第19話 ガイドの指導霊の歓送迎会

「今までお疲れ様でした。そしてこれからよろしくお願いします!」


 乾杯の挨拶をしたオレは今、貸し切りになったエモエモパラダイスで歓送迎会の真っ最中。 メンバーはオレ、天使さま、オレの指導霊のおじいちゃん(送られる魂)、おばあちゃん(迎えられる魂)、ニニさんとその指導霊の方の合計6魂。


 今回はオレの指導霊のおじいちゃんが、おばあちゃんに変わるタイミングが来た。


 〈アース〉のオレに変化が訪れたタメでもある。テレビ番組のディレクターの仕事をずっと続けて、仕事人間であったオレを支えてくれていたのが、指導霊のおじいちゃんだ。


 彼は以前〈アース〉で新聞記者をしており、その後、その新聞社がテレビ局になり、そのテレビ局の番組を主にオレは担当していた…という流れだ。

 

 指導霊は、アースダイブする時に〈気分調節器〉を操作しながら、〈アース〉の自我に働きかけてコントロールしてくれる係の公務員である。


 だから〈アース〉の中で仕事をする上で、非常に助かっていた所が、非常に非常に多いので、感謝に耐えないのだが、


 まあいろいろあって、職を失い、家族を失った〈アース〉のオレは、生きる環境が変わり、生き方が変わるので、〈そっちが得意〉な指導霊に交代する。


 …すなわち、おじいちゃんへのお疲れ様会と、おばあちゃんのよろしくどーぞ会という事だ。


「ほんとおじいちゃんには本当に助かった!ありがとう!取材の時とかラクラクで、おばちゃん達のふところに3秒で入れたもんね。アレはやっぱり経験者のおじいちゃんじゃないと、あーわ出来ないよ!」


「うまいだろ、ワシ!24歳の頃からだから結構たつからね。まぁ慣れたもんだよ。職人ですからワシは。」


 おじいちゃんは、いつもテンポをピッタリとユックリと正確なリズムで念じるコンだった。


 〈気分調節機〉に〈感情〉を注入する時も、正確に、ゆっくり、ぴったり同じリズムで入れてくれていたのが思い出される。


 そして反対を見れば、新しく指導霊として担当になった、おじいちゃんの奥さんの〈おばあちゃん〉がいる。どんなコンなのか気になるところだ。


「〈アース〉では同じ〈時間〉を共有した事はなかったけど、〈あなたのお父さんの目〉を通して見ていたわ。とても可愛いかったわよ。」


「そっか、、そうなんですね〜。〈父さんの指導霊〉だったなんて、意外だなぁ、あんな感じになるんだなぁオレも…」


 キリリとした雰囲気の優しそうなコンだ。


(そういえば〈アース〉でしばらくは、〈自分を見つめる〉期間だから、変化はあんまりないんだよなぁ。楽しめるんだろうか?刺激が足りない感じになったらやだなぁ。)


「しばらくは自分を見つめる期間ですから、それ相当の孤立した環境を作る所からですね。そこから少しずつバイブレーションを上げて行きましょう。もう毎日が〈瞑想〉というつもりで、やっていきましょう!」


 お婆ちゃんはテキパキした感じでヤル気満々だ。



 和気あいあいとした雰囲気で〈店を貸切にして〉盛り上がる中、その爆弾は突然現れた。


「おこんばんわ❤️ワタクシママンでスゥ〜。ダダくんがいつもお世話になってますぅ。」


 ママンさんは、うちの店にナイショで盗撮機を仕掛けているらしいのだが、それで気になって来てしまったのだろう。ステージ衣装のスズメがついたビキニ〈スワン2世〉に着替えて来たようだ。


 天使さまは、その異様な姿をマジマジと見ながら驚いている。


「まぁお母さま?それはそれは、なんとも可愛らしいスズメさんで、まるでアニマルスピリットみたいで素敵ですよ。」


 …と、多少の誤解はありつつも、笑顔で握手をかわす。


 この時の天使さまは、握手する手の下の方で揺れているスズメのクチバシが、まさかこの後、ママンさんの〈なりきりフレディマーキュルー〉の前奏で、エアーギターのピックで弾かれ、チュンチュン鳴いている様を見ることなど、微塵も予想を出来てはいなかったのだ。


 オレはこの後起きるであろう嵐の予感に、猛烈なワクワクが止まらなかった。

 

 

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アースジャンキーたちの、限りなく自由なあの世生活 ぴったりゼロ @tohmaoto

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