三姉妹の人形劇

たこ焼きパーティーの後片付けをしてからまったりお茶してたら、アンジェリカとマーガレーテが水人形遊びを始めた。

アンジェリカはウサギ、マーガレーテは猫を作って、デッキの手すりの上を撥ねさせたり歩かせたり。


二匹ではちょっと寂しいので私がリスを作って柱を登らせたら、フィリーネもキツネで参加。

追加でおっきなキノコ生やしたり四枚羽の女の子妖精とか飛ばしたら、デッキの手すりが一気にメルヘンな世界になった。


「何ですかこの童話みたいな空間。アンジェリカ様やマーガレーテ様も、何でそんなことできるんですか。お二人って、人なんですよね?」

「私もマギー姉様も、ちゃんと人だよ。アカリ姉様に教えてもらったらできるようになるの」

「お人形遊びの事は聞いていましたが、人ってこんなことまでできるんですね」

「この水人形は、普通のお人形動かすより難しいよ。常に形状を維持しながら変形して動かさなきゃいけないから、自然な動きに見せるには魔素制御を三か月くらい頑張らないとね」

「え? たった三か月ですか?」

「毎日二時間くらい練習して三か月ね。普通のお人形動かすだけなら、一か月で何とかなるかな」

「最初はね、お人形さんの手や足を動かそうとすると、お人形さんが倒れちゃうの。私、アカリ姉様みたいにお人形さんを動かしたくて、毎日お人形さんと遊んでたよ。お人形遊び見る?」

「お三人のお人形遊びは素晴らしいとブリジットから力説されて、一度拝見してみたかったのです。お願いしてもいいですか?」

「うん。姉様たちも、いいよね?」

「いいよ。じゃあ、みんなでやろうか」

「わーい!」

「はい」


フィリーネも参加して四人で人形劇を始めたら、コリンナが目を剥いて驚いてた。

今日の劇は、アンジェリカが大好きなシンデレラ。

この劇は何度もやってるから、小道具も充実してます。

ちゃんとかぼちゃの馬車や、ガラスの靴まであるからね。

フィリーネは初参加なので、時々念話で指示出ししちゃったけど。


劇が終わったら、コリンナが放心してた。


「………すばらしいです。人形が活き活きと動いて、まるで本当に生きているようでした。ダンスなんて、流れるような動きとスカートの広がりまで再現されていて、王族の方が踊っているようでした」

「ダンスはマーガレーテの監修が入ってるから、リアリティあるよね」

「…マーガレーテ様は、かなりダンスがお上手になりましたよね?」

「白状しますわ。お人形のダンスがきれいに見えるようにどう動かすかを試行錯誤していたら、わたくし自身のダンスも上手くなってしまったのです」

「私はお人形遊び始めてから、お話しの仕方が上手くなったってお父様に褒められたの」

「アンジェリカ様やマーガレーテ様のセリフは、人形の心情がしっかりと伝わって来ました。六歳であの会話がおできになれば、褒められて当然です」

「えへへ」

「皆さま、大変貴重な劇をお見せいただき、ありがとうございました。一生の宝物です」

「え、そこまで?」

「あれほど素晴らしい劇は、上位貴族の方々でさえ見られないと思います。何度か公爵家ご一家の観劇に同行していますが、これほど感動した劇はありませんでした」

「お姉様と一緒に家族に人形劇を披露した時も、あとで大絶賛されましたわ」

「私、それ聞かせていただいてません。マーガレーテ様の専属なのに…」

「王族や上位貴族から求められるレベルの出来だからと、人形劇も一応秘密にすることになっていましたの」

「だよねぇ。魔導機器関連のお仕事で天手古舞なのに、人形劇を求められても時間無かったよね」

「…あのお仕事地獄の中では無理ですね。すみません、我儘でした」

「まだ仕事全部は片付いてないのに、抜けちゃってごめんね」

「いえ、万一お姉様の素性がバレたりしては、それこそとんでもない事態に陥りますわ。それに、お姉様に他国からの婚約申し込みなど来てしまってからでは、どう動いてもしこりが残りますから。魔導機器関連のお仕事も先が見えてきましたので、お父様もわたくしの負担を減らすとおっしゃっていましたから大丈夫ですわ」

「だよねぇ。本体の身バレは可能性低いけど、他国の王族から婚約なんか持ちかけられたら、どう断っても角が立つよね」

「そういう状況なので、お姉様は心置きなく旅立ってくださいまし」

「うん、分かった。じゃあ、代官屋敷にお別れのご挨拶に行こうか」

「はい。わたくしも明日の朝には領都に向かいますから、その前にご挨拶だけはしておきたいです」


そういうことで、みんなで連れ立って代官屋敷に移動。

代官夫妻とお別れの挨拶済ませたら、使用人さんたちまで廊下で待ってて挨拶してくれた。


ただブリジットがアンジェリカを抱っこして連れて行こうとして、アンジェリカに叱られてた。

うん、ブリジットも立派にアンジェリカ中毒だな。


コリンナとフィリーネは代官屋敷に泊まるので、三人だけで帰宅。

さて、夕食は何にしようか。


二人が日本食を食べたいというので、みんなでオムライスを作ることにした。

ケチャップ作っといてよかった。

薄焼き卵を厚めにしたので、二人とも破れずにできてた。

ケチャップで猫の顔を描いたら、アンジェリカに大うけだったよ。


今日も三人で仲良くお風呂で洗いっこ。

泡アーマーと泡剣装備したら、マーガレーテにジト目で見られた。

アンジェリカにはウケたんだけど、さすがにはしたないとマーガレーテから淑女的指導が来ちゃったよ。



アンジェリカやマーガレーテは成長しちゃうので、ひとつのベッドで三人で眠れるのはこれが最後かもしれない。

お互いの存在を確かめ合うように抱き着いて眠りました。

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