花と手紙
ナナシリア
花と手紙
青く澄み渡った空の下、花束を抱える。濡れた顔を手で拭う。灼熱のように暑い夏の下でも、苦にならない。
「ごめん、待った?」
息を切らして走り寄る少年に、花束を抱えながら少女は首を振る。
「大丈夫。今来たところ」
少年は顔を上げ、ようやく少女が抱える花束に気が付く。
「これ、どうしたの?」
「君のために、選んだの。今日誕生日だよね」
少女の言葉に、少年の顔は明るくなる。
「覚えててくれたんだ」
「今日、君の家に行くって聞いて、ちょうどいいと思ったから、買ってきた」
自分の誕生日を気にしてくれたという事実、プレゼントについて考えてくれたという事実、そしてプレゼントしてくれたという事実。すべてが嬉しくて、少年のテンションは最高潮に盛り上がっていた。
「もしかしたら、花束なんて迷惑かもしれないけど」
「全然そんなことない。めっちゃ嬉しいよ」
「一応、手紙も用意しといたよ」
そう言って少女が手渡したのは、淡い黄色に柄入りの可愛らしい洋封筒。
手紙といったら真心、真心といったら手紙といっても差し支えないくらいだから、少年はさらに喜ぶ。
手紙なんて内容を考えるのも書くのも手間なのに、それを自分のためにやってくれた。
これは、彼女の誕生日はもっと喜ばれるようなものを用意しないと、と心に決める。
「じゃあ、暑いしそろそろ移動しようか」
「やった。前から家行きたかったんだよね」
お互い、小さなことで喜んでくれるところとか、自分を尊重してくれるところとか、そういうところが好きだった。
趣味が合わないときも、それぞれ相手に合わせたり、やらなければならない仕事があるときは相手の状況を考えて自ら率先して取り組む。
理想的なカップルというか、感覚的にはいい夫婦に近い。
お互い相手を好きに思っているうちに、少年の家に着く。のちに二人が一緒に住む家である。
花と手紙 ナナシリア @nanasi20090127
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