雨の下の朝顔

うみべひろた

雨の下の朝顔

 6月が終わったのに今日も雨。

「折り畳み傘くらい持っとくのが女子のたしなみだよ」

 隣を歩くメイちゃんに言う。


「私はマリカちゃんの女子力に全力で乗るから」

 笑うメイちゃんはあと一歩の距離を近づいてくれない。

 だから私の左肩は濡れていく。雨の一粒だってあなたには触れさせない。

 去年までは散々私にぶつかって歩く邪魔してたのに、今は同じことをあの子にしている。私ならどんな迷惑も受け止めるのに。


「朝顔がある」

 メイちゃんは近くの家を指さす。「まだ夏休みは先だよ。もう持って帰るんだね」

 青い朝顔。夕方、まだしおれずに咲いてる。雨に打たれながらひっそりと。


「私もこれくらいで持って帰ったよ」

「早いね、さすがの女子力」

「終業式の前の日に『荷物多すぎて持てない』っていつも誰かが泣きついてくるから」


「マリカちゃんはさ」

 140cmのあなたは睨むときにも上目遣い。本当に大きい目。「昔の事ばっかでおばあちゃんみたい」


「君といた時間が私の全てだから。覚えてたいことなんてもう無いよ」

 これからは私が困らせてやる。あなたのその顔をみせて。

 傘の中で二人。他の誰も私たちの間には入れない。


 永遠に梅雨なら良かったな。濡れ続ける左肩が冷たい。

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雨の下の朝顔 うみべひろた @beable47

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