第2話 セガサターン敗北の理由
セガサターンはプレイステーションが3D特化したハード構成であったため、それに対抗するためにCPUをデュアルプロセッサーにし、原価を安くできず一台売るごとに一万円の逆鞘が発生した問題のハードでしたが、なぜこんなことになってしまったのかを考えてみたいと思います。
今でこそ3Dグラフィックはゲーム機に必須の技術になっておりますが、プレイステーションが誕生した頃にはむしろ3Dをゲーム機で表現することの方が多くのメーカーにとって理解できませんでした。
実際、ソニーが任天堂のCD‐ROM開発に頓挫して自社製品のR3000ユニットを引き下げて、メーカーを回ったがナムコ以外はその有用性を理解できませんでした。プレイステーションのグラフィックシステムは当時としては画期的で、CPUにジオメトリ演算があるがバックグラウンドも一画面しか持たず、スプライトもありませんでした。
要するに3D機能しかなかったのです。多くのメーカーはこの特殊なハード構成でスプライトをどうして使ったらいいか分からず苦労しますが、それなのに多くのメーカーがなぜプレイステーションを選択したのでしょうか。
これにはセガが大きく噛んでいます。ここではセガの目からどうしてソニー躍進に加担してしまったのかを考えていきたいと思います。
セガサターンは最強の2Dグラフィックゲーム機として開発されました。当時アーケードにあったラッドモービルの基盤よりも高レベルのグラフィック表現ができ、STVとしてアーケードとコンシューマーで同じシステムを用いることで開発費を抑制できると言う触れ込みで開発されました。
ただ当時のセガは家庭用ハードと同じくらい戦略的にアーケードハードを作っており、マーチンマリエッタ(現在のロッキードマーチン)の軍事ハードを利用した3Dゲーム機モデル1のバーチャファイターやバーチャレーシングが発売されると、3Dゲームが大きな脚光を浴びることになります。
このゲームの登場により3Dの凄さを多くのゲームメーカーに気づかせ、プレイステーションを躍進へと導きます。
このことを一番苦しんだのは当のセガです。究極の2Dゲームハードとしてデザインされたセガサターンをソニーに対抗するため、直前で3D機能を搭載する必要性に迫られました。発売まで時間もなく一から作成する余裕もなかったセガはCPUを二つにすることを決断します。片方のCPUをジオメトリ演算ユニットとして用いることにより、3D表現ができるようにしたのです。
が、当初3Dハードで設計されたプレイステーションと違い、このCPUでどうやって3Dゲームを開発するのか多くのメーカーは頭を悩ませ、結果サターンでは3D表現は難しいという印象を植え付けることになります。
セガは自社の3Dゲーム技術をOSに転用することにより、ソニーに対抗しますが、このシステム拡充に時間が食ってしまいユーザーにもセガのハードは擬似3Dという印象を植え付けることになります。
それでもバーチャ2などアーケードからの移植を早い時期に行うことによりプレイステーションに並ぶ実績を上げ、エニックスに開発依頼を出し、サードパーティへの契約も取り付けたのですが、このタイミングでスクウェアのファイナルファンジー最新作がプレイステーションに登場すると言う報道が流れます。
一年先の発売予定でありながら、ファイナルファンジー7始動のコマーシャルなどを出したことにより、エニックスのサードパーティ報道は色褪せたものになり、結果的に北米市場では任天堂にも負け、国内においてもソニーに大きく引き離され、負けハードのイメージがついてしまうのですが、これはある意味初期のアーケードとコンシューマー開発が二極化していたことも大きく影響したと思われます。
もし、一枚岩であれば、自社ハードが3Dを持たないなら、アーケードも2Dを選択したでしょう。恐らくソニーのハードは日の目を見なかったと思います。
任天堂のように家庭用がこれからのプラットフォームと思えばアーケード開発さえも辞めてしまうような開発体制であれば良かったのかもしれませんが、これは結果論であり、そもそもゲームセンターがここまでダメになるとは誰も思ってないし、先を見越して開発した次のハードであるドリームキャストでもソニーに完全に敗北してしまったので、これだけでセガはソニーや任天堂に勝てないとはならないです。
そもそもセガのゲーム開発を一番評価していたのはナムコであり、サミーとの合併の時、セガナムコでいいから合併したいと猛アピールがあったようです。
結果的には親会社が株をサミーに売ることにより、セガ社員の気持ちはおざなりにされ、多くの離脱者が出ました。
その後、セガは凄いメーカーから、普通のソフト開発メーカーになってしまいますが、セガを一番評価していたのはナムコだったかもしれませんね。
ハード戦争 その1 楽園 @rakuen3
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