第3話 戦闘開始

「そろそろ時間ね……」


 廊下に出て、歩いていると玲奈ちゃんがボソリ、とそう呟きました。


 気づけば、時刻は六時半へと近づいていました。


 少しずつ、時刻は魔女襲撃へと近づいています。

 同時に、場には緊張感が走っていました。


 実際、魔女とはどんな見た目なのかすらわからないのです。

 正直、帰りたい気持ちもあります。


「冬子は、遠くから狙撃して。私は三人の援護をするから奈津と穂乃果はどんどん接近して」


 たった一時間で玲奈ちゃんがリーダー的な存在へとなっていました。

 リーダーのような雰囲気が溢れる子です。

 当たり前の結果です。


「おうよ!」

「そうですね、それが一番良さそう。黒宮さん、援護は任せましたよ」

「ええ。みんな、魔女を見たこともないし、そもそも戦いなんてものも初めてで緊張と恐怖があるのは当たり前。けど、これは世界のため。頑張るしかないの、いいみんな、わかった?」


 私は両手に拳を作りました。


 そうです。

 やるしかないのです。

 怖がっていてはダメなのです。


「うん、わかった」


 私はそう言い、決意しました。

 何もかもが普通な唯一輝ける瞬間なのだから。


 長い針が三十になりました。


 同時に、ゴーン、ゴーン、という時計の音が校内中に響き渡ります。

 聞いたことのないチャイムです。


「魔女はどこにいるの」

「はやく力を発揮してみたいもんだなあ! 最初はチュートリアルらしく雑魚がいいけどな!」


 戦い方はどんな感じなのでしょうか。

 魔法少女の姿になったとはいっても、身体能力はそのままのようです。

 鎌は持ってみましたが、かなり重いものでした。

 魔法に頼るしかありません。


 使いすぎたら死んじゃうし、難しいよお。


 と、その時でした。


 私たちは足を止めました。


「あの影がそうみたいよね」

「ええ、あの影が魔女で間違いなさそう」


 目の前には、宙に浮いたドレス姿の影がありました。


 ああ、ついに現れてしまいました。


 私は、鎌を手に待ちます。

 他のみんなも、手に武器を持ちました。


 ギュッと、鎌を持ちました。


 やれる、うん、やれるはず!


「よしッ、ほのっち行くよー」


 と、奈津ちゃんが私の右肩に手を置きました。


 ほのっち……。

 あまり友達のいない私からするとあだ名をつけられるだなんて、なんて嬉しいことでしょうか!


「うん!」


 私と奈津ちゃんは黒い影に向かって走り出しました。


 一瞬にして、奈津ちゃんと私には距離ができていました。


 足早い……。


「おっりゃー!」


 奈津は、剣を振ったのが見えました。


「ちっ」


 一瞬にして、魔女は目の前から姿を消し、気づけば……


「えっ」


 私の目の前には、まるで人形のような姿をした魔女がいました。

 次の瞬間、魔女の両手が私の首をめがけて伸びてきました。


 あっ、死ぬ……。


 カンッ!!


 私と魔女の間に、透明な壁ができていました。


 その場に尻餅をつきました。


 下腹部が暖かくなっています。

 ポタポタ、と水滴が床に垂れています。


 考えたくありません。

 お漏らしをしてしまったのです。


 恥ずかしい……。


「大丈夫、桃崎さん。私が守るから」


 パンッ!!


 魔女に光る矢が飛んでいきました。


 パンッ!!

 パンッ!!


 次から次へと飛んでいきます。


「ギュアアアア──ッ!!」


 叫び出す魔女。


「はいはい、うるさいよー」


 魔女の後ろから、走る奈津ちゃんの姿が見えます。


 ピカン、と奈津ちゃんの持つ剣は青色に光出します。


「くらいな、私の一撃!」


 奈津ちゃんは、剣を振りました。

 その一撃は、魔女の右腕を斬り落としました。


 血が出るものだと思いましたが、血は出ませんでした。


「ならなきゃ」


 私は立ち上がりました。


 魔法使いとして、魔女を倒さなきゃッ!!

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水之原高等学校魔法少女委員 さい @Sai31

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