ピクニック

2024.8.16誤字修正(ご連絡、ありがとうございます)

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なんだかアンジェリカとマーガレーテに抱き着き癖が付いた気がするけど、私自身うれしいから叱る気になれない。

ただね、私が分体でいると二人が私の胸に埋もれようとして来るの。

すごく締まりのない顔で私の胸にくっついて笑ってるけど、お外でその顔はしちゃダメだよ。


ほら、今日はお弁当作ってお出かけだから、そろそろ離れようか。

まあメインはバーベキューなので食材の下ごしらえがほとんどだけど、五人分だから手伝ってよ。


今日はね、コリンナとフィリーネを誘って川遊び&バーベキューなの。

残念ながらブリジットはアンジェリカの代わりにエルヴィーノのお世話してるらしく、今回は不参加です。


川を三十分ほど上ったところに支流が合流してて、そこから支流を上るときれいな渓谷があるらしい。

だからきれいな川で川遊びしようと思って。


コリンナとフィリーネがお弁当用意するって言ってくれたんだけど、アンジェリカやマーガレーテと一緒に作ってみたいからと断ったの。

だから今日は早めに起きて、三人でバーベキューの下ごしらえです。


こういった作業をするときは分体の方が楽なので、今日は分体で作業。

アンジェリカが、お皿や食材をとことこ運んでる姿が可愛い。

私も本体でいる時って、あんなふうに見えてるんだろうか。

だとしたら可愛いと言われるのも納得がいくかも。


二人は慣れない作業にドタバタしながらも、何とか準備を終わらせて船着き場に移動。

コリンナとフィリーネはもう来てた。


今日は八人乗りの小型舟を借りて、川を遡上します。

この舟は櫓や櫂じゃなくて、棹を使うタイプ。

上流に行くと浅い場所も多いので、このタイプがいいらしい。


人目があるところでは一応私が棹を操ってるふうにはするけど、実際は魔法で舟を遡上させるから楽ちんです。

さあ、出発しよう。


アンジェリカ、あんまり身を乗り出さないで。

お魚見れてうれしいのは分かるけど、絵面が怖いから。

まあ、落ちそうになったら魔法で止めるけど。


メトニッツから下流は川の流れが緩やかで櫓や櫂での遡上も可能だから、メトニッツは周辺の村々からの産物を舟で下流に運ぶ拠点になってるらしい。

対して上流は流れが速い場所が多いので、ほとんど上流に行く舟は見かけない。

だから船着き場が川の蛇行で見えなくなったら、私も座って魔法クルージング。うむ、快適。


教えてもらった支流に入ってしばらくしたら、渓谷っぽくなって流れが急に。

魔法使ってるから遡上は簡単なんだけど、川下りみたいで結構揺れるぞ。

アンジェリカが酔ったら可哀想だ。


「あれ? アカリ姉様、お舟が水から離れたよ?」

「うん、波が強くて揺れるから、酔わないように浮かせたの」

「そうなんだ。揺れるのちょっと楽しかったのに」

「揺れすぎると気持ち悪くなるからね」

「へぇ~」

「…お姉様、舟が空を飛んじゃってます」

「誰も見てないからいいかなって」

「…メトニッツへの救援の時、こうすれば複数人で行けたのでは?」

「そうすると魔力かなり使っちゃうから、魔獣と戦うまでに魔力減っちゃうでしょ」

「…そうですわね。でも、神力ではなくて魔力でも飛べるんですのね」

「飛べるっていうより、浮かせた物に載ってる感じかな。マーガレーテも、一時間くらいならこの舟浮かせられるでしょ」

「浮かせられますが、その上に自分が載って移動する発想はありませんでした」

「人に見られると騒ぎになっちゃうからね。アンジェリカも、人に見られるところでやっちゃダメだよ」

「はーい」

「…魔力で身体だけを浮かせようとすると、結構難しいですわ」

「試しちゃったか。物は持ち上げるイメージで済むけど、身体だと全体を包むように持ち上げないと、バランス崩れたり一部だけに力が加わって痛かったりするんだよ。靴だけ持ち上げようとすると、ひっくり返って怪我するから気を付けてね」

「…ベッドの上で練習します」

「大きなお風呂だと泳げるよ」

「泳げるようになるのですか!?」

「厳密には水の中で身体を魔法で持ち上げてるから、泳ぐのとは違うけどね」

「お魚さんみたいに泳げない?」

「できるけど、息が続かないから苦しくなるよ」

「そっかぁ~、お魚さんと一緒に泳いでみたかったなぁ」

「アンジェリカの発想もすごいですわ。お魚と一緒に泳ぐなんて、考えもしませんでしたわ」

「水に濡れると服が透けちゃうから、貴族女性には難しいよね」

「ああ、それは恥ずかしいですわね」

「まあ、魔法で服の水分を抜けば一瞬で乾くけどね」

「アカリ様。その魔法、私には使えませんか?」

「えっと…。コリンナはレベル6くらいだよね? 魔力量的にはなんとかなるけど、魔素制御頑張らないと難しいかも」

「魔素制御を頑張れば、なんとかなりますでしょうか?」

「可能だけど、ドレス一着で魔力切れかな」

「う、それですと動けなくなってしまいそうですね…」

「なんか事情あるみたいだね。このあたりは景色がいいから、降りて事情聴こうか」

「はい、理由をお話しします」

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