Day.24『朝凪』
来夢くん、今からモーニングに行きませんか?
今日の紅茶のダージリンティーを淹れようと準備をしていたところ、愛衣にそう言われた。
◆
連れられて来夢がやってきたのは、一之瀬家から自転車で十分ほどのところにある小さなカフェだった。
百日草やポーチュラカやローズマリーといった花々でガーデニングが
愛衣は軽い足取りで、入口に続く石畳を歩いていった。
雰囲気も置物のセンスも、愛衣の好みぴったりなところなんだと感じて、来夢も自然と笑みがこぼれる。
店の中は木材に白い壁と、あたたかくてやわらかな雰囲気をしていた。大きなガラス戸から庭を眺められるテーブル席に、カウンター席もある。オープンキッチンの後ろの壁には、カップ専用の戸棚があり、たくさんのコーヒーカップやティーカップが品良く並べられていた。
オープンキッチンでは初老の男性と若い女性が作業をしていて、ドアベルに反応した若い女性が声を上げた。
「あら愛衣ちゃん! おはよう!」
「おはようございます、
「あちらのお席どうぞ〜」
庭が見渡せるテーブル席に案内されると、女性がお
「愛衣ちゃん、朝からデートですか?」
「えへへ、そうでーす」
「まぁ羨ましい。今日は大ちゃんは?」
「兄さんなら
「あ〜、そっちも
軽く会釈して、女性はカウンターに戻っていった。
女性は愛衣とは三つ歳の離れた幼なじみで、一之瀬家の三件隣に住む四姉妹の長女だという。学区が違って学校は別々だったけれど、よく愛衣たちの面倒を見てくれたという。
「どれにしますか?」と広げられたメニューを、十分くらいじっくりと見て、来夢は今が旬のダージリンティー、愛衣はいつも頼むというアイスコーヒーを注文した。
◆
「あの……」
ウキウキとヨーグルトとジャムを混ぜる愛衣は「はい」と何事もないように返事をする。
「モーニングって、こんなにたくさんついてくるんですか?」
ドリンクしか頼んでいないはずなのに。
飲み物と一緒に運ばれてきたのは、五センチくらいの分厚いトーストが二枚。
どこからどう見ても立派な朝食だ。それどころか、来夢がいつも食べる朝食よりも量が多い気がする。毎朝こんなに食べられない。
「これはまだ少ない方ですよ」
「少ない?!」
思わず大きな声を出してしまった。
「はい。多いところは、もっといろいろ付いてきますからね。ドリンク代プラス百円でおにぎりやお味噌汁がついてきたり、食パン
と、愛衣はけろっとして小倉トーストを頬張った。
いや、それって本当に
――恐るべし、愛知のモーニング文化。
本日の紅茶【ダージリンティー】
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