メトニッツ探検隊 5/5

2024.8.16誤字修正(誤字報告ありがとうございました)

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……アンジェリカに叱られた。

みんなの夕食がなくなるから、そんなに買っちゃダメだって。


はい、その通りです。

爆買いツアーのノリで食材も買い漁ろうとしてたけど、よく考えたら、私ってば精霊じゃん。

別に食べなくても生きていけるんだから、食材を大量にため込んでも死蔵する可能性が高い。

それはさすがに、食材にも作ってくれた人にも申し訳ない。


仲良しの二人と楽しく街歩きしながら爆買いしたからか、意識が人間基準に戻っちゃってたよ。反省反省。



反省しつつ夕食の食材買ってたら、マルシェの端で騒ぎに出くわした。

なんてこった、今日は厄日なの?


お酒や食事出してる店先のテーブルで、顔見知りの兵士さん二人に男が捕まえられられてた。


「あ、あのおじさんまた騒ぎ起こしたんだ」

「アンジェリカ、知ってるの?」

「うん。よくお酒飲んで暴れて、みんなに迷惑かける人」

「うわぁ…」


アンジェリカは日中しか町には出てないはずなのに顔覚えられるって、それ昼日中からお酒飲んで暴れる常習犯ってことじゃん。

既に兵士さんが取り押さえてるから関わらないでいいかと思ったのに、よく見るとガタイのいい男が連行を止めている。


「止めろ。酒の席でちょっと羽目を外しただけじゃないか。お前たちも道場の先輩を捕まえたくは無いだろう」

「ガズロス師範、邪魔しないでください。もう何度も注意してるのにまた騒ぎを起こしたんです。さすがに捕縛します」

「止めろと言っているだろう。いいから放せ」


あぁ、素通りしたかったのに、こんな阿呆は見逃せん。また口を挟むか。


「そこの男。あなた、兵への命令権があるのかしら?」

「何? …女が口を挟むな。引っ込んでいろ!」

「何この屑男? 母親に産んでもらわなきゃこの世に出られなかったくせに、そんなことも理解できないの?」

「なんだと!? 女だてらに剣なんぞ下げるな、腹立たしい!」

「何の話をしてるのよ。こいつ、言葉の意味も理解できないほどアホなの?」

「うるさい! すっこんでろ!!」

「どこまでアホなのよ。お前が今やってることは、騒ぎを鎮めようとする兵士を妨害する犯罪行為よ!」

「違う! 俺は道場主として、門下生を守っているだけだ! それのどこが悪い!!」

「愚か者! 指導する立場にあるなら、門下生に騒ぎを起こさせるな。そしてお前も、周りの人間や兵に迷惑をかけるな! それで指導者とか、聞いてあきれるわ!」

「この俺を侮辱しやがって…。いいだろう、お前に決闘を申し込む」

「そう。じゃあ決闘方法は、算術勝負ね」

「なっ!? 神聖な決闘を侮辱するか!?」

「なぜ算術勝負だと侮辱になるのよ。ひょっとして自分が得意な剣の勝負でもしようとしたの? それこそ決闘を侮辱した卑怯者じゃない」

「…もういい。抜け!」

「どこまで愚かなのよ。周りに大勢の一般人がいる中で剣を抜くなんて、お前の剣は弱者を傷付けるための物みたいね」

「もう死ねっ!! グアッ!?」


屑男が斬りかかって来たので、魔法で空中に浮かべて剣を取り上げ、目の前でぐにゃぐにゃにしました。

ついでにちょっと頸動脈を締めてるけど、このまま気絶させた方が面倒が無くていいよね。


「私はね、お前と違って周りに迷惑掛ける気は無いの。それに、私の剣は魔獣を切裂いて弱者を守るための物よ。お前ごときに使う気にもならないわ」

「ウグ、ガッ」

「ああ、しゃべらなくていいよ。お前の見当はずれな主張なんて聞かせると、周りの人の耳が腐るから。そこの兵士さん、そっちの酔っぱらいは、何度騒ぎを起こしたの?」

「…すでに数十回以上です」

「ダメじゃない。迷惑行為をした者は、一回目は厳重注意、二回目は捕縛警告、三回目は捕縛でしょ」

「申し訳ありません。その…俺も門下生だったんで、師範が出てくるとどうしても、強く出られなくて」

「門下生だったのなら、なおさら規定通りしなきゃダメよ。他の者が三回で捕まるのにそいつが何十回も捕まらなかったら、同門だから優遇したってことになるのよ。町の人たちから見たら、依怙贔屓する兵士なんて信頼できないでしょ」

「申し訳ございません!」


兵士さんと話してたら師範らしき男が気絶したので、下ろして兵士さんに捕縛してもらった。


【マーガレーテ、アンジェリカ。このままだと兵士が依怙贔屓してた印象が強く残る。だからきっちり謝罪するよ】

【そうですわね。承知しました】

【はーい】


「周りの人たちに、シュトラウス公爵家に籍を置く者として謝罪します。迷惑な者たちをのさばらせてしまってすみませんでした」

「わたくしも、シュトラウス公爵家次期当主として謝罪いたします。我が領の兵に規律が徹底できておらず、申し訳ございませんでした」

「私も謝ります。うちの兵士さんたちが依怙贔屓しちゃってごめんなさい」

「そんな! 本家のお姫様やお代官のお嬢様に頭を下げていただくようなことじゃございませんぜ!」

「そうですよ! こいつらを注意しなかった俺たちも悪いんです。ですから、頭を上げてください!」

「そうよ」「そうだ」「お願い、頭を上げて」

「ありがとう皆さん。ですが、こういった小さなことから規律が緩み、やがては大きな不正に繋がることもございます。今日ここで起こったことを、わたくしは戒めとさせていただきます」


再度マーガレーテが頭を下げたことで、周りにいた人たちから拍手が聞こえ始め、やがては万雷の拍手になった。

よし、何とか印象は改善したかな。

さあ、退散しよう。

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