たこパ
コリンナとフィリーネが作ってくれた朝食を、デッキの丸テーブルでみんなでいただきます。
今日は夕方に代官屋敷へ旅立ちの挨拶に行く予定だけなので、朝からゆっくりまったり。
今日一日は、みんなでのんびり過ごす予定です。
食後にぽけーっと川を眺めながら、食後のお茶しつつみんなでおしゃべり。
コリンナの話では、どうやらアンジェリカの専属侍女であるブリジットが、アンジェリカ成分枯渇症を発症してるらしい。
ブリジット、アンジェリカの事大好きだもんなぁ。自慢しぃ仲間だし。
コリンナとフィリーネが代官屋敷にいると、朝からブリジットが羨ましそうな視線を向けて来るそうなの。
ブリジットはコリンナとフィリーネが今日ここに来るの知ってるから、代わってほしかったんだろうね。
『あったといえばあった』はこれか。
二人はブリジットの視線に耐えかねて、早めにお屋敷を出たんだね。
でも、ブリジットには私の正体教えてないから、コリンナやフィリーネと交代されるのは困るんだよね。
アンジェリカ自慢しい仲間だからブリジット自身は信頼できるんだけど、ブリジットの実家は以前に貴族派にすり寄ってたことがあるらしいの。
今は貴族派が瓦解しちゃったからシュトラウス公爵家に臣従してるんだけど、まだ臣従して日が浅いから様子見の段階だそうなの。
ブリジットは代官夫人のシェリーン叔母様が領都にいたころからの知り合いで、ブリジットが家族との折り合いが悪いことも知ってたから、アドルフ叔父様のメトニッツ代官就任を機に、侍女としてメトニッツに呼んだらしい。
ただ実家と縁を切ってるわけじゃないので、ブリジットのためにも私の素性は明かさない方がいいって言われたの。
世間じゃ実家当主の権限が強いから、何かを強制された時に大きな秘密を知らない方がいいだろうってことです。
ちなみに、シュトラウス公爵家の家臣家族の中から結婚相手をみつくろおうと、代官夫婦そろって動いてるそうだ。
結婚すれば、実家より婚家に従うのも当然の世界だからね。
アンジェリカは明日には戻るんだから、ブリジットはもうちょっとだけ我慢しておくれ。
今日も夕方には代官屋敷に行くけど、私とは当分会えなくなるからって、アンジェリカは明日の旅立ちまで一緒に過ごす気満々なんだよ。
朝食を終えた私たちは、お洗濯とお掃除に取り掛かりました。
コリンナとフィリーネは、このお手伝いのために来る予定だったんだよね。
ただお掃除は、ここに来る前にアンジェリカとブリジットがしてくれてたし、私たちがこっちに来てからも一度やってる。
だから『楽しく過ごさせてくれてありがとう』的なものなので、結構早く終わっちゃうけどね。
お洗濯もアンジェリカとマーガレーテが魔法での洗濯覚えたし、元々できる私とフィリーネもいる。
畳むのだって、コリンナとフィリーネはプロだ。
結局、大掃除レベルのお掃除も大量のお洗濯もお昼までに終わってしまった。
「コリンナとフィリーネは、休暇中なのにごめんね。思ってた以上に早く終わっちゃったよ」
「いえ、実は結構暇だったんです」
「そうなんです。お休み前半で町中はあらかた回ってしまったので、することがなくなって来てました。侍女が一週間ものお休みをいただくなんて、遠方への里帰りくらいしかありませんから」
「私は色々な職業を経験してきましたけど、一週間も連続のお休みなんて、普通はもらえません」
「私たちは休暇ということで一応客人扱いでしたので、暇だからと言って使用人のお手伝いをするわけにもいきませんでしたから」
「お休みが長いと、なぜか罪悪感が出てきました」
「そっかぁ、却って暇を持て余しちゃったか。二人とも働き者だね」
「しかも有給ってなんですか? お休みしてるのに給金が付く職場なんて、どこにもありませんよ」
「いや、二人は私とマーガレーテの仕事地獄に付き合わされて大変だったから、気兼ねなくゆっくり休んでもらおうと思ったんだよ。でも、却って気疲れさせちゃったみたいだね」
「気疲れというほどではありませんが…」
「同僚が働いている時に長く休んだままお給金をいただくのは、日が経つにつれて罪悪感が出てきました。最初の二、三日はうれしかったのですが」
「他の人も違う時期に一週間くらいお休みするなら、そういうもんだと思えるのかもね」
「そうですわね。領都に帰ったら、お父様と検討してみます。実際わたくしはこの一週間がすごく楽しかったので、使用人の皆にもこの楽しさを味わっていただきたいですわ」
「いいね。使用人の求職者が殺到しそう」
「それはちょっと困りますが」
「あはは」
「アカリ様、もうすぐお昼ですが、昼食はどうされますか?」
「あ、そろそろ準備するか。今日はね、たこ焼きパーティー」
「たこやきとは何ですの?」
「溶いた小麦粉に小さな具を入れて、一口サイズに丸く焼いたもの。自分で焼くんだよ」
「…あまり想像ができませんわ」
「まあ、見てれば分かるよ」
そして、いざたこ焼きパーティー始めたら、アンジェリカがめっちゃ喜んだ。
具はタコ、エビ、イカ、チーズ、腸詰、ツナ、コーン、キャベツなどなど、もうたこ焼きじゃない方が多いけど、みんながきれいに丸くしようとして大騒ぎだった。
「アカリ様、この丸テーブルは素晴らしいですね。普段はお茶会ができそうなデザインなのに、真ん中の置物をどければ調理が可能なテーブルなんて、他にありませんよ」
「炭使うから外でしか利用できないけどね。コンロの魔導機器にしてもいいけど、調理はどうしても匂いが出るからねぇ」
「馬車旅にはもってこいです」
「小さくして置物の代わりにただの蓋にすれば、魔導車の荷物スペースに入るかも」
「わたくし、領都に戻ったら作ります。先日のバーベキューといいこのたこ焼きといい、屋外で熱々のお料理をいただくのがこんなにも楽しいとは思いませんでしたわ」
「そうですよね。野営なんかですと燃料が薪ですから、焦げたり生焼けだったり煙臭かったりして、おいしくありません」
「…野営のイメージがすっかり変わりそうですわ。魔導コンロなら薪を持ち運びする必要もありませんし、即席のかまどを作る必要もありません。兵士の方々も助かるでしょう」
「テーブルを四角くして足を伸縮式にすれば、荷車の屋根代わりにも使えそうだよね」
「ヴォイツに行く折に、お姉様が作っていらっしゃいましたね。あれは荷台代わりでしたが、雨除けやテーブル、調理にも使えますのね」
「見て見て! 真ん丸できた!」
「おー、アンジェリカ上手だね」
「アンジェリカ、上手なのは結構ですが、そんなに焼いて食べられますの?」
「あ…。姉様たちも食べて」
「よし。じゃあアンジェリカが作ってくれたたこ焼き、みんなで食べよう!」
「そうですわね、いただきましょう」
「…アンジェリカ様、このたこ焼き、チョコレートの味がします」
「あ、それ当たりだよ。おいしい?」
「…びっくりする味です」
「アンジェリカ、チャレンジャーだな。生地をマフィン生地にしたり、パンケーキの生地にしてジャムや生クリーム乗せて食べるのもいいよね」
「お姉様、それありですわ!」
「うん、楽しそう!」
「じゃあそのたこ焼きプレートあげるから、色々チャレンジしてみてよ。今日はそろそろおなかいっぱいだろうから、また今度にしてね」
「「はーい」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます