第2話 潜入! 君のお気に入り♡



(がらがらっと引き戸の音)


店主「らっしゃい」

店主「食券買って席どうぞ」



「……うわ~……」

「らーめん。」

「こんなところにこんな店あったんだ……知らなかった。マジで……」



「うぅ~ん、油とにんにくのいい匂い……!」(満喫するように)

「やっば、お腹空いてきた!」

「これ間違いなく当たり・・・じゃ~~~ん……!」

(恍惚♡)




券売機「いらっしゃいませ」

券売機「お金を入れて、メニューを押してください」

(お金を入れる音)



「ねえ、君はいつも何食べてるの?」(後ろから覗き込むように)

「やっぱり初見は”おすすめラーメン”?」

「じゃあ、”おすすめラーメン”にしよ」(わくわく)



(ごそごそというバッグの中を漁る音)

(ぴぴっと二回電子音)


 

「あっ、あっ、ちょっと!」(慌て)

「なんで出すの~~~? あたしが誘ったのに!」


 (移動の靴音)



「『ラーメンぐらい奢るよ』ってねぇ……」

「君、変な女に掴まって搾り取られそーで心配なんだけど」

(ジト目)



「……え? 「もう掴まってる」? えっ?(驚愕)」

「……かのじょ、居──……」



「へ?」

「…………?(理解した様子・トーン落として)」



「もお」

「……だから、ツボも絵もサロンも情報商材も売らないってばっ」

「マルチじゃないの、君とただご飯食べたかっただけなのに」



(着席の音)



 店員「らっしゃっせ~」

 店員「おすすめ2丁!」

 店内「「ありがとうございまーす!」」



「……なんか、活気ある~」

「こういう雰囲気好き」

「こっちも元気になっちゃう」

「ふふ、楽しみだなっ」




「君は今、なにしてんの?」


「ふんふん」


「うんうん」


「…………へえ~。(驚嘆)」

「……大変そう……頑張ってるんだね?」



 店員「おまたせしました!」



「はやっ! え? 早いね?」

「へえ、速さと旨さが売りなんだ……」

「にしても早すぎて笑ったっ(ふふっ)」



「わあ、やばっ……! 

 めちゃ美味しそう……!」

「えへへ、頂きます♡」



 (食べる音)



「…………うん、うん、うんっ……!」(心底嬉しそうに)


「スープが麺に絡むぅ……!」

「このラーメン、やばいねっ?」

「あじたま~~♡」

「チャーシュー♡」

「……はあ。スープ、いくらでもいけちゃう」


「もう~、こんな店あるなら早く教えてよっ、もうっ!」




 店主「や~、お客さん、毎日来るけど女の人連れてくるの初めてっすね~。へへっ、ありやす!」



「…………へえ。」

(考え込む感じで)



「……てかここ毎日来てんの?」

(距離近め、覗き込むような声)



「美味しいよ? 美味しいんだけど」



「………………ヤバない?」

「君の健康がやばくない?」

「ラーメンは完全栄養食だけど、流石にやばくない?」

「ラーメン美味しいのはわかるけど、流石にヤバない?」


「自炊しないの?」



(ざわざわざわ……)

(聞いてる感じの沈黙)



「……それな。めんどくさい。それすぎる」


「キャベツとか使いきれないしね」

「もやしとかコスパ最強のくせに耐久最弱だしね」

「なにより洗い物が無理ゲー」



「ラーメンのカウンターが家にほしいよね」

「回転ずしのレーン、なんかこう、間違って・・・・ウチのナカ通らないかな?」


「ふふ、冗談(笑)」



「……でも……」

「毎日ラーメンは心配だなー……」

「自炊が無理ゲーなのはよくわかるけど」


「飽きないのもわかるけど」

「美味しいのもわかるけど……!」(力込めて)



(ざわざわざわ……)

(隣から、こくんと小さな喉の音)



「…………ぁの、さ」

(恐る恐る伺うように)



「……作ってくれる人とか、居……」



 (着信音)




「わ、電話? 電話・・っ? え。誰?」



 (長い着信)

「……えぇ……

 ……誰ぇ……?

 ……こわぁ……」


「『出てみたら?』って、変な電話だったら嫌くない?」


「あ、きれた」

「念のため検索……ってあれ?」



(なり始めるスマホ)



「大家さん?」

「あ、大家さんだ」


「ごめ、ちょっと電話いい?」

「ありがと」


「はい、今お電話いただきました、はい」

「はい」


「────はいっ?」



「え?」

「水濡れ? 上が漏水でウチ水浸し?」



「……えっ????????」



「え。」

「はい、はい、はい……」



「あ、はい……」




「…………どうしよう、かえるとこ無くなった…………」(呆然)





→next

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