新居の模型を見せびらかす。………え?
2024.8.17 脱字修正(ご連絡、ありがとうございました)
石や岩だらけの足場でのスライム回避訓練は足首を痛めそうなので、フィリーネには足場魔法(盾魔法の足場版)を宅内歩きで練習してもらうことに。
レベルは高いし魔素制御もかなりできて来てるから、多分慣れればいけるはず。
広くなったリビングで私が透明な床状の足場を出し、その上を裸足で歩いてもらった。
何もないはずの場所を踏みしめる感覚覚えたら、透明床消してさあ実戦。
うん、展開速度がゆっくりだけど、これなら数日で慣れそう。
私も室内では靴を履いていたくないので、この家はやはり土禁にしよう。
足場魔法ミスって足が床に着くと足裏が汚れるので、改めて床をきれいにお掃除。
拡張工事の後に掃除はしたんだけど、そのあと土足で歩いてたから再度きれいにしておきました。
精霊の森産メロンで昼食摂ったら、今日はフィリーネのレベル上げのために毒スライム退治。
レベル上げを急ぐ必要は無いけど、完全精霊化に向けてある程度のレベルもあった方がいいからね。
うん。毒スライム退治は、盾魔法と飛剣魔法あったら安全だね。
久々に来たらかなり毒スライム増えてたけど、フィリーネのレベル上げには丁度いいな。
毒スライム退治を終えて自宅に戻り、お洗濯と入浴。
森に入ったから一応ね。
しばらくまったりしてから夕食を摂り、今日も精霊集会に参加します。
ディーネさんに言われたからじゃないけど、せっかく作った住宅模型を見せびらかしたいじゃん。
いやぁ、予想はしてたけど、思いっきりウケた。
どうもこの世界にはラウンドフォルムの室内なんて無いみたいで、曲線的なデザインが大ウケ。
室内に製材しない木を使ってるのも、デザインと実用性が両立してるって大好評だった。
ただね、案の定樹木の精霊たちから、こんな都合がいい形の木なんて無いだろと突っ込みが来た。
よじれた木が螺旋階段の足場になってるし、太い枝が横柱代わりに床を支えてるからね。
しかもその大木は家の中心にそびえてて、地下から三階までをぶち抜いた大木が、各階の床を支えるように放射状に枝を広げてる。
幹を石で作って枝は鉄、その周りを木で囲ってそれっぽく見せると言ったら、樹木の精霊たちからブーイングが上がった。
偽物の木を作るなだって。
「えー。石や鉄のままだと木のぬくもりを感じられないし、柔らかなデザインにならないよ」
「仕方ないな、作ってやるよ。誰か枯れたばかりの大木持ってないか? それなら俺たち樹木の精霊の力で、この形に変形してやるよ」
「え、フウタたちって、そんなことできるの?」
「俺たちは隣の木に迷惑が掛からないように枝とか曲げてるし、根っ子だって石や岩を避けてるからな。枯れたばかりの木なら、変形くらいできるぞ」
「あの、樹木の精霊が他の木をいじっちゃってもいいの?」
「偽物の木を作られるよりましだ。それに、アカリなら大切に使ってくれるだろ。そのまま朽ちさせるよりよっぽどいい」
「ありがとう、すごくうれしい」
「ここまで木をうまく利用したデザインだと、木を気に入ってくれてることが伝わって来て俺たちもうれしいからな」
「うん。私、木の質感や曲線の美しさが大好きなの」
「その気持ちが充分に伝わって来るデザインだ」
「本当にうれしいよ。だけど立ち枯れした同サイズの木を探さなきゃだし、現場でサイズ調整するにも岩さえくり抜いてないから、まだまだ先の話だよ」
【今から作りましょうよ。こんな楽しそうなこと、待ってなんかいられないわ!】
【俺も、このクッションやソファー作ってみたい!】
「私、大きな立ち枯れの木がある場所知ってるから、根っ子から抜いて来るわ」
「いいね。僕たちは、この曲線だらけの形に岩を削っちゃおう!」
「おー!」【やるぞ!】
マジか。岩をほじりつつゆっくり材料集めとかするつもりだったのに、模型見せただけで工事が始まっちゃいそう。
精霊たち、もう思い思いに散っちゃってるし。
あ、模型が無い! 大岩を掘る見本に誰かが持ってったな!
ヤバい、出遅れた! ちゃんと監督しないと、とんでもないことになっちゃいそう。
慌てて大岩の場所まで来たら、もう岩をほじってる!
ちょ、待って。そんな大穴空けないで。そこは玄関サイズ!
ぎゃー! 無理なほじり方してるから、外側欠けちゃってるじゃん! 止めてー!!
え? 何それ? 何で欠けた場所が元通りの岩になってるの?
は? 岩を作り直した? そんなことできんの?
あ、剥がれた苔まで元通りになってる!
え、何その光るキノコ。どっから持って来たの? 玄関灯代わりに最適なんですが。
うわ! もう枯れた大木持って来たの? え? すでに岩の中くり抜かれてて、柱代わりの大木が変形始めてる。
うわ! 床板が、製材じゃなくて枝の変形で敷かれてく。すげー!
夜なのに、大岩の周りにはいくつもの光球が光り、精霊たちが集ってる。
幻想的な風景なんだけど、あちこちで響く笑い声と歓声。
みんなノリノリで、もう制止なんて無理。
私とフィリーネで、こつこつ作りたかったのにー!
ちょ、パグさんたち、何でもうベッドや家具ができてんの? 仕事早すぎでしょ!
えっさほいさと家具を搬入していく精霊たちが、なんか妙に可愛い。
だけど、なんで他次元庫使わずに持って運び込んでるの? なんかめっちゃ笑顔で運んでるよね。
「おーい、アカリ。できたから中入って確認してくれ」
「は? もう出来ちゃったの!?」
「魔導機器以外はな」
「私たち、なんにもしてない!!」
「一緒に参加すればよかったのに」
「無茶言わないで! あんなハイペース、びっくりしてる間に終わっちゃてたわよ!!」
「やり始めたらめちゃくちゃ楽しかったぞ。ほら、早く確認しろ」
中身、ほぼ模型通りにできてる。
いや、私の妄想以上にいい出来だよ。
床なんて、フローリング張る予定が一枚板みたいなんだよ。
窓枠も木材カットして使う気だったのに、きちんとその形に成長した枝になってるし。
ベッドサイドの照明も、魔導機器のはずが光る花が鉢に植えてある。
各所を担当した精霊のうれしそうな説明を聞きながら各階を廻ったけど、ほんともう200%くらいの完成度。素晴らしいの一言に尽きる。
内覧終わって外に出たら、なぜか宴会が始まってた。
完成祝いらしいんだけど、お酒や料理まで出てた。
フィリーネと二人でお礼言ったら、みんなからお礼が帰って来た。
家づくり、すごく楽しかったそうだ。
動物系の精霊たちは自分の住処を改装しようと意気込んでるし、樹木の精霊たちも本体の一部を変形させて分体の住処にするらしい。
みんなが楽しかったのはうれしいんだけど、私は作る喜びが味わえなくてちょっと不満。
私が作るよりはるかに出来がいいから、文句の言いようもないんだけどね。
きっと朝まで宴会なんだろうと覚悟してたら、意外に早くお開きになった。
どうやらみんな、まだ作りたい欲求が満たされてないようで、帰って色々作業するらしい。
残された私とフィリーネも帰ろうとしてハタと気付いた。
ここ、もう住めるよね。ベッドどころか、お布団までできてるから。
真新しい木の香りに包まれたおうちに入って、各々の部屋で休みました。
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