エピローグ

 私の両親は、私が小さい頃から仲良くなかった。仲良くなかったというよりかは、考え方が互いに真反対だった。

 中学三年生のある日、お母さんとお父さんは、私の歯並びを矯正するかしないかで喧嘩した。いつもなら一日で自然消滅する喧嘩が、今回は一週間近くずっと続いていた。

 お母さんは、私が女の子だから、私の外見に気をつかってくれたのだろう、矯正派だった。お父さんは、私の矯正したくない意と金銭面を考えた、反対派だった。

 どちらも私の事を気遣ってくれているんだと分かったが、この喧嘩がきっかけで離婚が遂行されたのだから、全然嬉しくなかった。

 離婚したあと、お父さんはいつもより私を愛情深く育ててくれた。

 でも、当時の私は、離婚、という、非日常的な出来事によりショックを受けており、一年間ぐらいは引きずった。

 その一年間の間にお父さんは死んだ。

 私は、学校で女子にいじめられていた事もあり、この頃から自殺を考えていて、中学校の理科室から硝酸のビンを盗んできた。家に帰り、その硝酸を、コップに注いだ水に入れ飲もうとした。

 が、やっぱり死ぬ勇気はなかった。私は臆病だった。結局そのコップに口をつける事はなかった。

 そのコップの水の処理を忘れてしまった。お父さんはその水を飲んでしまい、死んでしまった。もう、私の精神はどうにかなってしまいそうだった。


「いや、あの、すいません。なんか、危なそうだったから」

 危険と言われているケダモノの山を登ってみたが、ケダモノに会う事はできなかった。でも、ちょうど良い崖は見つかった。

 そこで飛び降りようとした時に彼が私の手を引いて助けてくれた。

 彼の目はおどついていたが、純粋だった。私を助けるために、私に近づいてきてくれた。体目当てで無理に近づいてくる男とは違って。守田せいやは信用できる、会ったばかりだけど、そう思った。そう思わせるオーラはあった。


12月25日

「メリークリスマス!」

「めりくり」

「せいや、なんかテンション低くない?」

朝の七時に電話をかけたら、せいや、出てくれた。こんなに朝はやいのに。

「用件なに」

「私たち、結局ご飯まだ行っていないよね」

「え、昨日、マーケットでいっぱい食べたじゃん」

「あれは、屋台! ちゃんとしたレストランがいい!」

「たとえば?」

「三つ星レストランとか! なんちゃって」

 ぷちっと電話が切れた。流石に怒らせたかな。後であやまろ。

 よし、今日も生きるか!

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初めて湧いた情 春本 快楓 @Kaikai-novel

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