第4話 はじめて入ります





(かちゃっと鍵を開ける音)

(遠慮がちの足音)



「……おじゃましまぁ~す……」



(主人公の靴音)

(脱ぐ音)


(二人分靴下の足音が、とん、とん、とんと)




「…………へえ…………」

「君らしい部屋だね~」



(振り向いた音)

「うんっ、なんか、『想像通り』って感じっ?(笑いながら)」




(たたたたたっと軽快な足音)

「あ、これ、前も好きだったよね!(懐かしそうに)」



「あ、これー! 

 うわぁ、懐かしい! 

 前に流行ったヤツ!」

(はしゃいだ様子で)





(もう一度見回すような布の音)

「へえ~……、ここが君の部屋かあ……」(感慨深く)




「え? 匂い?

 別に気にならないよ、大丈夫。

 『男の人だな』って感じ。

 むしろ、落ち着く……っていうか?

 ほっとする……かな?」



(きょろきょろ……)




「ぇっ!」

「エロ本無いかなとか見てないしっ」

「今動画でしょ、きっと!」



「…………うーん………………………………ほんとに女の影がない……(ぼそっと)」





(カチャっとドアの音)



「──あ、あたしの部屋(振り向いて)こっち?」



(とんとんとん、と足音)

(軽く扉の開く音)




「……ここ……」


「……いいの?」

(感謝を噛みしめるような小さな声で)


「……ありがとう。じゃあ、ここ、お借ります。

 ありがとうございます。」




(信頼と感謝の混じった様子で)

「しばらくお世話になります、よろしくお願いします」









(ガチャっと玄関の音)


「おかえり~!

 うん、事情話して早く帰らせて貰った。

 ごめん、夕飯まだ出来てなくて……。

 もう少し待っててくれる?

 今日? カレーライスだよ!」




(ガチャっと玄関の音)


「おかえりっ。

 ふふふ、「おかえり」(笑いながら)


 え?

 なーんか、昨日君も言ってたけどほんと夫婦みたいだよね(笑)付き合ってないけどね~(笑)」


「今日は、昨日のカレーをうどんにしてみました。(にっこり)カレーうどんだよ!」




(ガチャっと玄関の音)



「…………おかえり…………

 ……ごめん、あの……えっと……」




(心底昏く申し訳ない様子で)



「ハンバーグ、

 作ったんだけど焦がしちゃって……

 ……他、用意する時間もなくて……

 ごめん、丸焦げになっちゃって……

 ……ごめん……っ」



「え。

 『気にしない』って……!(驚き)」


「(ちょっと照れと困った様子で)

 ……君、そういうやさしーとこ、ずるい」






(ガチャっと玄関の音)


「おかーえりぃ~~~~……!

 今日はね、魚とお味噌汁と煮つけにしてみたんだ。そろそろ和食が食べたいんじゃないかなって」



「……え。

 『最近帰るのが楽しみ』?

 ……ちょっと~! やめてよぉ!

 …………嬉しくなっちゃうじゃん。

 この前再会したばっかなのに、もぉ……!」



「ねえねえ、和食すき?」

「明日は何がいい?」 

「パスタつくろっか、パスタ!」

「ふふ、惚れるなよっ?」(笑)







(ガチャっと玄関の音)


「あっ、おかえり!」

「あのね、今日はね……!」



「…………!」

(気が付いたような喉の音)




「なんか、元気ない……?」


「……どうしたの?

 ……仕事、何か、あった?」




(沈黙)




(目の前で)

「……疲れた顔してる」


「黙っててもわかるよ」

「……話、聞くよ?」



(あなたの躊躇いがちな息)



「……言いにくい?」



「……んー……」(考えている)


「──あ」(思いついたトーンで)



「…………着替え、してきて?」

「今日はご飯の前に、ちょっと君におねだりしてもいい?」





 続く

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