徐々に活気づくミシエラ

シュトラウス領最西端の町ミシエラ、およそ半月を掛けて、第一期の移住者が町に到着し、本格的な稼働に向けて徐々に体制が整って来ました。


町づくりのための住宅建築も始まり、私が重機代わりになってせっせと石材積んでます。


フィリーネはお城のハウスキーパー的存在になり、メイドさんや使用人を管理してお城を維持してくれてます。ありがとー。


フィリーネママさんはお城の厨房長に就任して、新人コックさんたちとともに、毎日美味しい料理を提供しています。

どうも人に料理を提供するのが楽しかったみたいで、食堂で『うめぇ~』とかの声を聴いてにこにこしてるの。


フィリーネパパさんは、魔獣罠によるレベル上げの監督になりました。

今は移住者のレベル上げをしてるんだけど、移住者全員が若いので、『子どもや孫の面倒を見ているみたいで楽しい』って言ってたよ。


移住者全員が食事とレベル上げでフィリーネのご両親にお世話になってるので、移住者側も相手がエルフだって隔意を持たず、気軽に挨拶してるのがうれしい。


フランツは町の代官なんだけど、文官や兵士さんのまとめ役がまだいないので、結構忙しそうにあちこち飛び回ってる。

お城や町を稼働させることを優先したので、第一期の移住者は実働部隊になっちゃったから仕方無いんだよね。

第二期の移住で各職の長的人材が来る予定なので、それまで頑張って。


町は二層が貴族エリアで三層がレベルアップ希望者の受け入れ施設、四層が病院や官庁などの公共施設、五層が工房や商店街で、六層七層が平民用住居、八層から十層が畑エリアの予定。


畑エリアはすでに完成してて、七層には農家さん用の家だけ先に建てた。

今は若手の工兵見習いさんたちと一緒に、第五層の商店街を作ってるところだよ。


最低限の商店と工房ができたら、次は六層の平民用住宅。

ここま作らないと、第二期の移住者が受け入れできないからね。


第二期移住者は商店で働く人や工房の職人、農家さんたちが中心の予定。

下の層ほど広い構造なので、畑の本格稼働や畜産をする人材と、町を維持するための物資製造や販売に人が要るんだよ。


魔獣罠なんて広すぎるからって、魔獣の掛かりが悪そうな草原側が、全体の半分くらい畜産エリアに計画変更されちゃったし。

まだ鉄格子付けてなかったから、鉄の消費は減ってありがたいけど。


ただこの町、八割くらいが魔獣の大森林内にあるのに、兵士さんが誰一人魔獣と戦わないの。

魔獣罠あるし防壁11mもあるから、魔獣が町に入って来ることは無い。

兵士さんたち、暇だからって鍛錬代わりに建築作業員やってるもんね。


あと、乙女の塔は完全に私とフィリーネの住居になってしまった。

夜間の女性陣避難場所のはずだったのに、お城に住むというステータスなのか、塔よりお城の方に住みたい娘ばっかりだった。


だから当初予定してた橋の建設もしてなくて、乙女の塔に来られるのは空を飛べる人だけ。

つまり、現状は私とフィリーネ専用なわけだ。

おかげで私とフィリーネは、日没後にこっそり精霊の森に帰ったりしてます。

あの大好きなおうちを、空き家になんてしたくないからね。



まだ住民八十五人しかいないけど、日中は農作業してる人や家を建ててる人たちが見える。

城内だって、ちゃんと人とすれ違うようになったからね。



ただね、たまに精霊たちが遊びに来るんだよ。

もちろん姿は消してるんだけど、神力の反応があるから私とフィリーネは気付く。

目線向けると、【町づくりなんて初めて見るから、面白そうで見学に来た】って念話が入るの。


相変わらず珍しいもの好きだけど、そのうち神力を感知できる人も来るかもしれないから気を付けてよね。

この間なんて、建築作業してる兵士さんが運ぶ石材の上に何人も乗って、重なった亀みたいになってたじゃん。

姿は見えないけど、気配で分かるんだからね。


フウタも来たことあったけど、【町に一本も木が無い!】とか文句言ってた。

何か所か公園の場所は取ってあるけど、まだ作ってないだけだから。


パグさんも、【人間の服装が似たり寄ったりでいまいち】ってぼやいてたけど、建築や農作業してる人たちは汚れるの前提なんだから、おしゃれなんてできないよ。


精霊たちって、普段は精霊の森に引き籠ってるくせに、ほんと自由だなぁ…。

まあ私やフィリーネも楽しく町づくりしたりお城の体制づくりを楽しんでるから、他の精霊たちのことは言えないんだけど。


ただ、草原にある陸稲畑にいろんなものを植えるのは止めて。

スペース余ってるのは、将来的にお米を増産する気なんだから。

なんか種とか埋めて周りで変な踊り舞ってるけど、姿を現すのはマジで止めろ。

町からだと視力強化しないと見えないけど、見つかったらどうすんのよ。

くそう、なんか楽しそうだな。

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