カクヨム次回作を色々と考えてますが、書いてて
あーこれ失敗だな、と冷静になって辞めることは
多いです。
せっかくなので置いておきますね。
2話までです。
タイトル未定 1話目
ここはテラージア王国第一魔法大学附属高校の正門前。俺―ルッツ―ルキウスは荘厳な雰囲気の正門を見ながらドキドキしていた。まさか合格するとは思ってなかった。
俺は魔法の素点が謎に高く、学科の点数が良かったことから合格になった。魔法ランクは五歳の時から変わらずランクE。これじゃあ、裏口を疑われても仕方がないよな。
魔法には基礎点と言う生まれ持った基準値と現在の魔法ランクがある。基礎点は一生変動しないが、ランクは努力次第ではいくらでも上がる。
生まれた時に基礎点が1万もあれば果ては魔法大学の先生だとか、あるいは王国お抱えの魔法使いとか、将来の夢も膨らむのだが……。
流石に生まれた時に150,000はあり得なくね。両親達はあまりの驚きに腰を抜かしたものだった。
そんな驚きもランクがEから全く上がらないとなれば、周囲の落胆も目を見て分かるようになる。
だから記念受験のつもりで受けたら受かってしまった。
「俺、なぜこの学校に合格したんだろうな」
基礎点は魔法石で測らないと分からないのだが、ランクは魔法使い候補ならば見ただけで分かる。流石にみんなAランク超えは当たり前で、Sランクと言うのもいる。
「君、学校間違えてるんじゃないのか?」
正門に入ろうかと足を一歩踏み入れたら、後ろから声をかけられた。正直、振り返るのも嫌だが、無視することは今後の学園生活に大いなる影響が出てくる。
「いえ、そんなことはないですよ。俺もこの学校の生徒なので」
そう言って振り返ると無茶苦茶キザな金髪の男が目の前にいた。
「へえ、俺はローレン―ハイゾンだ。あの名門ローレン家の長男にして、Aランクなのだが、君は見たところランクはあまり高くないようだが……」
「すいません。俺はEランクなので、能力は高くないのですが、なぜか合格してしまいました」
俺がそう言うとハイゾンは馬鹿にした表情で俺を嘲笑う。あー、こう言うやついるよね。今までも大勢見てきたよ。
「ははははっ、まさかEランク? それは笑えるな。Eランクで、あぁ、もしかして君は召使なんだね」
俺の合格したと言う言葉を無視して目の前の男は俺を明らかに馬鹿にしてきた。
「すいません。俺も同じ学生なので正門からに入りますね」
その言葉を無視して俺を遮るようにハイゾンは俺の前に立つ。
「同じ学生だと! 君は何を言ってるのかね。Eランクがこの正門から入って良いと思ってるのかい。召使いなら召使い用の入り口があるだろ。ほら、そこだ。そこから入りたまえ」
明らかに俺のことを挑発しているようだ。要するに俺を怒らせて魔法対決をしたいのだろう。あからさまに馬鹿にした表情で入学早々本当に不愉快だ。
「魔法の能力は高くないので、魔法対決なんかしてもとても勝てないと思います」
「だからさ、そんな君がなぜ、この学園に入学できるんだね。どうせ、誰かの口利きで裏口入学だろ! まさかこの魔法大学附属が裏口を許すなんてあり得ないと思ってたがね」
正直、面倒くさい。出来れば戦いたくはないのだけれどな。俺がそう思っていると後ろから声がした。
「ハイゾン! この方に失礼よ! ランクなんて合格基準に必要ないのは、あなただって分かってるでしょ」
俺が振り返ると銀髪の美少女がそこにいた。あれ、この人見たことあるな。
「これはテラージア―ラクス王女じゃありませんか」
「ハイゾン。ここは王室ではありません。それよりも、わたしの言ったこと分かるよね」
「分かりますが、こいつは裏口入学した不正の輩なので、わたしがこうして糾弾させていただいているのです」
「……と言うことは、ハイゾンはわたしの学園で不正がまかり通っていると?」
「いえ、そんなことは言っておりません。ただ、学校関係者も金を積まれたら、魔がさして、そのような悪事に手を貸すものも」
「あなたは学園を愚弄するおつもりですか! この方は正式なテストにて合格されたのですよ。もし、不正を糾弾したいのならば、直接、学校に言うべきです!」
ハイゾンはそれを聞くと肩をすくめた。
「王女様がそうおっしゃられるのなら、わたしは何も申しません。それよりも王女様にも色々お噂が……」
「あなたはわたしまで愚弄するおつもりですか? もしそうされるのなら、わたくしも考えがありますわよ」
「いえ、そのようなつもりはありません」
そうか。この娘が噂のラクス王女なのか。ハイゾンの態度は行きすぎたものだがラクス王女にも色々な批判が集中していた。
なぜ、皇室御用達の第二魔法大学ではなく、難易度の高い第一魔法大学附属高に入学したのか、とか最近発表された論文はパクリじゃないのかなど。だから、ハイゾンの対応の悪さもそこから来てるのだろう。
ハイゾンがそのまま正門を通って学校に入るとラクス王女は俺にニッコリと笑いかけた。
「ごめんなさい。ハイゾンも悪気があるわけじゃないんですよ。ルキウスが色々言われるかも、と言うのもわたしは分かってました」
「えっ!? 王女様は俺のことを知ってるのですか?」
「もう、ここでは王女様は無しですよ」
屈託なく笑う表情が正直可愛い。数年前まではファンクラブができるくらいの人気だったんだから、当たり前だろう。だが、王女の能力が高くなるにつれて非難が沸き起こってきた。
「すいません。それじゃあ、テレージア様は……」
「テレージア様も禁止!」
「えっ」
目の前で屈託なく笑う。正直、無茶苦茶可愛い。まるでそれは天使の笑顔だった。
「もう、テレージア様なんて言わないで。わたしとルキウスは学友よ。だからラクスで良いですからね」
「いえ、そんなわけには行きませんよ。ラクス様」
「様も禁止、だよ!!」
そう言って舌を出す。なんなんだろう。魔法テレビに映る映像やポスターなどの表情と全く合わない。
「ほら、そんなことより行きましょう。君は間違いなくこの学園の生徒なんだからね」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「おかしいよ、それさ。わたしが選んだみたいじゃない」
「そうじゃないんですか?」
「そんなわけないよ。基礎点が15万なんて、あっ……お父様がおっしゃってたから……」
そう言って手を合わせてごめんね、と舌を出した。なんか思ってたイメージと違うな。
この王女との出会いが俺の人生を大きく変えることなど、この時の俺は知るわけもなかった。