第17話 最終話・約束の地カナン

「これを御覧なさい」と、女神イリスが、空中に光のモニターを作った。外の様子が見える。どうやら、東の月の都の、リーリア姫の城の外観のようだ。

 民衆がつめかけ、「リーリア姫を交代せよ!!」「浮名を流すリーリア姫はいらない!」「東の月の都の連中と仲良くしやがって!!」などと、民衆が叫んでいる。

「これはひどい・・・」と、アイレスが呟く。

「ヴェロニカも、リーリア姫としているのは限界のようです。昨日、あなた方は一緒に湯あみしたそうではありませんか。その噂が、すでに広まっているそうです」と、女神イリス。

「・・・・」アイレスは片手で頭を押さえた。頭痛がする。

「女神イリス様、ヴェロニカを助けてやってください」と、アイレスが言った。

「そうですね、手はもう打ってあります」と、女神イリス。

「最期に一つ。ヴェロニカを、ディアスに譲るつもりはありませんか」と、女神イリスが言った。

「弟に??」と、アイレス。

「ヴェロニカの幸せを願うなら、彼にあげなさい」

「それはできません、」と、アイレスが言った。

「俺もヴェロニカを愛しています」と、アイレスが首を振る。

「ならば、二人で行きなさい」と、女神イリス様が言って、祭壇から少し離れた。

 驚くべきことに、祭壇の後ろから、ぬっとヴェロニカが姿を現した。

「ヴェロニカ!!」と、アイレスとヴェロニカは抱き合った。

「隠し通路を使って、連れて来たのです」と、女神イリス。祭壇の後ろの床の下に、隠し通路があったようだ。

「惑星ティアドロップスの生き残りの二人よ、別の世界で幸せになりなさい。二人には、星になる権利を認めます」と、女神イリスが言った。

「星に??」と、アイレス。

「約束の地カナンへ行く、という意味です」と、女神イリス様が言った。

「おとぎ話で聞いたことがあります・・・」と、ヴェロニカが呟く。

「ディアスは?弟も連れて行っていいでしょうか??」と、アイレス。

「いいでしょう、あなたがそう望むなら」と、女神イリス。

 ディアスは、ヴェロニカを、城に乗り込もうとしてる野次馬を蹴散らそうと、東の月の都に行こうとしていたところで、女神イリスから呼び出された。

「惑星ティアドロップスの生き残りの三人よ、」と、女神イリスが、三人を見て言った。

「約束の地カナンにて、永遠の幸せを授けましょう」と、女神イリスが言った。

「ヴェロニカ、ここから逃げよう!」と、アイレスとディアスが言った。

 二人に手を取られ、ヴェロニカは、アイレスとディアスと共に、階段をのぼり、女神イリスの作りだした異空間の戸口の向こうへ、姿を消して行った。


                      *


 第33代・リーリア姫には、最も近い親族でもあった、センディーヌ姫が就くこととなった。

西の月の都の国王は、選挙で選ばれた別の人がなった。


約束の地カナンで、3人は楽しく暮らしていた。公務からも解放され、王族としての責務や人の目を気にすることなく、3人は仲良く暮らした。

 ヴェロニカは、花畑の咲く綺麗な庭を眺め、先月産まれた、アイレスとの子(女の子)を抱っこして、微笑んでいた。

幸せに包まれた一家は、その後、楽しく永遠に暮らしたという。


                                                《完》





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月の都ジュエル ~秘匿の姫~ 榊原 梦子 @fdsjka687

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