34.1年経って ~エピローグ~
あれから約1年が経った。
オレとハルは高校3年に進学した。
ハルとはまた同じクラスになれて本当に良かった。これで安心だ、と胸を撫で下ろした。
そして
さて、さっきなぜ胸を撫で下ろしたか、だが。
あれからハルはどんどんと、加速的に可愛く綺麗になっていった。
白く透き通る肌にはシミやデキモノが無いのは当たり前で、さらにきめ細かくぷるんと張りがあり、吸い付くような柔らかさを両立させている。
ぱっちり二重に長いまつ毛、小さくとおった鼻、薄いピンク色で艶があり吸い込まれそうな唇、全ての表情が可愛く、そして綺麗だ。
元々美しかった長い黒髪は更に磨かれて子供の髪のように細く、柔らかく、そして艶があり、驚くほどに整っている。それに凄く良い匂いだ。
匂いと言えば胸の谷間も良い。それに顔を埋め包まれているだけでまるで天国にいるかのような気分になれる。それに首筋に顔を埋めるのも好きだ。髪とハルの匂いが混ざり合い、まるで花畑で寝転がっているかのような芳醇な香りにつつまれる。
足も細く長く、そして太く、特にお尻から太もものラインはまさに芸術品だ。
そして、これら全てを味わえるのは世界でただ1人、オレだけだという事実が最高に幸せだ。
ハルがなぜこんなにも可愛く綺麗になったかというと、元々の素材が最高なのは言うまでもないが、和日やお義母さんから化粧の仕方や肌、髪の手入れを教えて貰い、みるみる吸収していった。
元が良いから少し化粧するだけでも大きな変化があり、本人よりも周りの反応が大きく変わった。
周りの反応が変化があったというのは、一言で言うと、モテだした。
可愛く綺麗になったハル、加えて元男である事から男に対する距離感が他の女子より近く、話し方も壁をあまり感じさせない。だから男受けが非常に良いし、勘違いされる。
いつも隣にいて、ハルと付き合っている事を公言しているオレがいるというのに、ハルに告白する者が後を絶たなかった。
どいつもこいつも本気で交際を申し込んでくる。
ちなみにクラスの女子との関係も徐々に良くなっていった。オレには良い事とは思えないのだが。
女子たちにはオレ一筋である事が周知されているし、なにより群を抜いて可愛く、綺麗だからだ。
それに仲の良い友達が和日である事も大きいようだ。
次第に女子と話す機会も増えてきて、受け入れられている様子は見ていてオレも嬉しくなる。
だけど油断はしないで欲しい。ハルが傷つくのをオレは見たくない。
もしハルの心や身体が傷つけられたら、自分を抑えられる自信がない。
モテるというのは学校だけでなく、外でもそうだ。
オレが一緒だというのに、芸能事務所を名乗るやつや、モデルだとかにスカウトしてくるやつがいて、せっかく2人で盛り上がっていても水を差される事が増えた。
幸いハルはそういう事には興味が無いようで、全く相手にしていない。
他にも少し席を外しただけで声を掛けられたりもするし、本当に目が離せない。
確かに、人混みにいても目を引く、それほどに光を放つ存在である事はオレも認めるところではあるけども。
と、そんな事になっていたのでもしクラスが別れてしまった日にはオレの精神は平常を保てる自信がなかった、だから同じクラスになれてホッと一安心、というわけだ。
◇◆◇
ハルが甘えたい気分の時、身体を寄せるだけでなく、頭も寄せてくるので可愛く、分かりやすい。
状況にもよるが、人目がある時は肩を抱き寄せて安心させ、そうでない場所では頭ごと抱え込むように正面から優しく抱き締めて頭を撫でてやると、オレの背中に手を回してきて胸元や首筋に顔を埋めて更に甘えてくる。
他にもハルの家でゲームをしていたり、おしゃべりしている最中に、突然膝の上に乗ってきたり、あぐらの間に座ったりして身体と頭を預けてくる。
その時に同じ方向、つまり前を向いていればただ甘えたいだけ。
オレの方を向いていた場合、それはつまりオレを求めている時だ。
すぐに気分を切り替え、出来る限りハルを甘やかし、求めに応じるようにしている。
後は、あんまり言いたくないが、当然オレが甘える事もある。
ハルの包容力と柔らかさに包まれて、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚全てが満たされ、まどろむように心が溶けていく様は癖になる。
あれを経験したら、ハルから離れる事が出来なくなると思う。
◇◆◇
ハルとはよくスーパーに買い物に行く。
付き合いだして以降、レシピを増やす事と完成度を高める事を意識しだしたのだそうだ。
オレは無理しなくても良いと言っているのだけど、そのうち弁当なんかも作りたい、と言っていた。
弁当なんかはそれこそ冷凍惣菜なんかもあるし、と言うと、それは最後の手段だ!と言われてしまった。
そんなわけで学校帰りにはよく一緒にスーパーにお買い物に行く。
何度も来ているからか、野菜や肉、調味料なんかを選ぶ姿は様になっていて、ただ制服姿なのはなんというかこう……若奥様、幼妻って感じだ。
お義母さんとも良く来るらしく、その時は選ぶコツなどを聞いているらしい。
そして冬休み明け、とうとう弁当を持ってきた。
それもハルの分だけでなく、オレの分も含めた2人分だ。
卵焼きに小さいハンバーグ、タコさんウィンナー、ほうれん草のおひたし、たくあんの漬物、そしてふりかけのかかったご飯。
まさに理想的なお弁当、イメージする弁当がそこにあった。
聞くとやはり早起きして作ったらしい。
もうそれだけで嬉し涙が出そうだった。
友達連中からは羨望の的で、ハルちゃん俺にも!とねだっていたが、これは俺とキリだけの物だから彼女にでも作って貰え、と言っていた。
オレはその言葉だけで胸が一杯になった。本当に最高だ。
当然お弁当も最高に美味かった。
どうやら気付かないうちに涙を流していたらしく、泣くほどか、とハルにツッコまれた。
だってしょうがない、ハルの手作り弁当なんだぞ。
それからというもの、ほとんど毎日、ハルは弁当を作ってくれている。
いつもちゃんと美味しいと言う事と感謝を口にしている。
それはそうだ、事実だし、ハルの頑張りに少しでも応えたいからだ。
◇◆◇
去年の夏休み、その少し前も含めて、4回ほど水着を着る機会があった。
そのうち2回は望と和日を含めて4人で、残り2回は2人きりで。
それぞれ海とプールに行った。
オレの記憶では海やプールは女の水着姿を見に行くというイメージだったのだけど、いや、ある意味それは変わっていないのだけど、今年はずっとハルから目が離せなかった。
水着姿が美しすぎるのもあるけど、胸が大きくくびれがあり足が長い、男にとって理想的なスタイルはとても目立っていた。うん。目立っていたからな。そういう意味でも目が離せなかった。
夏休みには他にもハルがお義母さんから浴衣を貰って花火大会や夏祭りに2人で行った。
たまにはスカートじゃない、露出が少ない格好も良いものだ。
とはいえ、ハルの首やうなじには吸い込まれそうな魔力があり、事の際には首筋やうなじに吸い付きまくったのは言うまでもない。後でハルから「めちゃくちゃキスマークが残ってるんだけど!?」と怒られたのはいわずもがな。
他にもダーツを始めた。
アミューズメントにもダーツコーナーは有るし、ボーリングみたいに腕力の影響が少なく、オレとハルで差異が出ないのでハルも楽しめたのだと思う。
早々に専用のダーツを2人で買い揃える事となったのだった。
将来的にはダーツバーに行って酒を飲みながら楽しみたいものだ。
夏が終わる頃には、2人で遊ぶ時の定番はダーツとカラオケだった。
ダーツはオレよりハルの方が上手い。今のところは、だけど。
とはいえ似たりよったりなので、だからこそ楽しめているのだろう。
カラオケに関してはオレが特に楽しみにしている。
それはハルの歌声がたまらなく美声だからだ。
オレにとっての美声、耳障りが良く、聞いていてうっとりとするような、いつまでも聞いていたい、まるでセイレーンの歌声のように魅了されてしまうのだ。セイレーンの歌声は聞いた事ないけど。
そもそも普段の声からして、りんと鈴がなるような声に、しっとりした落ち着いた声、耳元で囁くウィスパーボイスなども極上で、当然あの声もオレを昂らせる最高の声だ。
まあそんなわけでカラオケはオレの楽しみの1つというわけだ。
ハルも以前は歌えなかった女性ボーカルが歌えるようになって楽しいみたいだしWIN-WINだ。
◇◆◇
夏休みが終わる頃、家族4人でキャンプに行った。
家族とは、ハル、お義母さん、お義父さんにオレの4人だ。
その頃にはお義父さんとは交際している事を明かし終え、理解してもらっていた。
オレが以前ハルと交友があった
今ではすっかり仲良くなれた……と思いたい。
そしてキャンプでは2つのテントを張って、オレとお義父さん、ハルとお義母さんに別れた。
夜はバーベキューをして、多いに盛り上がり、ハルの両親の仲がとても良好な事を嬉しく、そして少し羨ましく思うのだった。
寝る時のテントの中で、お義父さんと長い時間話をした。
ハルの事、将来の事など色々と話し合った。
このキャンプで、オレはまるでこの家族の一員になれたように思えた。
そして、将来は必ず婿になって家族になる、と更なる決意を固めるのだった。
それからは、クリスマス、初詣、日帰り旅行など、家族イベントにはお義父さんから家に呼ばれ、家族同様の扱いを受ける事になる。
「
年越し、お義母さんとハルがキッチンで準備をしている時、お義父さんはそんな事を言っていた。
加えて、
「晴人はどんどん綺麗になっていくなあ、本当は誰にもやりたくないところだが……霧矢くんなら任せても良い。ただし!! 晴人に苦労掛けさせるようならすぐにでも別れさせるからな!!」
とも言ってくれた。
オレの答えは当然、
「任せてください。必ず幸せにしてみせますから。……それにオレ、婿としてこの家に入るつもりなんで、ハルだけじゃなく、お二人にも頼ってもらえるよう、頑張りますから」
と言うと、お義父さんは涙を流していた。
歳を取ると涙脆くて駄目だな、なんて言っていたな。
◇◆◇
年明け、家族そろって4人の初詣の後、オレとハルは冬休みに2人きりで2泊3日の旅行に行った。
お義父さんの会社の福利厚生で安く泊まれる旅館があり、そこに泊まる事になった。
オレとハルの2人きりの旅行、お土産を買いさえすれば後は2人の時間を満喫出来る。
誰にも邪魔されず、誰にも遠慮は要らない、贅沢な時間。
そんな時間を、オレたちは堪能した。
贅沢で、幸せな二人きりの時間だった。
帰るのが惜しくなるのは旅行では良くある事だけど、これまでで一番その感情が強い旅行だった。
また2人で旅行行こうな、というハルの言葉にはオレも強く頷いた。
◇◆◇
3年に上がる前の春休み、ハルがそろそろバイトを始めてお金を貯めたいと言い出した。
駄目だ、と言えるはずもなく、送り迎えはオレがする。という事だけは決めた。
その時のそれなら安心だな!というハルの言葉と笑顔が眩しく、ハルの全幅の信頼を受けているオレは世界で一番の幸せ者だと実感した。
余談だが、その話をしたのは事後のピロートークという名の雑談中でハルはオレの腕の中だったものだから、すぐに火が着いて、オレがどれだけ幸せ者かという事をハルにお裾分けした。
そして高校3年のゴールデンウィークに入る頃、とうとうハルはバイトを始めた。
カフェのバイトらしく、学校帰りにそのバイトに入り、そして夜に上がる、というシフトだった。
当然送り迎えをした。
そしてお店の人にはハルに恋人がいる事が分かるようにあえて見せつけるように送り、そして出迎えた。
ハルにも恋人がいる事は言うように伝えておいた。
ハルになぜバイトをするのか、と聞いてみたら、出来れば一緒の大学に行って、そして、一緒に住みたい、という事だった。
そのためには家を出る必要があるし、今からバイトをしてお金貯める事と社会経験をしておきたいと言われ、オレは反論出来るはずもなかった。
オレはなんだかんだと爺ちゃんのスネを齧って生活をしている。
母が母だけに爺ちゃんもある程度の理解はしてくれてはいるものの、いつまでも、というわけには行かないだろう。
それに婿に行く予定もあるし。散々スネを齧っておいて、さよなら、は通らないだろうし。
そんなわけでオレもなんかバイトを始めるか。と考えるようになった。
ただし、送り迎えは続けられる前提ではあるけども。
幸い、平日は短時間の工場バイトを、休日は引っ越しなんかの力仕事の短期バイトを始める事が出来た。
これでオレも少しはマシになれるかな。
◇◆◇
そして今は高校3年の6月、付き合い初めて約1年。
だけど、オレとハルの親友としての付き合いなら小学6年、中学2年、高校で1年、合計9年だ。
長いけど、人生で見たら短いとも言える。
まだまだ人生長いけど、オレとハルならずっと一緒に幸せになれると思う。
なんせオレには、ハルの晴れ女、いや、晴れの女神がいる。
オレとハルの人生も快晴でいけるよう照らして欲しい。オレも努力するからさ。
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これでハルとキリのお話は終わりとなります。
最後にエピローグとして、2人の1年間をキリ視点での振り返りにしました。
キリにとっていかにハルが最高かという惚気と、決意だったりです。
まずは今作、今までの作品と違う感じが出せたかなと個人的には思っているのですがどうでしょうか。
振り返ると冒頭に叢雨くんにハルが襲われるのが悪い印象を受けた方がいらっしゃったみたいで、あらすじでネタバレしてるし、個人的には問題無しと思っていたんですが、中々難しいなと感じました。
他にはハルが、恋人と親友は別、と切り替える心情が上手く伝えられなかったみたいで、実力不足を感じました。
最後に、感想とか頂けるとめちゃくちゃ嬉しいです。
難しく考えずに「好き」とか一言だけで良いです。それで大喜びします。反応があればその日はハッピーデイズです。舞い上がります。「好き」ってください。
では、お付き合い頂きありがとうございました。次作もよろしくお願いします。
TSしたら口数少ないイケメン親友に歪んだ溺愛?されてます エイジアモン @eijiunknown21
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