結婚しちゃった。でも、精霊たちがやらかした
疲れた。
前世含め、こんなに疲れたのは初めてだ。
今日ね、私とフランツの結婚式があったの。
国王夫妻がご臨席なさるもんだから、それはもう盛大で豪華な式だった。
本来は教会で来賓立会いの下に結婚式するんだけど、教会本部の大司教が祭具を持ち込んで、公爵家の庭に豪華な祭壇が組まれちゃったの。
だから来賓が多く立ち会えるんだけど、さすがに数百人は多すぎでしょ。
公爵家の広い庭に、あちこちから借りて来たテーブルが所狭しと並び、他家から応援を頼んだ給仕やメイドさんたちがお茶をサーブして動き回ってたよ。
今は曇り空だけど、もし雨が降ったら私が雨除けの盾魔法を展開できるからこそ、このガーデン式結婚式になったんだけどね。。
私はこれでもかってくらい飾り付けられ、王都教会本部の大司教の前で、フランツと夫婦の誓いを立てる段になったら、雨がぱらつき始めたの。
私はすぐさま盾魔法を会場全体に張ったから式はそのまま続けられたんだけど、なんと公爵家上空の雲が穴が開いて広がりだした。
そして公爵家の上空だけ、ぽっかりと広がって見えるきれいな青空。
魔素感知で精霊たちが会場内を飛んでるのは気付いてたよ。
でも上空に上がって行ったから、見えない高度まで上がって帰るのかと思ってた。
だけど上空に上がったのは、魔素感知圏外だから予想だけど、おそらく雲を押し広げるため。
私とフランツが夫婦の誓いを立てて大司教が婚姻の成立を宣言したあたりで、ぽっかりと開いた青空から陽光が降り注ぎ、天から舞い落ちるたくさんの花びら。
会場、大混乱。
フランツが念話で【やり過ぎだぞ】って責めてくるから、【私じゃないよ! 多分精霊たちの仕業】って言い訳してたら、大司教以下教会本部の面々が、跪いて天に祈りを捧げ始めたの。
そしたら会場にいた来賓たちも祈り始めちゃったから、当然式次は中断。
そして超常現象に舞い上がった教会関係者たち。神の奇跡認定権限者が揃ってたもんだから、教会から公式に奇跡認定宣言出しちゃったの。
精霊たちよ、祝福してくれるのはうれしいけど、さすがにこれはやり過ぎだ。
誰だよ花びらなんか降らせたのは。
【うれしいけど花びらは止めて!】って念話で叫んだら、【【【せっかくいっぱい用意したのに】】】だって。
犯人は樹木系の精霊たちか。自分の花びら蒔いたんだね。
式が進まなくなったから、『天の恩恵あるうちに式の進行を』とせっついて、何とか式次を進行。
国王陛下からご祝辞をいただいたけど、『天にも認められし夫婦』って言われちゃったよ。
そのあと室内に入り、三か所に分かれた会場で披露宴。
当然さっきの奇跡に話が及び、ご挨拶に伺ったテーブルではその話ばかり。
せっかく招待客の来歴や領地の特産なんかを必死で覚えたのに、そんな話は一言も出なかったよ。
やっとのことで全会場でのご挨拶が終わり、次は帰宅される方のお見送り。
みんなに一言ずつお礼を言うから、すごく時間がかかった。招待客多すぎでしょ。終わったら、声が枯れかけてたよ。
そのあとは数時間休憩できるはずが、大司教たちが押しかけて来おった。
いくら女神様との関係を聞かれても、答えようがない。
奇跡を頂戴するほどだから何かあるはずだって言うけど、あれは精霊がやったことなの。
だけど言えないから、知らんぷりするしかないよ。
結果、ほとんど休憩できないまま衣装を替えてお化粧を直され、今度は領都邸に泊まる高貴な方々との晩餐会。
当然話題に上る式での出来事。
また知らんぷりで会話を流そうとするんだけど、全然他の話題に移らないの。
この時点で、完全に声は枯れたね。
やっと晩餐会が終わったと思ったら、今度は家族からの追及。
でもね、フランクリンやマヌエラ様、フランツの両親である宰相夫妻もいるから、やっぱり本当のことは話せない。
完全に枯れた声で、フランツと二人して知らぬ存ぜぬを貫いた。
余談だけど、女性が嫁ぐと夫の立場から見た家族関係を優先することになるので、今日から宰相夫妻が義両親。
そうなると公爵夫妻は義兄夫婦になるんだけど、公爵夫妻は強硬に反対。
娘を嫁に出しても父親と母親を止める気は無いからと、“義”を抜いたお父様とお母様呼びになった。
アンジェリカやマーガレーテから見たら私は義理の叔母になるんだけど、二人も強硬に姉妹関係を主張。
結局今まで通り姉様お姉様呼びになった。
私は元々二人を名前呼びしてたから、そのままなのはありがたい。
やっと終わったと思ったら、深夜指定で工房に来るようにとの呼び出し状がお父様から来た。
私たち初夜なんだけど、さすがに教会から奇跡認定されちゃったのは大ごとらしく、今日のうちに言い訳の打ち合わせをしておきたいそうだ。
深夜、こそこそと工房の開発室に移動し、私の正体を知ってる人たちだけで再会談。
やっと精霊の仕業だって話せたんだけど、ここで問題になったのが精霊の存在に気付いてたマーガレーテとアンジェリカ。
ミシエラにも精霊がいたから精霊の発する神気の感知に慣れちゃってて、それはつまり、精霊や天使を探せちゃうってこと。
これは私の失敗だ。
精霊たちは自身の魔力をうまく隠してるから、ミシエラの住人には見つからないと思ってたの。
アンジェリカやマーガレーテでも、よほど近付かないと翅から漏れる神気には気付かないはずだった。
だけど三か月ミシエラで受講生たちと一緒になって修行しちゃったから、二人の感知能力まで上がっちゃってたの。
そして、町中で遊ぶ精霊たちを感知できるまでになってた。
だけど二人は私の精霊仲間が遊びに来てるんだろうからと、誰にも言ってなかったの。
どうせ私は気付いてるはずだからと、わざわざ私に聞くことも無かったわけだ。
結局、奇跡については知らぬ存ぜぬ。
マーガレーテとアンジェリカの神気感知能力についても、そんなものは無いんだってスタンスで行くことになりました。
声が完全に枯れてしまうほどしゃべり、未明まで相談事してヘトヘトになった私たちは、結婚初夜を延期することにしました。
二人してこんな疲労困憊状態じゃ、もう何もできないから!
実際ベッドに入ったら、二人して即落ちでした。なんてムードの無い同衾なんだ。
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