自慢しぃ仲間

「まあ、それなら受け取るよ。私だってアンジェリカ様が成長してくれるのはうれしいから、うれしい仲間としてね」

「そうか、うれしい仲間か。ところで、アンジェリカはあとれくらいでレベル5になりそうなのだ?」

「多分あと数日だよ。だからここでお願いしておくね。攻撃魔法はわざと教えてないけど、見ればすぐに使えてしまうはず。だから攻撃魔法見せるなら、相手を傷つける覚悟を先に教えてあげて」

「…参考までに聞くが、どのような攻撃魔法ならすぐに覚えてしまうのだ?」

「そうね。炎や氷、土の矢くらいならすぐに……ねえ、私ってひょっとしてうれしい仲間に裏切られてない?」

「は!? す、すまん!! つい興味が先走ってしまった。今の内容も秘匿事項だ」

「やっぱり。まあ色々配慮してもらってるから許すけど、次やったら仲間外れだからね。で、どうして攻撃魔法の内容を話させたの?」

「しっかりと心に刻もう。攻撃魔法というのはだな、実際にはほとんどおとぎ話なのだ。水球をぶつければ途中で地に落ち、火球は空中で霧散する」

「あー、これもヤバいのか。私が教えて、人が傷つくことになるのは嫌だなぁ…。でも魔獣相手なら兵は強い魔法を使えた方がいい。それに、そのうち誰か気付きそうだしなぁ…。でも、ついさっきうれしい仲間に裏切られたばかりだしなぁ…」

「信用を失うことでこれほどの痛手を負うか。兵が攻撃魔法を覚えられるなら、兵の生存確率は上がるだろう。騎士団長としてはなんとしても聞きたいが、信用を失った私は聞くわけにはいかん」

「いさぎいいわね。まあ許すって言っちゃたし、騎士団長が兵を思う気持ちに免じてバラすか。大事なのは、魔素掌握範囲内に魔獣を捉えて魔獣まで魔法を維持、そして魔獣の持つ魔力的な防御層を破壊でして本体にダメージを与えるだけの魔素を込めることよ。発射して終わりじゃだめなの」

「……先程の魔法兵の話からすると、レベルひとつで範囲が倍になるということか。だが、掌握範囲などどうやって調べれば…」

「レベル1の魔素掌握半径は1mよ。ちなみに、魔素感知力が向上すれば、自分の魔素掌握範囲内かどうかなんて、無意識に分かっちゃうわ」

「感謝する。これで魔獣討伐で負傷する兵を減らせる」

「自己治癒の魔法も精度が上がるから怪我も治りやすいし、盾魔法も強度上がるし発現も早くなるから、怪我そのものを負いにくくなるわね」

「いいことずくめではないか! これほどの情報、本当に聞いてしまって良かったのか?」

「アカリ様、私まで聞いてしまいましたが?」

「私から聞かなくても、アンジェリカ様見てて気付くはずだから」

「お嬢様は、すでに無意識で範囲を認識していらっしゃる?」

「前からやってるから。人形遊びの時、机を回り込んで移動することがあるでしょ。あれ、魔素の掌握圏の端の方だと人形動かしにくいって分かってるから近くに移動してるのよ」

「…興奮していて、お近くで見たいのかと思っていました」

「それも無きにしもあらずかな」

「…とんでもなく有用な情報なのに、アンジェリカはすでに実用しているのか?」

「だから魔法の発現規模が、魔法兵より上だったんだよ。アンジェリカ様は、努力して今の魔素制御力を手に入れたの。すごいでしょ」

「今の発言は、姪を自慢したい私がするべきではないか?」

「私がしてもいいじゃん! 愛弟子の頑張りを自慢するんだから」

「それでしたら、専属侍女の私こそ、最初に自慢すべきでは?」

「うれしい仲間だけじゃなくて、アンジェリカ様自慢しぃ仲間になってる!?」


貴族っぽい優雅なお茶会のはずが、なぜだか自慢大会みたいになった。

しかも自分の自慢じゃなくて、同一人物を自慢しようとマウントを取り合ってる。

なんなのこのお茶会?

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