心配性 これ持ってて
「お姉様の神力と魔力が宿ったお水…。大切にいたしますわ」
「私も大事にするー!」
「かなりの危険物だから、使う機会が無いのが一番いいんだけどね。あともうひとつ忠告。マーガレーテとアンジェリカは私がレベルアップさせてるのを実際に体験してるから、もうどうやったら他人をレベルアップできるかは分かってるよね? だけどこのレベルアップ方法は、下手をすると一度に複数上げちゃう危険性もあるの。だからもし真似するなら、魔力を少なめにして慎重にやってね」
「はい。もし使うような状況になれば、慎重に行いますわ。ですがお姉様、置き土産が大きすぎませんか?」
「え、なんで?」
「魔力切れで大怪我を負った状態を素早く回復できる薬なんて、この世に無かった物ですわ」
「いや、その人のレベルに合った調整しなきゃいけないから薬としては危なすぎだよ。レベルの低い人が飲んだら死んじゃうし」
「わたくしたち二人の専用というのがもう…。過保護すぎませんか?」
「いやぁ…。私が精霊の森に籠ったら二人が緊急事態に陥っても助けに来れないから、せめて緊急回復アイテムくらいは持っててほしかったの。二人のためっていうより、どちらかというと私が安心感得るためかな。ついでだから、これも渡しておくよ」
「わー、おっきなリンゴ」
「これ、丸々一個食べると寿命が百年くらい延びるの。だから家族で分けて食べるとちょうどいいよ」
「精霊様の果実!? なんて物をお出しになりますの!?」
「二人は成人するまで食べちゃダメだよ。発育遅くなるから」
「お、お姉様、お待ちになってくださいまし! このような貴重な物、受け取れませんわ!!」
「私が精霊だって分かったのに、誰も精霊の果実の事を私に聞いて来ない。それって、お義父様あたりが話題にしないように止めてるよね? そこまで私に配慮してくれる人たちだからこそ、渡すんだよ。私はアンジェリカやマーガレーテとその家族に、長生きしてほしいの」
「……正直に申します。確かにお父様から話題にしないようにと固く言い付けられておりました。ですが、これは…」
「やっぱりか。このリンゴはアンジェリカとマーガレーテの家族限定で分けて食べて。何度も食べると人を精霊化しちゃうからそうそう渡せないんだけど、私の精神安定のために、この一回だけ受け取ってよ」
「お姉様……」
「これって、食べると若くなっちゃう果物?」
「あー、物語ではそういうの多いけど、若くはならないかな。食べると元気で長生きにはなるけどね」
「…町のおじいさんやおばあさんにあげちゃダメ?」
「優しいアンジェリカはそうしたいだろうけど、みんなにあげるほどの量は無いの。そうするとね、貰えない人が不公平だって怒り出しちゃうよ」
「…私たちが食べるのは怒られないの?」
「内緒にできればね。お土産みたいなものかな。遠くに行ってお土産買って来た人は、お土産をあげたい人のために買って来たんでしょ。それは町の人たちみんなへのお土産じゃないから、みんなは食べられないよね?」
「あ、そっか。アカリ姉様が私たちに食べてほしくて持って来たものだから、みんなにはあげられないんだ」
「そうそう、そんな感じ」
「…精霊様の果実が、お土産と同レベルですの?」
「そりゃそうよ、精霊である私のお土産なんだから」
「なんだか納得がいくようないかないような…」
「ただこのリンゴはアンジェリカやマーガレーテの家族へのお土産だから、お義父様やアドルフ叔父様と相談して、家族で分けて食べてね」
「…承知いたしました。アンジェリカ、このリンゴのことは、家族以外には絶対に内緒ですわよ」
「うん。アカリ姉様が私たち家族のためだけにってくれたんだから、他の人には内緒!」
「うん、偉いね。じゃあ他の人に見つからないうちに仕舞って仕舞って」
「はーい」
「…改めて考えてみると、アンジェリカやわたくしは、とんでもなく恵まれていますわね。たとえ大国の王族でも手に入れられないものを、お姉様からたくさんいただいていますわ」
「? アカリ姉様は精霊様だよ。だから私が苦しい時も、いっぱい助けてくれるの。私、アカリ姉様大好き!!」
「私もアンジェリカ大好きだよ。ぎゅーってしちゃう!」
「きゃははははは」
「…アンジェリカ、あなた大物ですわね」
「私、そんなにおっきくないよ?」
「そうだよねー。アンジェリカは可愛いよねー」
「アカリ姉様も可愛いー!」
「このちびっこ二人は……。わたくしも混ぜなさい! えい!!」
「きゃははははは」
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