仕草も似合ってていいなぁ。イケメンだなぁ。
とりあえず彼を部屋に招き入れ、軽食が用意してあるテーブルに促した。
「ここにどうぞ」
「ああ、ありがとう」
リーダーくんが席に着いたのを見て、僕も向かいに座る。
先に座ったりしたら殴ってくるかもれない。ヤンキーだし。
リーダーくんはテーブルの軽食をじっと見ていたが、しばらくして口を開く。
「なぁ、アキラくんは転移してきたうちのメンバーのことどれくらい知ってるんだ?」
「いや、初対面だったから何も知らないよ。みんなヤバそうだなとは思ったけど」
「そうか。あいつらは歩く厄災。放っておいたらいけない。何か破壊しなきゃ気が済まない、そんな類の人間なんだ」
「えー……。確かにあの時に絡まれはしたけど、そこまでやばい人間って実感はわかないよ」
いくらやばいと言っても、そこまでは思えない。ヤンキーの範疇でしょ?
「まぁそうだよな。あいつらがどんな人間なのか説明させてくれ」
「うん。わかった」
一緒に世界を救うパーティのことは知らなきゃいけないしね! まぁ仲良くできる自信はないけどさ。
「あいつらは俺と同じ高校に通っているんだけどさ」
やっぱり同じ高校なのか! 制服同じだから必然的に僕も同じ学校だったんだよね! 引きこもっててよかった!
「まずガチャくん。チビのモヒカンでタトゥーまみれのやつなんだけど……」
ああ、僕を殴ろうとした人ね。
「あいつはコカインを売った金で高校の学費を稼いでいるんだ。中学にほとんど行ってなかったから高校に通ってみたかったらしい。でもそこまではいいんだ。俺の周りに迷惑が掛かっていたわけじゃないから。でもあいつは学校で大麻を捌こうとしていた。俺はそれに気づいてボコボコしたんだ。それから一応俺の言うこと聞くようになって、学校で大麻を捌く計画はストップしてくれたんだ」
ええ……。
「あいつは本当に高校に通いたかったみたいで、コカインが違法で良かったと笑顔で俺に話してくれた」
セリフが一緒なだけで一般人とは感性が真逆じゃないか。
「後ガチャくん自身は喧嘩弱いのに異常に喧嘩っ早くて、誰彼構わずに因縁つけるから俺らはいつも誰かと喧嘩してたよ。ヤクザと抗争になった時はヤバかったな。泥沼になって、しょうがないから最後はガチャくんの伝手でロシアから神経毒を密輸することになっちゃった。」
その後どうなったのかは聞きたくないね……。
「次はゲバラくん」
テクノカット片目隠しかな。
「彼の将来の夢は国家転覆なんだ。何よりも国家権力を嫌っていて中学生の時に警察署を襲撃して、少年院に入っていたんだ」
ええー……。
「出所後はうちの高校に入学したんだけど、革命を起こすための兵を集めるために色んなヤンキーチームを潰して従わせていたんだ。そして最後にはうちの生徒まで。だから俺がボコボコにした。それ以来革命思想は説くけど、一応俺に従ってうちの生徒に暴力を振るうことはなくなったんだ」
……。なんか話聞いてるとリーダーくんってさぁ。
「そしてハカイソウくん。」
数珠スキンヘッドマッチョね。
「彼は自分の怒り、暴力衝動を抑えることができなかったんだ。だから電車が5秒遅れるだけで車掌を半殺しにしたり、コンビニで自分がレジに並んでいるのを気付かなかった店員を血祭りに上げてたりしたんだ。ある時黒板を消し忘れていた日直に殴りかかろうしたから、僕がボコボコにしたんだ。」
なんだか……。
「心頭滅却すれば火もまた涼しって言うだろ?だから僕がハカイソウくんを仏門に下らせたんだ。そのおかげで普段はあまり怒ることはなくなったよ。基本喋らなくなったり、溜め込んでいた分、怒ったらより凶暴になったりしたけど、学校では誰も傷つけないようにしてたから問題ないよね」
ああ、やっぱりリーダーくんって……。
「最後にスナイプくん。」
ああ、残ってるのは黒髪眼鏡の敬語キャラね。
「あいつは、社会生活もうまくやった上で自分の欲求も満たしたい奴なんだ。だから表面上優等生の振りをして、プライベートで自作のスナイパーライフルで人を狙撃することが趣味だったんだ」
いや、もうそんなのさぁ……。
「リスクヘッジがうまいから、彼は同じ学校の生徒は撃たないと俺は踏んでいたんだ。だけど彼、ガチャくんを狙撃しちゃったんだよね。俺の仲間になったガチャくんをさ。だからボコボコにした。ガチャくんの左肩、弾が貫通してたよ。まぁガチャくんは私服だと高校生には見えないから間違えて撃ったのかな?って思ったんだけど、スナイプくんが言うにはどうも俺の裏の顔を確認したかったからガチャくんを撃ったんだって。裏も表もないのにね。俺は自分の守りたい人を守るだけだから。スナイプ君はもう俺に関わりのある人間は撃たないから仲間に入れてほしいって言ってきたんだ。だから了承した」
OK、リーダーくんも充分やばい人間だ。自分に関係のある人間以外はどうでもいいんだね。
「で、俺は思ったんだよ。急に人を拉致する国なんて滅びていいよね?
そう言うとリーダー君は、にんまりと笑って僕を凝視した。
引きこもり、イカれたヤンキーたちと異世界を救う旅に出る 紀田のれん @kozdy
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