目指せ、地産地消
翌日は、朝から試験畑づくり。
そのまま土を盛っただけだと雨で土砂が流出しちゃうので、まずは四角い石材枡づくりからだね。
フィリーネがちゃちゃっと魔法で作ってくれるそうなので、兵士さん二人を手伝いに着け、私もフランツたちと共に土砂の確保に平原へ。
土の盛り上がったコブをカットしてたら魔獣が寄ってきたけど、手持ち無沙汰にしてた兵士さんやフランツが魔獣に集ってた。
なんか兵士さんたち活き活きしてるけど、やっぱ魔獣討伐しないとストレス溜まるんだろうか。
いくつかコブをカットしておおよその量を集めたころには、魔獣の死骸が五匹になってた。
せっかく広い平原があるのに、こんなに魔獣来るんだと畑には使えないか。
いや待て、試しに土壁作って焼き固めてみよう。日干し煉瓦みたいにならないかな。
盾魔法をブルトーザーのブレードみたいにして雑草混じりの土を寄せ集め、盾魔法で挟んで整形。
超やっつけ仕様の土壁作って、水を抜いて圧縮しつつ焼き固めてみた。
うん、一応高さ3mの土壁できた。
土壁は一辺10mくらいだけど、中はがりがり削ったので土がむき出し。
ここに籾を巻いちゃいます。
そしてその上に数センチ土を被せて終了です。
陸稲方式でお米を作れないかと思ったの。
この平原って、土が田んぼの土みたいに黒いんだよね。
大森林で腐葉土化した土が雨で流れ出し、長い年月をかけて平原化したのかもしれない。
ここってすぐそばが魔獣だらけの森だから、普通の獣を見かけない。
だから食害の可能性があるのは鳥か害虫だけだと思う。
お願い、頑張って育って。
思い付きの籾撒きなんかしてたから、戻ったら四角いプールが二面もできてた。
石積みで作ったんじゃなくて、岩を掘削して掘り下げたプール状態。
どうも囲いづくりに残したメンバー三人の中では、畑は道より高い位置にあるものじゃないらしい。
しまったな、農業知識は無いって言っちゃったから、良かれと思って掘削してくれたんだろうね。
多分フィリーネは、おうちの地下にある畑と同じようにしちゃったんだね。
でもあそこは地下だから、高さが無くて土を盛れなかったんだよ。
排水も作ってないけど、雨が当たらないから水やりの量で水分調整できるし。
ここの第一層は高さ10mだから、1m掘っても罠エリアまでは全然届かない。
だから掘ってもいいんだけど、これだと排水や宅地に戻すのが面倒なんだよね。
それに、麦ってある程度の水はけが必要だった気がする。
まあいいか。良かれと思ってやってくれたんだし。
それに、掘り下げた方が見栄えもいいし。
排水は防護壁に穴を開ければなんとかなるだろうし、畑の撤去時は石材を敷き詰めればいいや。
でも、土を入れてから底に排水用の傾斜付けるのは無理だから、すまんが手直しするよ。
何も言わずにプールの底を外壁側に傾斜させて排水穴を開けてたら、フィリーネたちに謝られてしまった。
いや、そんなに気にすることじゃないから。
私も、わざわざ枡状に積み上げる理由を話してなかったし。
『浅知恵でした』って落ち込んでるけど、私だって『そんな気がする』程度のものだから。
それに道との高低差少なかったら、農作業しやすいのも確かだし。
土を入れるのに天地返しっぽく何層にも重ねたから、これで上手いこと雑草の根が枯れて害虫が死んでくれるといいんだけど。
さっきは説明不足で微妙な空気になったので、今回はちゃんと理由を説明しながらやりました。意識共有、大事。
だけどさ、『なるほどー』とか感心しないで。
私の農業知識なんて、付け焼刃にもならない超素人知識だよ。
私が育てたことある植物なんて、小学校での朝顔くらいだからね。
兵士さんたち、土均しとか手伝ってくれるのはありがたいけど、服や靴、泥んこじゃん。
帰ったらお城入る前に靴洗って、それからすぐにお風呂入ってよ。
明日は早朝から帰るので、今日は午後からはお城で過ごす予定。
兵士さんも個別に報告書とか書くらしいし、明日の帰り支度もあるからね。
明日の出発が早朝になったのは、最西端の村を経由せずにメトニッツに戻る計画を立ててるから。
余談だけど、この村って名前が“西端村”なんだって。適当すぎない?
西端村はメトニッツとの直線経路から結構ずれてるし、こことメトニッツとの距離はおよそ350km。
悪路が多いけど、平均時速35kmなら十時間で着くはず。
朝六時に出て休憩一時間取っても、夕方五時には着ける計算。
もちろんアクシデントは付き物だから、予定通り進まなかったら西端村に寄って一泊するし、メトニッツ手前で夜になっても、私がいれば光球掲げて夜間走行も可能。
それに西端村とメトニッツの間は、こっちほどは魔獣出ないし。
午後からは、私はフランツを手伝って報告書作り。
兵士さんは宿舎やお風呂のお掃除。
フィリーネはみんなのお洗濯。
フィリーネ、いつもお洗濯任せちゃってごめんね。
だけどフィリーネ曰く、魔法洗濯と水分除去魔法で手荒れしなくなったから、全然苦にならないそうです。
フィリーネ、あなた精霊なんだけど、働き者すぎない?
夕方はプチ宴会になった。
持ち込めたお酒の量が少ないから酔っぱらうほどじゃないけど、みんな楽しそうにしてた。
今回の先遣調査は、周りにうじゃうじゃ魔獣がいる塔で生活しつつ周辺調査。
夜も魔獣に怯えながら雑魚寝しつつ交代での夜警だろうと、兵士さんたちは覚悟してたらしい。
一方フランツは、どうせ私の事だから、塔といいながら砦くらいは作ってるんじゃないかと予想してたそうだ。
でも実際に来てみたら、安全が確約されたお城はあるし、町づくりの予定地すら安全確保済み。
しかも外に出ずに魔獣が狩れ、夜は交代での夜警も無くベッドでぐっすり眠れる。
罠に掛かった魔獣の量を見なければ、とても魔獣の大森林内での生活だとは思えないそうだ。
フランツなんて、『報告書を読んだ兄上の顔を想像すると笑えて来る』なんて言ってるし。
でもね、ちゃんと帰り着くまでが遠足だから、明日も気を抜かないでよ。
翌日はあいにくの雨だったけど、荷車型魔導車にはルーフキャリア代わりの仮屋根付けてあげたから問題無し。
走行も最初からベクトル仰角を三十度くらいにしたら、ぬかるみもほとんど平気だった。
結局、メトニッツに着いたのは予定より三十分遅れた程度。
雨の日に道の無い平原を走ってこの程度の遅れなら、逆に早いくらいだって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます