引き籠り準備
休暇六日目。
今日は、昨日廻りきれなかった工業区に行って、大判の布や金属のインゴットなんかを手に入れるつもりです。
精霊の森ではなかなか手に入らない品が多いので、買い逃したくはなかったの。
本来工業区は卸業なので一般小売りはしないんだけど、そこは注文主が代官であるアドルフ叔父様になることでクリア。
仕入れ業者のごとく、他のお店に迷惑が掛からない程度に大量購入していきます。
雲隠れすることにしてから領都でも仕入れてたんだけど、フウタに作って貰った崖の家をフィリーネとの二人住まいに改装するから、材料足りないのは困るんだよね。簡単には買い足しに来れないから。
アンジェリカやマーガレーテとはもう少し一緒にいたいんだけど、早く気持ちにけりを付けないとあちこちに迷惑掛かっちゃいそうなんだよね。
天使騒ぎは教会本部の大改革にまで発展してるみたいだから、敬虔な信徒が実権握れば、天使降臨をお金儲けに使おうとした奴らなんかより、よっぽどマジに探されそう。
それに、私宛の婚約申し込みもマズいんだよね。
今は公爵家の家格で断れてるけど、国外の王族とかから打診されると、さすがに断りづらい。
今はまだフランクリンのところに魔導師が留学してる段階だから、国外の新型魔導機器製造技術者なんてそう簡単には増えない。
で、うちの国を見てみると、公爵家の養女が指導的立場になるほどの実力を持ってる。
マーガレーテは公爵家の継嗣だから嫁には出せないけど、養女の私ならと声を掛けて来る未来が見えちゃってるんだよね。
なにせ新型魔導機器の製造技術者養成のためにかなり派手に動いてたから、しっかり調べられたら国外からでも情報は手に入れられるはずだ。
だから他国に出たことにしてさっさと雲隠れしないと、国や公爵家に迷惑が掛かるんだよ。
私が新型魔導機器を開発したのは、世界に新型魔導機器を普及させることが主目的じゃない。
あくまで例の二国にお灸を据えたかっただけで、その目的はほぼ達成してるから。
国内への普及にがっつり協力したのは、例の二国にダメージを与えるために公爵家や国を利用した見返りなんだよ。
だから他国は、その国で頑張って技術者養成してください。
それに、私自身思うところがあるの。
私ってば精霊なのに、最近しばしばそのことを忘れ、人だったころの感覚でいるんだよね。
さっきも食材大量買いしそうになったし。
これってヤバいよね。
精霊は人なんかよりはるかに強大な力を持ってるのに、感覚が人に戻っちゃったら危ないよ。
それは人が精霊の力を使えちゃうようなものだから、感情が暴発したら被害甚大になっちゃうもん。
二年の療養生活で精霊的思考に慣れたはずだったんだけど、元が人間だけに、ずっと人の中で暮らしてると人間的思考に戻るのが早かったみたい。
だから一度精霊の森に帰って、感覚を精霊基準に戻したいんだ。
それに、精霊になりかけてるフィリーネも精霊の森に連れて行ってあげたいし。
私の事を慕ってくれるアンジェリカとマーガレーテには寂しい思いをさせちゃうし、私自身二人と別れるのはすごく寂しいけど、二人はいずれ私を置いて逝く。
これは寿命が全く違う種族なんだから当たり前のことだ。
だから私の考えを二人に話して、一応納得はしてもらってる。
マーガレーテには思い当たる節があったみたいで、アンジェリカを一生懸命説得してくれたから。
だからこの一週間は楽しい思い出をいっぱい作ろうとしてたんだけど、終わりが近付いて来ると楽しさに浸りきれなくなってきた。
楽しく笑ってるんだけど、ふとした瞬間に寂しさが滑り込もうとして来る。
二人も私と同じみたいで、言葉が途切れた瞬間に表情に影が差すんだよ。
あぁ、ダメだこれ。
これ以上街遊びしてても、無理して遊んでるみたいになりそう。
正直に二人に聞いてみたら、自宅に戻って一緒に過ごしたいって。
私もそうしたい気分だったので、予定を切り上げて自宅に戻りました。
自宅に戻って私を挟むようにくっついた状態でソファーに座り、二人にプレゼント。
ディーネさんのお水にはまったく及ばないけど、私ができる限り神力と魔力を込めたお水を渡します。
ただこのお水、私の技術が未熟なために、時間経過で神力と魔力が激減しちゃうんだよね。
だから二人には、速攻で他次元庫に入れてもらいました。
このお水、マーガレーテ用の緊急回復アイテムとして作ったの。
レベル14のマーガレーテなら、小さな香水瓶サイズで魔力ゼロから満タンになるくらいの分量にしてあります。
最初はマーガレーテだけに渡すつもりだったんだけど、アンジェリカも他次元庫開けるようになったし明日にはレベル14になるので、二人に渡すことにしました。
このお水は魔素の実みたいなものだけど、二人は私の魔力でずっとレベルアップさせてるから、私の魔力に対して親和性がかなり高くなってる。
だから飲めば、魔素の実よりかは素早く魔力が回復するはず。
神力も込めてあるのは、大怪我を負って魔力も底を突いた場合の緊急用だから。
飲めば怪我をかなり癒せるだろうし、魔力も数分で回復するはず。
魔獣との乱戦後とかで万一複数レベルアップしちゃっう場合でも、神力で何とか細胞の壊死を防げるんじゃないかって期待もあります。
ぶっちゃけ、スタンピードに巻き込まれて魔力切れまで戦い、大怪我を負った場合を想定してます。
二人の専用だから、決して他の人には使っちゃダメな仕様だよ。
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