思い付き計画、承認 2/2

「……仕方ありませんね」

「ありがと。ほら、この姿で王都観光に行ってたら、フランツに会ったの」

「…その姿は初めて見るな」

「これ、私の前世の姿を基にして、こっちの人に似せたものなの。この姿の時は、カグラ・シュトラウスって名乗ってるの。で、この姿でフランツのお仕事ちょっと手伝って魔法使ったんだけど、王宮の騎士団や若手の宮廷魔導師たちに見られちゃったから、お義父様に話を通しておかないとまずいでしょ」

「アカリの魔法か…。確かにそうだな。身分はどうした?」

「フランツがシュトラウス家の名前を使っちゃったんだけどね。カグラはシュトラウス家の縁戚の子爵家三女で、メトニッツで騎士として働いてたんだけど、マーガレーテの姉弟子だから実力があり過ぎて、他の騎士団員との軋轢が生まれる前に退官したことになってるの。だからもし問い合わせとか来たら、そういう話にしておいて」

「実際にシュトラウス家傍流の子爵家がある。話を通しておこう」

「ありがとう。あともうひとつ。王都騎士団からの勧誘を避けるために、カグラはある大規模な計画の中心人物ってことにしたの」

「アカリの魔法を見たなら、勧誘は当然だな。で、その計画とは?」

「ある大規模な計画としか言ってないよ」

「ふむ。しかし、王家から勧誘された場合でも断れるほどの計画など、そうそう無いぞ。それにアカリには他国からの求婚もあるから、カグラにも来るかもしれん」

「西にある広大な魔獣の森の横に、新しい町を作る」

「はあっ!? なんでまたそんなことを!?」

「フランツが辺境に帰りたがってるんだよねぇ。だからフランツを呼び戻す口実と、カグラへの勧誘を断るのに使おうと思って」

「名目は、何のための町なのだ?」

「将来必ず必要になる、レベル上げの拠点」

「……ヴォイツとメトニッツの中間に作った町は?」

「将来のために魔導機器製造技術者の育成は必須。マーガレーテが指導する魔法治療は、レベル12以上じゃないと使えない。魔獣討伐に出る兵には攻撃魔法と盾魔法が必要。王都の騎士団の意識改革しちゃったから、騎士団員のレベル上げと盾魔法習得も多分必須になっちゃうの」

「………やっとできた町でさえ、周りの魔獣を狩り尽くしてしまうわけか。新たにレベル上げ用の町が必要になるのは理解したが、おそらく国策事業になるぞ」

「レベル上げのために戦い方を指導できるのは? 魔獣だらけの場所で町を建造していく人員を出せるのは? その指揮を執れるのは? 町に拡張できた場合、町民の生活物資を調達する先は? 魔獣だらけの場所にある町に生活物資を届けるノウハウは? レベル上げに来る者たちを護送する手立ては?」

「…我が領とフランツ、そしてカグラがいなければ不可能な計画か。つまり、国には資金を出させて、建造や運営は全てうちの領が担うのだな」

「町になっても、代官が王都の人間じゃ魔獣の森横にある町の運営なんてできないよね?」

「フランツが代官になるのが、一番都合がいいわけか」

「そういう話をフランツとしてたの」

「国の将来のためには絶対必要な町だな。提案書を書いて、父上経由で提出しよう」

「ありがとう。あ、最初の拠点づくりもテント暮らしなんて無理な場所だから、私とフィリーネで頑丈な塔を建てるよ。建築資材とかも魔獣の森で調達するけど、国への見積もりは材料費と建築労働者入れて計算して」

「とんでもない儲けになってしまいそうだな」

「国の将来のための計画を地方が立てて工事もしてあげるんだから、それくらいの役徳は必要でしょ」

「くくく、そうだな」

「ねえ、いつまでその姿でいるの? お話は本来の姿でできるわよね?」

「あ、はい」


その後、本体姿の私をベッドに引っ張り込もうとするお義母様を、フランツを手伝ったために何日か帰りが遅れてるからと説き伏せ、何とかメトニッツに向けて飛び立ちました。



川傍の家のデッキでポスト作ってたら、夜中すぎなのにアンジェリカが飛んで来た。

眠そうなのに無理してるから、朝まで一緒に眠りました。

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