新居の模型
朝、住宅模型作ってたらフィリーネが起きて来た。
「アカリ様、おはようございます。ひょっとして徹夜ですか?」
「えへへ。イメージ図描いてたんだけど、岩の凹凸が多くて内壁の寸法が出しにくかったから、岩の模型作ってみたの。中をくり抜いて内寸計ったら寝る気だったんだけど、階段とか付けたら内装も作りたくなっちゃって。気付いたら朝だった」
「精霊は寝なくても平気らしいですが、お身体は大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だよ。それより、これ見て。もうほとんど完成なの」
「え? 中まで作ったんですか?」
「そうだよ。四段に分かれてて、一階ずつ中が見られるの」
「……何ですかこの内装。部屋の中なのに木が生えてて、その木を柱や階段に利用してます。まるで妖精のお部屋みたいなのに、曲線部分が多くてお姫様の部屋のように優美な雰囲気です。なんだか幻想的な感じがして、しかもぬくもりやおしゃれさ、可愛らしさまで感じます。すごいですね、これ。感動するようなデザインですよ」
「前世にあった、空想の妖精の家とかがこんな感じだったの。ここがフィリーネの部屋ね」
「こんなお姫様みたいなお部屋、私が住んでもいいんですか?」
「私の部屋も似たようなレイアウトだよ」
「このお部屋、半分だけ二階になってるんですか?」
「そこはロフトって言って、部屋の半分が二層構造なの。趣味の小部屋みたいな感じかな」
「木の枝がロフトを支えてるんですね。ちょっとエルフの住居みたいで懐かしいです」
「あ、エルフの家ってこんな感じなの?」
「こんな優美さはありませんけど、万一の魔獣避けに樹上に家を建ててます。枝や幹を床や壁に利用するので、少し雰囲気が似てます」
「へー、そうなんだ。だけどこんな都合がいい形の木なんて無いから、加工してどこまでこれに似せられるかだよね」
「無理に曲げたら折れちゃいますもんね」
「ダメなら石や鉄で骨格作って、表面を木で覆うつもり」
「そこまでしますか…。あれ、地下もあるんですね」
「そこはね、汚水処理と物置のスペース」
「汚水…。私だけがトイレを使うのに、申し訳ないですね」
「いや、私もお風呂入るし、洗濯だってするから必要だよ。ただ精霊の森を汚すわけにいかないから、魔導機器で水だけ分離して、残りを分解する魔導機器も作らなきゃ」
「こんなファンシーな家なのに、設備は最先端ですね」
「いやぁ、妄想しだしたら止まらなくなっちゃって。夢を盛り込み過ぎたかも」
「これが本当にできたら、実際夢のような家です。家から出る気がなくなりますよ」
「できたらいいねぇ」
フィリーネと新しい自宅の事でちょっとお話しした後、フィリーネに付き合って精霊の果実で朝食。
私もきちんと精霊の果実を食べないと、ここだと神力増えないみたいだから。
で、朝食済んだらフィリーネの戦闘訓練。
フィリーネの魔法はなかなかだけど、近接戦はあまりできないらしいから。
滝つぼからスライム釣って、久々に回避訓練。
お、四匹釣れたか。
「何ですかそれ。どうしてスライムが当たらないんですか?」
「え? 避けてるから」
「……盾魔法で足場作ってますよね。なんでそんな瞬時に盾魔法が展開できるんですか」
「ずっと裸足で、盾魔法を床代わりにして歩いてたから」
「…アカリ様、器用すぎませんか?」
「レベルが上がると運動能力も上がるし、魔素掌握範囲も広がるから魔法の展開も楽になる。だからフィリーネのレベルなら、これくらいは余裕でできるはずだよ。私がこれやってたのって、レベル一桁の時だったからね」
「それはアカリ様だからのような気がします」
「そうかなぁ。最初はスライム一匹だけにして、身体には盾魔法展開しながらやればいいんじゃないかな」
「展開した盾魔法を、身体と一緒に動かすんですか?」
「割と単純だよ。身体の前数センチに展開し続けるだけだから、身体が動けば盾魔法も動くし」
「えっと……。これ、結構難しいです。盾が置いてきぼりになったり身体にぶつかります」
「あれ……? ああそっか! フィリーネは人形劇の襲撃イベントやってないから、自在に動かす盾魔法に慣れてないんだ」
「人形劇で何やってるんですか!?」
「いや、どうせ人形劇やるなら盾魔法の練習になるからと思って、暗殺者の襲撃とかを劇にしてたの」
「あの人形劇、思っていた以上に魔法関連の練習になってたんですね。この前初めて体験しましたが、かなり人形を操るのが難しかったですから。しかも小さな人形に盾魔法を展開したまま人形の動きに合わせて移動させるなんて、どれだけ高度な練習なんですか。ひょっとしてアンジェリカ様とマーガレーテ様って、もう人類最高峰の魔導師なんじゃ…」
「レベル14だから最高峰は言い過ぎでしょ」
「レベル14って、魔獣討伐兵でも最上位ですよ。そこに魔法展開の早さと位置調整のスムーズさ、魔素掌握率と魔素制御力の高さが加わったら、本気で最高峰狙えますよ」
「でもあの子たち、人形劇始めて三か月目にはあんな感じだったよ」
「シュトラウス公爵家は天才の家系ですか? フランツ様もフランクリン様も大変お強いですし」
「その四人だと、魔法を操る巧みさで行けば、一番は僅差でアンジェリカ、二番がマーガレーテ、三番がフランクリンで、フランツは四番かな」
「アンジェリカ様が一番なんですか!?」
「攻撃系の魔法は教えてないけどね。でもアンジェリカは修行なんか全然してなくて、人形遊びしてただけだよ」
「……代官屋敷でブリジットから聞きました。あの人形劇でアンジェリカ様は算術の掛け算を覚え、外に興味を持ち、話し方がうまくなり、他者の心情を読むことまでできるようになったと大絶賛していました。そこに魔素制御や魔法展開の早さと位置移動のスムーズさまで上手くなるって、どんだけ目的詰め込んでるんですか!?」
「いやぁ。どうせやるなら、楽しくいっぱい覚えられる方がいいかなって」
「もう一つ入ってましたね。修練や勉強などと思わせず、楽しく遊んでいるうちにどんどん能力が上がってしまう。とんでもない勉強方法です」
「うまく行って良かったよ」
「それほどの成果を出しながら『良かった』で済ませますか。やはりアカリ様はアカリ様です」
「え、意味分かんない」
「様付けが当然ということです」
「……あれ?」
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