日中精霊集会

大岩の寸法をあちこち測って崖の自宅に戻り、妄想全開で室内イメージ図を描きまくった。

筆や絵の具も手に入れといてよかった。


私が妄想に浸ってたら、パグさんがやって来た。

昨日の集会にもいたけど、私やフィリーネの服に興味津々だったから、持ってる服を見せてほしいってやって来たの。


私は持ってる服をごっそり出して、あとはフィリーネにお任せ。

フィリーネはお針子してたこともあるから、服にはかなり詳しいの。

服を見てるだけじゃなくて、なんか端切れ出して縫い方まで説明してるぞ。


パグさん、顔はいかついのに、真面目に聞きながら縫い方練習してる。

なんか可愛いな。

そうだ、パグさんに布生地をプレゼントしよう。いっぱい買って来たから。


あれ、今度はフウタが来た。

え、魔導車見たいの? ああ、昨日は精霊いっぱいいたから、満足いくまで見られなかったんだね。

じゃあ、外で出すよ。


は? いやいや、フウタはサイズ的に魔導車運転出来ないから。

しかもこのあたりって岩と森だから、走らせられないよ。


分体装備してちょっとだけ動かしてあげたら、めっちゃキラキラお目目になってる。

おもちゃもらった子どもみたい。


あ、今度は獅子の精霊さん。

昨日の話題で出たバーベキュー食べたいのね。

持ち運び用のバーベキューテーブルあるから、それ出して準備するよ。


バーベキューの準備してたら、なぜか精霊いっぱい増えとる!

え、この肉焼くの? 獅子さんが出したのブロック肉だから、切ってタレに漬け込まなきゃ。

いかん、準備が追い付かん。フィリーネ、助けてー!


ねえ、いつの間にシャリーさんも来たの? なんかもう、日中の精霊集会みたいになってない?


また魔導車に結構な数の精霊が集ってるし、こっちじゃバーベキューを待ってる雑食や肉食系だった動物精霊たちがテーブルを囲んでる。

その外では、草食だった精霊たちが串に刺した野菜見つめてるし。


「ねえ、何なのこれ?」

「あ、ディーネさんいらっしゃい。なんでか分かんないけど、みんな集まって来ちゃったの」

「精霊の気配が集まってるから気になって来てみたら、随分とおかしなことになってるわね」

【ふむ、塩コショウだけの肉は、焼くと香ばしくてうまいな】

【私は雑食だったからか、お肉と野菜を一緒に食べるのもいいわね。ちょっと熱いけど】

【こうなると、飲み物も試してみたいな】

「紅茶で良ければご用意できます」

【いいわね。私はぬるめでお願いね】

「はい。ご用意します」

【アカリー、これもう一度動かしてみてくれ】

【フィリーネ、レースとやらの編み方を教えてくれ】

「……精霊、自由過ぎでしょ」

「ふふふ、みんな楽しそうよ」

「…分身したい」



あちこちから飛ぶみんなの要求に対応してるうちに、気付けばもう夕方。

みんな思い思いに精霊の森に帰って行ったけど、帰りそうになったシャリーさんを捕まえてブラシをプレゼント。

ぜひそのつやつやな毛並みをお手入れしてください。


ブラシの使い方が分からないっていうから、許可を得てブラッシングさせてもらった。

何この手触り!? めっちゃ気持ちいいんですけど!


【あら、結構気持ちいわね。アカリ、ありが…その締まりのない顔は止めなさい。ちょっと怖いわよ】

「あぁ、至福」

【やり方が分かったからもういいわ。あとは自分でやるから】

「そんな!? 至福の時間が…」

【相変わらずねぇ…】

「お猫様への愛は、不変です」

【壊れてちゃってるわね。もう行くわ】

「あああぁぁぁぁ…」

「アカリ様、残念な気持ちは分かりますが、陽が落ちる前にお片付けしましょう」

「……あい」


食器やコンロ洗ったりテーブル拭いたりしてたら、かなり暗くなってきた。

別に光球掲げれば夜でもできるけど、森から魔獣が寄って来るのでめんどくさい。

何とか終わって良かった。



自宅に入ってちょっと一休み。

今日は忙しかったな。


多分昨日の夜に話を聞いて興味を持ち、我慢出来ずに体験しようとやって来ちゃったんだろうね。

フウタなんて、魔導車欲しそうに触ってたから。


…新しい自宅ができたら時間あるだろうから、チョ〇Q型の魔導車でも作ってやるかな。

いや、自分が動力になる足漕ぎ式のペダルカーの方が楽しいかも。

うん、時間できたら作ろう。


バーベキューで残り物食べちゃったから、今日の夕食はパス。

フィリーネとお風呂に入って丸洗いされました。


さあ、私は妄想を実現すべく、頑張ってお絵描きしなきゃ。

フィリーネは先に寝てていいよ。

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