ミシエラ移住者第一陣、出発!
2024.8.18 誤字修正(ご連絡、ありがとうございました)
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メトニッツで久々のおひとり様生活…のはずが、夜はアンジェリカと必ず一緒。
王孫女殿下は王都から派遣される者たちと共にマーガレーテの講義を受けるため、ヴォイツに移動したんだって。
王宮の目が無くなった代官屋敷では、私とマーガレーテが伸び伸びと生活できる環境になってたの。
もっともアンジェリカには弟のお世話もあるし、人形劇の指導や出演もある。
私にも悪路走行用の魔導車作成があるから、一緒にいられるのは夕方から朝までなんだけどね。
ただ、困ったことがひとつ。
日中は二十歳の人間バージョンで過ごしてるから、その姿のまま眠らないと完徹状態になっちゃうんだよね。
だからアンジェリカ、本体で一緒に寝るのは勘弁して。
でもアンジェリカって、やっぱり神力の感知能力がすごい。
二十歳の人間バージョンで最初に会った時、『あれ? 姉様神力どうしたの?』って聞かれちゃったからね。
この身体は人間だから神力無いし、ご飯食べないと飢え死にする。
お花摘みも必要だし歳も取るって説明したら、ずっと一緒に住みたいっておねだりされた。
良い子のアンジェリカにしては珍しいおねだりだから叶えてはあげたいんだけど、この身体は新しい町を一緒に作る人たちから怪しまれないように作った物なんだよ。
だから一緒に住むのは難しいの。
新たな町は一応安全確保されているとはいえ、子どもであるアンジェリカを魔獣の大森林内に連れて行くのは、ご両親の許可が下りないよ。
道中なんて、日中の平原なのに何度も魔獣の襲撃があるし。
道中や町でも私が守るけど、子どもを危険から遠ざけるのは当たり前だから。
私は当分新しい町に住む予定だけど、たまにはアンジェリカに会いに来るから勘弁して。
新たな町の計画が無かったら、私は精霊の森に引き籠ってるはずだったんだよ。
それよりかは会える機会が増えてるからね。
アンジェリカには言えないけど、中身精霊の私がアンジェリカの傍に居続けると、アンジェリカの人としての普通の幸せを阻害しかねないんだよ。
だからアンジェリカ、あなたは人として幸せになって、時々私に幸せな姿を見せてください。
メトニッツに滞在してたった二週間で、第一次移住隊が組織されてしまった。
移住って言ったら、普通は人生の一大決心のはずなのに、応募者が殺到しちゃったの。
最辺境の、しかも魔獣の大森林に接した町なのに。
理由は、新しい町への移住者には、レベル上げ特典があるから。
あの町は一応安全が確保されているとはいえ、やはり他の町より潜在的な危険は大きい。
たとえば町が持つ魔獣殲滅能力以上の魔獣に囲まれたりしたら、町が孤立して食糧難に陥り、下手すると餓死しちゃうかもしれない。
それに、メトニッツとの往来途中でスタンピードに巻き込まれる危険だって、他の町よりはるかに大きい。
だからそんな万が一に備え、町の住人にはレベル7まで上げる特典が付いてるの。
そうすれば町全体の魔獣殲滅能力は上がるし、往来途中のスタンピードからも、逃げられる可能性が高くなるから。
この国では、レベルが高くなれば超人的に強くなれることが知られている。
だけど平民がレベルを上げようとすれば、魔獣討伐兵になるしかない。
でも新たな町の住人になれば、兵士にならなくても、しかも極力安全が確保された状態でのレベル上げができる。
結果、家を継げない若者たちや、貴族、商人なんかに仕えてた使用人、お店で下働きしてた者たちが、こぞって応募してきたの。
第一陣の移住者は八十人。
兵士十五と見習い五、文官十五と見習い五、各種技能系使用人十、下働き十、建築系技術者十、各種職人五、農業経験者五の構成だ。
ここに私とフランツ、従者見習い、往復路警護の熟練魔獣討伐兵七人を加えた、総勢九十人が第一次移住隊のメンバーだ。
でも待って欲しい。
人だけで九十人、そして移住荷物と当座の食料、生活物資。
そんな量を運ぼうとしたら、魔導車何台の隊列になるの?
さすがにフランツも無茶だって分かってたみたいで、結局悪路走行用魔導車五台でのピストン輸送になったよ。
一日おきに十人ずつ送り、トラブルによる遅延を含めて三週間以内で輸送を完了する予定。
魔導車の運転手さんや警護の魔獣討伐兵のみなさん、大忙しだ。
私たちは受け入れ態勢整えなきゃいけないので、文官や使用人たちと初日に向こうに移動します。
フランツの報告書を読んだお義父様から、『ハイペースにも程がある』とのお小言と共に私に町の命名権が与えられたので、ミッシェルをもじって“ミシエラ”と名付けた。
あとね、階層呼称を逆にしろだって。
私はビルみたいに下から第一層って数えてたんだけど、この世界ではお城とかの重要施設ががあると、そこを第一と考えるらしい。
だから頂上が第一層で、最下層を第十層って呼ぶことになったよ。
でも、建物だと普通に下から一階なんだよ。変な感じ。
メトニッツの防壁前広場で第一陣移住者の出発セレモニーがあり、代官屋敷の面々や町の住人たちに見送られ、いよいよ出発。
さあ、シュトラウス領最西端の町ミシエラ、住民移住開始です。
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