妹たち、頑張ってた

翌日は朝食食べたらメトニッツに帰る討伐兵さんたちを見送り、午前中に移住者のレベル上げ。

今回は六人も女性がいるから、フィリーネパパさんに後ろから魔獣討伐してもらおう。


鉄格子の向こうでガウガウいってる魔獣を見たら、さすがにメトニッツ組もビビってた。

だけど近付いてもらわないとレベルアップ効率悪くなるから、申し訳ないけど頑張って近付いて。


魔獣討伐後、さすがにみんな青い顔をしてたので、気分転換代わりに試験畑へ。

前回蒔いた小麦が、発芽して15cmくらい伸びてます。

草原の土でも、ちゃんと発芽はしてくれたのね。


だけど今回来てくれた農家の四男君からは、ダメ出しの嵐。

やっぱり土からしてダメだったみたい。

でもさ、土に混ぜ込む砂や石灰どころか、農機具すらまだここには来てないんだよ。


言い訳したけど、蒔きすぎだからって間引きされてしまった。

麦畑ってもさもさ生えてるイメージだったんだけど、蒔きすぎると却って収穫量が落ちるそうです。


そして四男君、草原にある陸稲試験場を見つけてちょっと顔が引きつってる。

なにせ胸壁から平原を見てると、ちらちら魔獣の姿が見えるからね。

でも大丈夫。あそこは麦じゃなくて稲だから、あそこまで下りて面倒見ろとは言わないよ。


お城に戻ったら二班に分かれ、女性陣はフィリーネが先導して各仕事場の説明。

私たちと男性陣は、ヴォイツから来た若手家具職人に指導を受けつつ、執務棟で机と椅子、書棚の製作。


私が手を使わずに製材や加工するもんだから、みんな目を剥いて驚いてた。

大丈夫。みんなそのうち、これくらいはできるようになるから。


お昼を挟んで午後からは、仕事の説明を受け終わった女性陣も家具づくりに合流。

フィリーネ一家も手伝ってくれたから、午後三時ごろには全員の椅子と机ができたよ。

みんな室内も土足生活が当たり前だから、机と椅子は寛ぐために必要らしい。


当初はベッドを作るだろうと思ってたんだけど、フィリーネのご両親がプレゼントしたハンモックの寝心地が良かったらしく、みんな机と椅子づくりしてた。

ミシエラは大森林横だけあって少し湿度が高めだから、ハンモックの方が暑くなくていいのかも。


ちょこっとお茶休憩したら、夕方までは魔法の練習…という名の遊び。

チェスやリバーシ、トランプや人生ゲームを、魔法を使って遊ぶだけ。


メトニッツ出身者がなぜか駒の扱いが上手いので、理由を聞いたらアンジェリカの人形劇が原因だった。


あの人形劇は衝撃的だったらしい。

人形を操ってるのは小さな子どもたちなのに、驚くほど上手に人形を動かしてる。

それを見た町の住人、特に子どもたちは、自分にもできるはずだと魔法を遊びに取り入れ始めた。


魔法を使い続けるうちに徐々に上達し、上手くできるとちょっとしたヒーロー扱いになるもんだから、子どもたちは魔法を使うことに熱中。

それを見た家族や周りの大人が便利そうだと真似をし出し、今ではメトニッツはちょっとした魔法ブームだそうだ。


で、今回の移住に応募した理由もアンジェリカだった。

アンジェリカが町中を歩いてて、荷物の上げ下ろしをしてる人を見ると、魔法でお手伝い。


大きな荷物が宙に浮いて移動して行くもんだから、最初はみんなびっくり。

でもアンジェリカが町に出るたびにお手伝いするもんだから、アンジェリカの愛らしさも相まって、今では『妖精のお手伝い』って呼ばれてるらしいよ。


そこに今回の移住者募集に無料レベル上げ権が記載されてたもんだから、自分にもあんなことができるようになれると応募したそうだ。


そしたらヴォイツや領都でも、魔法ブームが起きてるって領都組が教えてくれた。


領都ではマーガレーテが火事の現場に居合わせ、中が火の海になってる家を、マーガレーテ一人で消火しちゃったそうなの。

それを見た住人たちが、レベルが上がればあんなこともできるんだと、今回の応募に殺到したらしい。


次はヴォイツからの家具職人さん。

私やマーガレーテが教えた子たちがあちこちの下働きに入り、職場で魔法を使って仕事してるそうなの。

それを見た自分も、あんなことができるようになりたいと移住の募集に応募したんだって。


知らんかった。アンジェリカやマーガレーテ、それに教え子たちも、めっちゃ活躍してるじゃん。


感心してたら、フランツから追加情報。

ヴォイツで私とマーガレーテが指導した若手兵士さんたち、みんな魔導車職人に転職しちゃって、今では魔導車作りの中核を担ってるそうだ。


領都で教えた子たちは、私が監修した魔導機器製造工場で各ラインの監督として働く傍ら、次代の育成も手掛けてる。

この町が正式に可動したら、こぞってレベル上げに来るだろうだって。


みんな各地で頑張ってるなぁってにまにましてたら、フランツが『こいつはアンジェリカやマーガレーテ、そしていま活躍してる魔導機器製造技術者たちの師匠だぞ』って指差して来やがった。


そしたらみんなから羨望のまなざしが。

どうやら私がアンジェリカやマーガレーテの師匠だって知らなかったみたいで、なんか目がキラキラしとる。

そいうや自己紹介の時には、『公爵家の養女で魔導師だけど、元は平民の薬師』としか言ってなかったか。


でもお願い、そのまなざしは止めて。

なんか身体がむずむずして来るから。


「ちなみにこの町の設計もこいつで、作ったのはこいつとフィリーネな」

「「「「「「「「「「うおー!!」」」」」」」」」」


ぎゃー! フランツ、なんてこと言うのよ!!


それからというもの、みんながキラッキラの目で私に敬語で話しかけて来るようになってしまった。

フランツに文句言ったら、『どうせぽろぽろ実力こぼし見せるだろうから、最初からバラしておいた方が納得されるぞ』だって。

くそう、自分でもやりそうなだけに、反論できん。

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