主人公の感情の描写が良く書けていてひきこまれました。色々と考えさせられる作品で面白かったです。
只の怪談と思いきや、読み進むうちにその人の死生観に突き刺さるような展開に身を震わせる、秀逸な文芸作品。作者の技巧が光る、問題作と言えるのではないか。
菊華の咲き乱れる野原に一人、死んだ女の嘆く声が風と共に呪詛の如く響き渡る。自らのさだめを嘆き悲しみながら、土の下から黝々と呪詛を吐く。暗い土中の骸にあれど、芳しい菊華の糧となる。同じ名を持つ、盲いた あの子 は。さだめとは、馬鹿馬鹿しくも思うに任せず只ひたすらに嘆いたとても儘ならぬもの。せめて見届けながら送り出す。炎天下に濁流の跡。