第2話 寿命

「私の名前は黒宮玲奈。A組です、よろしくお願いします」


 ロングヘアの女子生徒がそう言いました。


 なんだか感情を読み取れない、不思議な人です。


「次は私が! 私の名前は、青島奈津。クラスは、D組よろしく!!」


 ボブの女子生徒がそう言いました。


 元気いっぱいで、全くもって緊張感のない人でした。

 

 ニコニコと、こちらを見てきました。


「私は、桃崎穂乃果です。三年F組です、よろしくお願いします」


 と、頭を下げました。


 最後に挨拶をしたのは、姫カットの女子生徒。


 彼女は、自己紹介をしなくても名前を知っています。


「私の名前は真白冬子、B組です。まさか魔法少女になるだなんて思ってもいなかったけどなっちゃった以上仕方がないですよね、よろしくお願いします」


 学力、運動力、全てにおいて完璧な彼女は、うちの学級の顔のような存在です。

 おまけに、顔までも整っていて、家は金持ちです。

 まさしく、欠陥のない完璧な女の子です。


「みんな、自己紹介を終えたことだしこれからどーしよっか!」


 と、奈津ちゃんが元気よく言いました。


 彼女がいるだけで雰囲気がいいです。


「そうね、まだ一時間近く時間があることだし、一度魔法少女に変身してみるのはどう?」


 玲奈ちゃんがそう提案してきました。


 魔法少女はその姿を魔法少女以外に見せてはいけない、という掟があります。

 破ると、死ぬ。

 そう教わりました。

 なので確かにまだ、私たちは魔法少女を見たことがなく、妄想上の生き物でした。


「そうですね、そうしましょう。まだ魔法少女になったことがないし見たことすらないですし」

「んじゃ、魔法少女になってみますかッ!!」


 ということで、私たちは魔法少女へと変身するために各自受け取ったマジカルリップを唇に塗りました。

 色は外見通りでした。


 唇をリップで塗り終えると、全身を白い光が包みました。


 パンッ、と制服が消え、次の瞬間、ピンク色のふわふわとしたドレスに身を包まれていました。

 まさしく、魔法少女のような服装です。

 他の三人もまた、リップと同じ色のドレスを着ていました。

 それだけではありません、玲奈ちゃんは黒髪のままだけど、奈津ちゃんと冬子ちゃんの髪色が青と白になっていました。

 壁にかけられた鏡で自分の姿を見ると、ピンク色の髪をしていました。

 どうやら、本当に魔法少女になってしまったみたいです。


 背中には身長ほどの鎌が付けられていました。


「ええ……」


 他の三人もまたそれぞれ武器が携えてありました。

 玲奈はちゃんは身長ほどの巨大な盾、奈津ちゃんは剣、冬子ちゃんは弓です。


「みんな、右手の手首を見て」


 と、玲奈ちゃんが言いました。


 そこには、数字が書かれていました。

 寿命です。


 2522896256秒


 と、書かれていました。

 数字は1ずつ減っています。


 あとどのくらい生きられるのでしょうか、分かりませんが、結構生きれる気がします。


 玲奈ちゃんが、


「私の残り寿命は」


 次の瞬間です。


「──────」


 ピー、という音が玲奈ちゃんの声を妨害しました。


「……どうなってるの?」

「私の寿命は! ──────ッ!!」


 奈津ちゃんもまた寿命を口にした途端、ピー、という音に妨害されてしまいました。


 うーん、と顎に手をやる冬子ちゃん。


「自分の寿命は他者に共有できないのかもしれないわ、桃崎さん、手首を見せてちょうだい」


 冬子ちゃんに右手首を見せると、


「やっぱり……」


 どうやら、冬子ちゃんには私の数字が見えていないようです。

 いや、冬子ちゃんだけではありませんでした。


「どうやら、自分の寿命は自分しか知らないみたいね」


 玲奈ちゃんは、ため息を吐くようにそう言いました。


 私の寿命は私しか知ることができないようです。

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