Day.17『半年』
「今日の分終わったぁ〜」
場所を変えると勉強が
両手を組んでぐっと背を伸ばす。
冬休みが終わって約半年。明日が終業式で、明後日から待ちに待った夏休みだ。
このペースで続けていけば、数学の宿題は七月中には終わる予定だ。あとは国語のちょっと厄介な宿題を除けば、八月の終わりに焦らなくて大丈夫だろう。
それにしても、こんなところで勉強できるなんて
図書館の学習スペースは、愛衣たち学生が使いやすいように周りの本棚は教科に関する本が多い。だからすぐに調べに行きやすいのもありがたい。
椅子や机も来夢がプライベートで使っているものと比べるとシンプルな造りだけれど、机の縁がちょっとした花模様の彫刻が施されていたり、椅子も
「……これ、なんの紅茶なんだろう?」
綺麗な花の彫りが入ったグラスを持ち上げて、まじまじと眺めた。差したストローが傾いて、からんと氷が音を立てる。
今日の紅茶は、鮮やかで深い赤色のアイスティー。
紅茶じゃなくてハーブティーかな。酸味が強いけれど、レモンティーみたいな柑橘系の酸味じゃない。一気に飲んでもぜんぜん苦にならない。むしろ頭が冴えたようにすっきりとした後味だった。
「おつかれさまです」
「わっ!」
集中してじっと見ていたせいか、来夢が後ろに来たことに気づかなかった。
「あ、驚かせてしまってすみません」
「いえいえ、私の方こそすみませんっ」
「宿題は終わりましたか?」
「はい、もう充分に
「それはお疲れさまでした」
勉強の疲れで少し頭が痛かったけれど、来夢がやんわりと微笑むのを見たら、なんか吹っ飛んでしまった。改めて、私の彼氏は顔が良い。
来夢はグラスにまだアイスティーが残っているのを見ると、あ、と気づいたように瞬きをした。
「アイスティー、新しいものを入れ直しましょうか? 氷で薄まってしまってるでしょうし」
「あ、えーっと、それじゃあおかわりをお願いします。これは今飲みきっちゃうので」
ストローを使わずに、残っていたアイスティーをぐっと煽るように飲み干す。一気に喉に流し込んだものだから、酸っぱいのが喉に溜まって咳き込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか? ちょっと酸っぱかったでしょう」
「いえ、大丈夫です!」
咳が治まってから、愛衣は気になっていたことを聞いてみた。
「あの、このアイスティーって、なにかのハーブなんですか?」
すると来夢は驚いたように目を開いて、嬉しそうに微笑んだ。
「その通りです。今日の紅茶、ハイビスカスティーなんですよ」
返ってきた答えに、今度は愛衣が目をぱちぱちと瞬かせた。
「ハイビスカスって、あの南国の花ですか?」
「そうですよ」
「へぇ〜、あの花、飲み物になるんですね」
「昔からエジプトでよく飲まれていたそうなんです。クレオパトラも
へぇ、と感嘆の息しか出ない。エジプトの人達が飲んでいたということは、なるほど、これは夏にピッタリな飲み物だ。
「もしよろしければ、おかわりには蜂蜜を入れたものを用意しましょうか?」
「わ、それも美味しそうですね! お願いします」
本日の紅茶【ハイビスカスティー】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます