ドールハウス
翌朝も、朝食断って製作に没頭。
これ、ほんとギリギリだな。
え、何メイドさん? は? 急患? うそん…。
講義の時間までぶっ続けで製作しても間に合うかどうかなのに、ここにきて急患ですか。
おっと、ここに来る急患は命の危機がある重篤患者のはず。さっさと移動移動。
治療室入ったら、十歳くらいの男の子が診察台に寝かされてた。びしょびしょで。
すぐに魔素感知で調べたらすでに心肺停止状態で、両方の肺にはかなりの水が入ってる。
魔法で心臓マッサージしつつ、肺から魔法で水を取り出す。
水が結構入ってたので、肺水腫防止に肺胞を撫でるように残った水を絞りながら、魔法で人工呼吸。
背中側が濡れてる兵士さんが運んだんだろうと見当付けて、状況確認。
「この子、溺れてからどれくらい?」
「あ、ほんの少し前です。船から子どもが落ちたって声がして、後続の船の人足が飛び込んで岸まで上げたんですが、息をしてなかったんで担いで走りました。船着き場の横からなんで、五分かかってないはずです」
「そう、ありがとう。良い判断ね。息を吹き返すかどうかは分からないけど、処置が早ければ早いほど助かる可能性上がるから」
「緊急以外頼るなって言われてたんで、怒られるかもって不安でした」
「子どもが溺れて息も脈もなかったら、超緊急事態よ。八分以上経ってたら、助かる可能性なんてほとんど無いから」
「…この子はどれくらい可能性があるんですか?」
「四分としたら五分五分かしら」
「…」
その後、母親がやって来るまでに男の子は息を吹き返した。
助かったけど、容態が急変するといけないので、数時間は様子見にいてもらうことにした。
肺に水が入ってたから細菌感染も怖いけど、ペニシリンはまだ動物実験すらできてない。
ここってかなり上流で川の透明度高いから、使わずに様子見よう。
私はダッシュで自室に戻り、教材製作再開。
お昼もサンドイッチ頼んだ。
結局、教材は完成には至らなかった。
だけど一部でも教材として使えるタイプの物だから、できた部分だけ持ってアンジェリカ様の自室へ。
人生初の魔法指導、上手くいくかな?
挨拶を済ませたら、まずは魔法を使う感覚をアンジェリカ様に覚えてもらうために、パチンコ玉サイズの木製の球を動かすことから開始。
今までアンジェリカ様は魔法なんて使ったことがないから、私が魔素感知しながら、アンジェリカ様の意思に反応した魔素をちょっとだけ補助。
球形で軽い木製の玉をテーブル上で動かすだけだから、これは割とすぐにできる。
ほんの少しでも魔素が反応すれば、楽に転がるからね。
何度か動かしてもらって、私の補助無しでも動くようになったら、次は私が教材用に作った厚めのアイスの棒みたいな木で簡単な迷路を作り、魔法でゴールまで球を誘導してもらう。
木がレール代わりになるので、これも割りと簡単。
でも次はちょっとだけ難しい。
アイス棒を薄い壁のように立てて迷路を作り、ゴールできるまでチャレンジ。
球が壁にあたって倒れたら、スタートからやり直し。
迷路の幅を広めに作ってあるから、球がある程度ふらついても、慎重にやればゴールできるよ。
私は応援役するから、頑張れアンジェリカ様。
ミス無しでゴールできるようになったら、次からがいよいよ本番。
必死こいて作った教材の登場です。
じゃじゃーん! 某動物ファミリーのドールハウスぅ♪
製作が間に合わなくて、ひと部屋とウサギさん一匹しかいないけど。
でも私、頑張ったんだよ? ドアや窓はちゃんと開け締めできるし、ライティングビューロー開いたら、文具だって貼り付けじゃない。ティーカップやソーサー、ティースプーンやデザートフォークだって、一個ずつちゃんと作った。
ウサギさんのドレスだってお着替えできるんだから!
楽しみながら魔素制御上達してもらおうと、細かく作り込みすぎて大変だった。
衣装も可愛くしたかったから、レンズで拡大しながら細かく作ったもん。
さて、気になる幼女の反応は?
「か、可愛い!!」
よっしゃ期待通り! 幼女の目が輝いてる!!
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